1日100食限定!「売り上げを減らす」で快進撃を続ける『佰食屋』のヒミツ

京都の西院駅から徒歩5分の場所に、『佰食屋』はある。

1日100食限定。メニューは3種類の肉料理だけ。

ボリュームのある国産牛のステーキ丼や定食が、1000円ちょっとで食べられる、連日完売の人気店だ。

2012年の創業当時からメニューは不動

2012年の創業当時からメニューは不動

「誰も残さないご飯が理想なんです。全部食べてもらいたいのは、家での子どもに対する気持ちと一緒です」

そう話してくれたのは、オーナーの中村朱美さん。

【中村朱美さんプロフィール】
株式会社minitts 代表取締役。京都府亀岡生まれ。
専門学校の広報として勤務後、2012年9月に飲食・不動産事業を行うminittsを設立。
同年11月に「国産牛ステーキ丼専門店 佰食屋」をオープンし、子育て中の女性やシングルマザーなど、多様な人材の雇用を促進するなど、ワークライフバランスを意識した取り組みが評価され、「第4回京都女性起業家賞」最優秀賞などを受賞。
2015年3月に「佰食屋すき焼き専科」、2017年3月に「佰食屋肉寿司専科」、2019年6月に「佰食屋1/2」を開業し、現在4店舗を運営。

ランチ営業のみ。売り切れ次第、営業終了という飲食店の常識を覆す経営手法で、飲食店におけるワークライフバランスとフードロスゼロを実現。

加えて、先月『売上を、減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放』(ライツ社)を上梓されたばかりとあって、講演会やテレビ・雑誌・ウェブなどのメディアで、引っ張りだこの中村さん。

書籍:「売上を、減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放」

書籍:「売上を、減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放」

超ホワイト企業の経営手腕が気になるのがビジネスパーソンなら、佰食屋独自のスタイルが完売必至の美味しさにどう繋がっているのかを知りたいのが我々ビフテキパーソン!

その関係を紐解くためには、やはり3つのメニューを実食して話を伺わねばなるまいて…。

100食にしてつくづくよかった

ーー結婚前に旦那さんが作ってくれたステーキ丼が美味しすぎてお店を始めたんですよね?

中村さん:私が初めて食べた時には、すでにレシピはほぼ完成していました。ステーキソースだけは幅広い年代から愛される味にしようと、少し変えましたが。

今考えるとすごく無謀なんですけれど、超大手の醤油メーカーさんに『これからお店を始めるんですが、塩分濃度何%のこんなお醤油がどうしても欲しいんです!』と、頼み込んで用意してもらったんですよ。

その醤油と赤ワインをベースにしたオリジナルソースが、肉とご飯にめちゃくちゃ合う!

その醤油と赤ワインをベースにしたオリジナルソースが、肉とご飯にめちゃくちゃ合う!

ーー元々はお2人とも会社員とのことですが、料理はどこで?

中村さん:夫も京都生まれなのですが、実家が自営業で着物の絵付けをしていて、仕事が忙しくなると子どもたちだけで食事の準備をするのが日常だったそうです。

お母さんがとても料理上手で、出汁の引き方や下ごしらえのことも徹底的に教え込まれたとか。特にステーキ丼は早くから夫のスペシャリテだったんです。

ーーへ〜!子ども時代にルーツが。レシピの完成度も納得です。

中村さん:あと、『料理は科学だ』っていうのが私たちの口癖で、調理方法や旨味の相乗効果を追求するのが性に合ってたんです。

感覚ではなく数値や理論に基づいているので、再現性が高く、味がブレないというメリットもあります。

100食にしたのは、最初はなんとなくの思いつきで(笑)。それくらい売れたらいいねってノリだったんですけど、つくづくいい数だったな、と思います。頑張り甲斐がちょうどいい。

三つ葉とフライドオニオンが混ぜ込まれ、タレのかかったご飯。爽やかさとコクのバランスが絶妙!

三つ葉とフライドオニオンが混ぜ込まれ、タレのかかったご飯。爽やかさとコクのバランスが絶妙!

ーーちなみに100食の内訳って、3つのメニューでどんな配分なんですか?

中村さん:ほとんどのお客さんがステーキ丼を注文されます。ハンバーグ定食を頼まれる方は1日2〜3人くらいかも…。

イメージとしては80%が丼、17%がステーキ定食、3%がハンバーグ定食ですね。

国産牛ステーキ丼

国産牛ステーキ丼

国産牛おろしポン酢ステーキ定食

国産牛おろしポン酢ステーキ定食

国産牛100%ハンバーグ定食

国産牛100%ハンバーグ定食

ーーわっ!圧倒的に丼人気なんですね。でも、日によってステーキ定食の方の注文数が多くなる心配はないんですか?

中村さん:パッと見の印象は違いますが、ステーキに関しては丼と定食は同じお肉なんです。だからどっちの注文がきても大丈夫。

ーーえ?あ、そういうことか!準備するお肉が同じなら、丼と定食の仕込み数の“読み”が外れることはないんですね!

中村さん:そう、だからロスが出ないんです。ちなみにどちらも焼く前はこんな感じです。

“内ヒラ”と呼ばれるモモ肉の赤身。1人前120g

“内ヒラ”と呼ばれるモモ肉の赤身。1人前120g

ーーこんなこと言ったらアレですが、もっと厚みのある大きな塊を焼いてカットしているのかと思っていました。

中村さん:厚みのある肉を焼いて垂直にカットしていくとロスが出たり、1人前あたりのグラム数にも差が出やすくなるでしょう?それに、程よいレア感で焼き上げるためには、お肉を常温に戻しておくことが肝心。

でも、売れるかわからないお肉を冷蔵庫から出すのはリスキーですよね。これも100食分売れると分かっているからできることなんです。

手際よくササッと切り分けていますが実は…

手際よくササッと切り分けていますが実は…

ただ、あらかじめ1人前ずつ切り分けたこの薄さのお肉を、見た目も食感も良くなるように削ぎ切りにするのは、実は難しいんですよ。

お店でもこれを任されているのは3名だけです。

熱々のご飯にお肉のドレスのようにまとわせて!

熱々のご飯にお肉のドレスのようにまとわせて!

17枚にカットされてる!

17枚にカットされてる!

中村さん:お肉はシンプルに塩コショウのみで焼いています。

テーブルには自家製ポン酢のほか、ステーキ丼のタレやフライドガーリックもあるので、いろんな味で楽しんでもらえますよ。

おろしポン酢乗っける派?

おろしポン酢乗っける派?

フライドガーリック!!

フライドガーリック!!

個人的にはステーキ丼のタレだけでご飯一膳食べ切れるくらい好き…!

個人的にはステーキ丼のタレだけでご飯一膳食べ切れるくらい好き…!

ーーステーキ丼の華やかさも抗いがたい魅力ですが、丼タレとおろしポン酢の両方を味わえるこの定食、かなり楽しいです!

おろしポン酢巻いちゃう派?

おろしポン酢巻いちゃう派?

もったいないの精神

ーーハンバーグは肉肉しいのに、適度に軽やかさもあって、濃いめのタレで白ご飯が進みます!

中村さん:ハンバーグは、ステーキ肉をモモ肉のブロックから100食分をカットする際にどうしても出てしまう、半端なサイズのお肉をミンチにして作っています。こちらは20食限定です。

ハンバーグ定食の注文は稀ですが、単品で追加注文ができるので、ステーキ丼と一緒に頼んでシェアする方も多く…やはり完売しますね。

ハンバーグもステーキと同じお肉だった!

ハンバーグもステーキと同じお肉だった!

ガス釜で炊いたツヤピカの白米にワンバウンドさせちゃうぞー!

ガス釜で炊いたツヤピカの白米にワンバウンドさせちゃうぞー!

中村さん:ハンバーグのソースは、スジ肉部分を一緒に煮込むことでコクを出しています。

仕入れたお肉で捨てるところはほとんど無いです。フードロスゼロを意識高めに謳っているわけではなく、もったいない精神や京都の“しまつ”精神なんでしょうね。

地獄谷のごとくグツグツと沸き立つソースの海に、ラグビーボール型のハンバーグ!

地獄谷のごとくグツグツと沸き立つソースの海に、ラグビーボール型のハンバーグ!

マジで熱っっっっっっついので気をつけて食べるべし。

マジで熱っっっっっっついので気をつけて食べるべし。

小鉢や汁物が完成系になるまで2年かかった

ーー誰も残さないご飯、という点ではサイドメニューも重要ですよね。

中村さん:そうですね。ステーキ丼やハンバーグ自体は最初から何も変わってないんですが、小鉢や味噌汁に関しては、今の形に落ち着くまでに2年くらいは試行錯誤を繰り返しました。

ーー大切にしたのはどんなポイントですか。

中村さん:やはり肉料理とのバランス、相性です。今は小鉢がサラダですが、昔はきんぴらやひじき煮などのお惣菜だった時期もあります。

さっぱりしたサラダの方がいいとの声が多く、京都の千鳥酢を多めに入れた自家製ドレッシングで合わせ、ナッツとジャコをプラスしました。

漬物もねぇ…食べない方は全く箸をつけないことが分かったので、やめました。結構美味しかったんですけど、ひとくちも試してもらえないのは忍びなくて(苦笑)。

中村さん:味噌汁はお肉に負けない旨味がポイント。時間をかけて丁寧にとったカツオと煮干しの出汁に、京都・亀岡にある、知る人ぞ知るお味噌屋さんの大吟醸味噌を使っています。

最初はなめこ汁にしていましたが、具はもう少し軽めで口当たりがいいものをということで、お麩になりました。

みんなのご馳走を気軽な定食に

ーー現在、佰食屋の他にもお店を展開されていますが、やはりメインは肉なんですね。

中村さん:私は小さい頃、それほど裕福ではなかったんです。ステーキなんて年に1回あるかないか。すき焼きも、おじいちゃんの家に親戚が集まった特別な時だけ。

いわゆる“ご馳走”を好きな時にお腹いっぱい食べたいという私の憧れが原点なんです。高校生や大学生でもお小遣いで食べられるように、ご馳走を気軽なスタイルで食べられるようにしたのがウチです。

ーーメニューを増やすのではなく、それぞれを別のお店にした理由を教えてください。

中村さん:私も含めたスタッフは、1度にあれこれできるほど器用じゃないんです。専門分野を絞って、品数も絞って、誰もが美味しいと感じるメニューだけでやった方がいいと考えています。

満足のいくクオリティのメニューを、ポンポンと生み出すことはできない。すき焼きの時も、割りしたの開発だけで2年の準備期間がありましたから。

多彩なバリエーションや新陳代謝を繰り返すフレッシュさで常に話題の中心にいるというよりは、メニューの幅は狭いけれど誰もが美味しいと認める専門店として存在感を増していきたいな、と。

ーーこれまでがそうであったように、これからも変わらずに進んでいくということですね。

中村さん:つい先日、ここの近所に昔住んでて引っ越さはった人が、5年ぶりに食べにきてくれたんです。

『あー、変わってないな、この味やわぁ』って言うてくれはったのが、ものすごく嬉しかった。

お肉を食べたいって思った時に、一番に思い出してもらえたら最高ですね。

テイクアウトのステーキ丼単品もお店の盛り付けそのまま!フライドガーリックを別添えにしてくれているのでサクサクが楽しめる。

テイクアウトのステーキ丼単品もお店の盛り付けそのまま!フライドガーリックを別添えにしてくれているのでサクサクが楽しめる。

ランチタイムもしくは、17時〜17時半の受け取りで、ステーキ丼はテイクアウトも可能。前日までの電話予約が確実だが、当日の電話でも100食以内であれば予約可能です。

奇しくも取材日は29日、肉の日!いい肉の日だったなぁ。

ごちそうさまでした!

かがたにのりこ

かがたに のりこ
かがたに のりこ
月に二度、あんこを炊くライター。グルメ・和装・教育・エンタメと幅広いジャンルで執筆中。 なかでも和菓子・あんこのおやつ取材に情熱を注ぐ。京都の現地ツアー「まいまい京都」では春と秋に、あんこのおやつをハシゴするツアーガイドも務める。金沢生まれ。15年の京都暮らしを経て、現在は兵庫県西宮市在住。
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