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横浜駅のディープラビリンス「狸小路」に潜入!豚の珍味が味わえる老舗酒場に呑んべえの血が騒ぐ

こんにちは、おりえです。

私は日々、おいしそうなお店を探しては飲み歩いています。

今回紹介するのは、「豚の味珍」さん。とろっとろに煮込まれた絶品ホルモンが食べられるお店。

ホルモンの味は下処理に大きく左右されますが、味珍のそれは別格。どこで食べるのとも違う、それでいて飽きない、お酒がすすむ味。

1度食べてからというもの、すっかりその虜になっています。

『路地で呑む』の電光掲示板に酒飲みの血が騒ぎます。

『路地で呑む』の電光掲示板に酒飲みの血が騒ぎます。

場所は、横浜駅西口。

注意深く観察していないと通り過ぎてしまうような細い路地、狸小路にて。

こちらがそのお店。味のある外観にグッと心を掴まれます。

路地を挟んで本店と2号店があり、どちらも1階と2階に分かれていますが、メニューはどこで食べてもすべて同じ。

1階はこんな感じ。コの字でも、L字型でもなく、V字型!写真よりも実物はかな〜り鋭角で、木製のカウンターには歴史が染み込んでいます。

今回は、2階へ案内されました。

急すぎる階段を登り…

「いらっしゃい!」と迎えてくれたのは、45年間勤めていらっしゃる簗瀬(やなせ)さん。

京都のホテルで洋食のコックをしていた頃、修行に来ていた現在の社長と知り合いました。

1度は別々の道を歩むも、新店を出すタイミングで誘われたのがここで働くきっかけになったんだそう。

それにしても45年…。

お料理メニューはシンプルそのもの。メインは猪の頭、耳、舌、胃、足、尾の6種です。

ちなみにここの「猪」は豚のこと。

写真付きのメニューもあるので分かりやすい

写真付きのメニューもあるので分かりやすい

何から頼むか迷いますが、まずは頭を注文しました。

ゼラチン質の多いムチムチ食感の耳、足、尾と、比較的しっとりした頭、舌、胃は、交互に食べるのがオススメだそう。

頭が到着!

すると女将さんが、「タレの作り方は分かる?初めて?じゃあ作っちゃうね。辛子やお酢は苦手じゃない?大丈夫?」と、有無を言わさぬ慣れた手つきで作ってくれました。

辛子と酢を1:1で混ぜて、醤油をひと垂らし。辛子と酢はだいたい小さじ2ずつくらい。

「最初、辛子が多くてびっくりされるのよ」と女将さん。

確かに少し多いですが、酢が入ることでツンとした刺激が抑えられ、そこにラー油を加えることでうまくまとまります。

味変したい方は、ニンニクをチョビッと入れるといい具合に。

創業当初からタレの配合は変わらないそう。

まるで餃子のタレとシウマイのタレのあいのこです。

まずはかけつけの1杯。

キンキンに冷えたビールが沁み渡ります。

コーヒー色をしたゼラチンが、肉の周りを覆っているのがお分かりいただけるだろうか…?

余分な脂が落ちていて、しっとり、そしてもっちり。嫌なしつこさが一切ありません!

口に運んで5秒後、このゼラチンがやがてトロミに変わる頃、脂身のコクが味に深みを与えていきます。

これは1品目に頼んで大正解。

続いて舌がやってきました。

厚みがあって食べ応え満点。それでいて驚くほど柔らかい。

豚タンは牛タンより硬い印象ですが、2日間かけて煮込まれることでこんな食感になるんですね!

臭みは消えているのに、豚肉の風味が強く、ジャーキーのように噛めば噛むほど旨い。

下味の醤油が一番しっかり染み込んでいるのも、旨味の相乗効果を生み出しています。

少しだけニンニクを乗せて食べるのが私のイチオシ。1皿で生ビールが2杯消えます。

簗瀬さん:東京から来たの?最近はあなたみたいな若い女性もくるようになったけど、昔はあんまりいなかったよ。年間で10人くるかどうかって感じで。

ーーーそうなんですね!お客さんはどういう人が多いんですか?

簗瀬さん:常連さんが多いかな。だから、大概が顔見知りになっちゃうの。去年亡くなってしまったけど、1番長い常連さんは93歳だった。私が働き始めるより前から来てる人もいて、その人たちは50年以上通ってくれていることになる。嬉しいよね。

ーーー50年!すごい歴史です。

簗瀬さん:今も通ってくれている人の中には、最年長で85歳前後の人が2〜3人いる。昔は本店に行列ができていたこともあったね。

ーーー長い歴史の中で、印象的だった出来事や、思い出深いエピソードとかってあったりしますか?

簗瀬さん:昔は今よりも世間が「働けムード」の時代だったから、よく働いた。朝9時から、2日後に並べる豚の仕込みを始めて、閉店するまでしゃかりきに働き続けて。気づけば45年が経っていた。

ーーー後継ぎっていらっしゃるんですか?

簗瀬さん:息子は別の仕事をしているから、後継ぎはいないね。でも、ウチには若い衆がたくさんいるから、もう彼らに任せるよ。私はもうお役御免だね(笑)。

ーーーそんな!簗瀬さんに会いたいがために通っているお客さんも多いと思いますよ。

簗瀬さん:はは。まぁ働けるうちは働くつもりだよ。あなたみたいに若いお客さんが来てくれることは、新鮮な気持ちになれて嬉しいし。今日は楽しんでいってね。

ーーーありがとうございます。

話している最中に仕込み中の辣白菜(ラーパーツァイ)を見せてくれた簗瀬さん。なんとも美しいなぁ。

一味、砂糖、醤油などに漬け込んだオリジナルメニュー。

(常連さんは軽快に「ラッパ!」と頼んでいる。いつか真似するぞ!)

普通の漬物より少し甘めで、塩分・酸味は控えめ。箸休めに頼んだつもりが1度食べたら止まらない罪な奴です…。

「耳とラッパを、タレにつけて一緒に食べると幸せがやってきますよ」と、常連さん。居ても立っても居られずに耳を追加です。

「沖縄のミミガーはコリコリした食感だけど、うちのは柔らかいよ」と、簗瀬さんはおっしゃってました。

きたきた。

すぐ出てくるのも嬉しいところ。

えいっ

えいっ

う、うまぁ〜!これは確かに合う!

骨までとろんと煮込まれた耳、そしてシャクシャクと甘さを湛える白菜に、辛子と辣油が絡んでなんとも複雑な味わい…!

突然の変化球がたまらん〜!

ビールの次は焼酎が、私のお決まりコース。

味珍では、創業当初からやかんで宝焼酎を注ぐスタイルで、この可愛らしいやかんは2代目。

いいなぁこれ。魔法のランプみたい。

こちらが初代!今ではガラスケースの中に飾られています

こちらが初代!今ではガラスケースの中に飾られています

「俺はあまり高い位置から注ぐとこぼしちゃうから…。若い衆は随分高くから注ぐけどね」

な〜んて仰ってますけど…充分高いです。

ハァ…いい色…。ほろ酔いです。

いよいよ満腹な頃合いに、木のそろばんで弾いてもらってお勘定。

食べきれなくても丁寧にパックに詰めてくれるので安心。

お持ち帰りOKになったのはここ10年くらいなんだそう。

おっと…酔いどれ潰しの急勾配。

落ちたら酔いが覚めますね〜とヘラヘラ笑っていたら、「覚めるどころじゃないよ!病院に何人行ったか!」と、身の引き締まる一言。

心地いい酔いが一瞬覚め、足元を確かめるように1歩ずつ確かめながら階段を降りて、お店を後に。

ふぅ…。ここを降りる時が1番緊張しました。

ライター紹介

おりえ
おりえ
1990年東京生まれ東京育ちの飲酒愛好家。外食・自炊共に愛し、夜な夜な酒を飲む。セブン&アイ出版より『美味しいにきまってる』が発売中。
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