あなたは「はんぺん」と聞いて、どんなものを思い浮かべるだろうか。
多くの人が白くて、フワフワした、四角いはんぺんを思い浮かべるだろう。
しかし、静岡県民は違う。
灰色で、ざらざらした、半月型のはんぺんを思い浮かべる。
そう、黒はんぺんだ!
静岡県民のソウルフード・黒はんぺん
現に筆者は静岡県出身で静岡県在住という生粋の静岡県民だが、はんぺんといったらもちろん黒はんぺんを思い浮かべる。
なんだったら、黒はんぺんがデフォルトで、一般的な白いはんぺんは「白はんぺん」とさえ呼んでいる。
黒はんぺんは、静岡県民の生活に根付いていて、決して観光客向けのご当地グルメではなく日常的に食べるものだ。
スーパーや、食品を扱うドラッグストアにももちろん並んでいる。
黒はんぺんとは?なぜ黒いのか?
昨今はテレビなどのメディアにも取り上げられ、全国的に周知されてきた黒はんぺんだが、ここで改めて黒はんぺんとはなにかをおさらいしよう。
黒はんぺんとは?
サバやアジ、イワシなど、大量に獲れる青魚を主原料にしたはんぺんのこと。
これらの魚に塩、砂糖、でんぷんなどを混ぜてつぶし、すり身にして熱湯で茹で上げてできる。
なぜ黒いのか?
黒はんぺんが黒い理由、それは魚の血色素(ヘモグロビン)が含まれているからだ。
原料となる魚を骨ごと用いて作られるため、血色素も含め調理されて、加熱後に黒く仕上がる。
この製法のおかげで、うま味成分が逃げることもなく、魚本来の風味が味わえ、ざらざらとした口当たりや、白はんぺんとは対照的で、かまぼこのような弾力ある食感が特徴だ。
黒はんぺんを堪能したいなら、静岡市の『海ぼうず』へ
静岡県内の居酒屋には、黒はんぺんを提供する店は多いが、中でもおすすめなのが静岡市にある『海ぼうず』だ。
静岡駅南口から徒歩で行けるので、出張や旅の途中で静岡駅に降り立った方も気軽に行ける好立地。
わたしが海ぼうずをおすすめする最大の理由、それは、黒はんぺんを煮る・焼く・揚げるの3方向から堪能できるからだ。
先ほども書いたように、静岡県内には黒はんぺんを扱う居酒屋も少なくないが、この3つの調理方法をコンプリートしている店はほとんどない。
黒はんぺんを十二分に楽しむなら海ぼうず!これがこの店をおすすめする理由だ。
まずは"煮る"からスタート!静岡おでんの黒はんぺん
海ぼうずの注文モニター。
モニターを見ただけでおなかが空く。なんておそろしい店なんだ…。
まずは静岡あらごしみかんソーダで乾杯!
お先にすみません!
はじめにB級グルメとしても有名な静岡おでんを注文。
たねのひとつに黒はんぺんが入っています。こちらで"煮る"パターンの黒はんぺんが楽しめます。
だし粉・青のりと一緒にいただきます!
静岡おでんの黒はんぺんは、汁がガッツリ染みてクタクタになっていた。
弾力が特徴じゃないんかい!とつっこまれそうだが、このクタクタ感が静岡おでんの醍醐味。
これでいいのだ!
だし粉と青のりは「そんなにつけちゃっていいの!?」と、思われるくらいたくさんつけるのが個人的にはおすすめ。
香ばしい香りがたまらない…黒はんぺん焼き
続いて黒はんぺん焼きを注文。
既にはんぺんになっているのに、魚を焼いたような香ばしさがあたりに漂う。
家庭では、バターで焼いたり、しょうが醤油を垂らして食べたり味を付けることも多いが、黒はんぺんそのものにも味が付いているので、なにもつけなくても大丈夫。
黒はんぺん本来の味を楽しめるのが嬉しい。
焼きならではの焦げた部分も香ばしくて好きだ。
簡単に調理できるので、おみやげに黒はんぺんを買って自宅で再現しても楽しいだろう。
何枚でも食べられる!黒はんぺんフライ
わたしが子どもの頃、お弁当にもよく入っていた黒はんぺんフライ。
ごはんのお供にも、酒の肴にもうってつけだ。
こちらも焼き同様、ソースなどで味つけすることも多いが、わたしは断然そのまま食べ派(語呂が悪い)。
もし物足りないと感じるなら塩を少し振る程度で、ぜひ黒はんぺん本来の味を楽しんでもらいたい。
肉類と違って脂っこさがないので、何枚でも食べられてしまう。
わんこ黒はんぺんフライがあったら1000枚はいけるだろう。
なぜ「はんぺん」ではなく「はんべ」と呼ぶ?
わかりやすくお伝えするため、ここまで「黒はんぺん焼き」「黒はんぺんフライ」など「黒はんぺん」とメニュー名をご紹介してきたが、実は海ぼうずでは「黒はんぺん」ではなく「黒はんべ」というメニュー名で提供している。
なぜ「はんぺん」ではなく「はんべ」なのか?スタッフさんに由来を聞いてみたところ、はんべえさんという人物が、天皇に黒はんぺんを献上した際のやりとりがきっかけらしい。
黒はんぺんを献上された天皇は、黒はんぺんのことを知らなかったため、「これはなんですか?」とはんべえさんに聞いた。
その時、はんべえさんは自分の名前を聞かれたと勘違いし、「はんべえです!」と答え、それ以来、「黒はんべ」と呼ばれるようになったそうだ。
はんべえさんも自分の勘違いが元になり、令和の時代まで黒はんぺんが「黒はんべ」と呼ばれるようになるとは夢にも思っていなかっただろう。
海ぼうずには、静岡グルメがいっぱい
今回ご紹介した黒はんぺんメニュー以外にも、海ぼうずには生しらすや、清水もつカレー、富士宮やきそばなどの静岡グルメがたくさん揃っている。
時間がなくて、あちこち行ってグルメを楽しむ時間がない!という方も、ここに来ればすべて解決。
静岡に来たらぜひ海ぼうずに立ち寄って、黒はんぺんをはじめとした静岡グルメを楽しんでほしい。
- 海ぼうず本店
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静岡県 静岡市駿河区 南町
居酒屋
ライター紹介
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鈴木さくら
- 1988年静岡県生まれ・静岡県在住。平日制作会社に勤務しながら、土日にうまいものを探して食べ歩く生活を送っている。主な活動エリアは浜松市~静岡市のあいだ。好物は焼肉と浜名湖うなぎの白焼きだが、懐を顧みず食べに走るので給料日前はおのずと静かになる。