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"おいしい"のコツは「蒸らす」こと!脱サラして始めたこだわりのとんかつ屋「成満堂」

長野県長野市の「成満堂」。

国宝・善光寺から、あれやこれやと横道を入って徒歩10分ほどのところにひっそりと佇むお店です。

ランチタイムになると、老若男女がすいこまれるように引き戸を開けて入店!皆さんのお目当てはこちら。

さくさくの衣に分厚いお肉。まごうことなき、とんかつです!ああ、なんて尊いのだろう。

かつて、とんかつと聞くと胃もたれしてしまっていた私の心を魅了する成満堂さんのとんかつ。

肉の旨味を1番感じられるロース、びっくりするほどのやわらかさとなめらかさをまとったヒレ、じんわり脂を楽しみたいならバラがおすすめ。

ひとくち頬張れば、じゅわっと広がる肉の甘みにうっとり。お腹いっぱい食べても胃もたれゼロな、お肉料理の理想型がここにあります。

さぞかし修行を積まれた、熟練の料理人が手がけているのかと思えば、もともと店主の髙野啓司さんは鉄道会社に勤務。飲食店で働いていた経験はありません。

なぜ脱サラしてとんかつ屋に?おいしいとんかつの秘訣は?尽きない疑問を投げかけに、髙野さんにお話を伺いました。

きっかけは、退職祝いで食べた名店の味

提供するロースはサーロイン、リブロースから選べます。お客さんがお肉を選べるスタイル!

提供するロースはサーロイン、リブロースから選べます。お客さんがお肉を選べるスタイル!

ナカノ:成満堂がオープンしたのは3年前ですよね。それ以前は鉄道会社で働いていたとお聞きしました。

髙野さん:はい。長年、鉄道会社で働いていました。地元の長野で採用され、東京と長野の転勤を繰り返していました。

泊まり勤務の多い職業ですから、身体を壊す人も多くてね。「この生活を続けていたら定年後には身体がボロボロで、余生を楽しめない!」と思い、50歳のときに早期退職しました。

ナカノ:辞めるときに、飲食を始めようと考えていたんですか?

髙野さん:いえ。とにかく辞めることしか考えていなかったですね。あとのライフプランはまっさら(笑)。

ただ、福島県に行って放射能の除染作業の手伝いをしてみようかなと、漠然とは考えていました。子供は親の手を離れたし、孫も生まれたので思い残すことはなく。これからは、人のためになることをやろうと考えていたんですよね。

髙野さん:なのに、人生はおもしろいものでね。たまたま友達に退職祝いで連れて行ってもらったとんかつ屋さんがきっかけで、今の仕事をしてるんですよ。

休業日だったそのお店を、友人が無理を言って開けてもらってね。他にお客さんがいないもんだから、店主とゆっくり話せたんだけど、会社を辞めたと言ったら「肉を揚げられたら仕事に困らないよ!」と厨房に案内されて、そこで肉の揚げ方を教えてもらったんです。

あとで調べてみたら、そのお店は行列ができるようなとんかつ屋のひとつでした(笑)。

ナカノ:めちゃくちゃシンデレラストーリー!

髙野さん:でも、すぐにはお店を開かず、旅に1年でました。夢枕に弘法大師様が「お遍路をしなさい〜」って立ったことがありましてね(笑)。

「人生は穢れを落とす旅」という弘法大師様の言葉にピンときて、四国八十八ヶ所と高野山、京都の東寺へのお参りを終え、成満堂を開きました。

とんかつがおいしくなる訳がない!?

ナカノ:私は元々とんかつが苦手だったのですが、何度食べても「成満堂」さんのとんかつは食べ飽きないくらい大好きなんです…。

髙野さん:いや〜わかるよ、わかる。私もお店を始めるまでとんかつが苦手でしたから(笑)。だって、普通に考えたらとんかつなんて食べ物がおいしい訳がないんだもの!

ナカノ:ちょっと待ってください!どういうことですか!?

髙野さん:肉がおいしいと言われている温度は、67度前後なんです。それを180度の高温の油でがっつり揚げた食べ物がおいしくなると思いますか…?

ナカノ:確かに、その理論だとアウトですね…。

髙野さん:私の店では外側をさっくり揚げたら、じっくり蒸らすんです。この蒸らしが何よりも大切!

鉄板料理屋に行くと、ステーキに蓋をかぶせて放置しているでしょう。あれも内部がおいしい温度になるように蒸らしているんですよ。

成満堂のとんかつは、160度の低温でじわじわ揚げたあとフライヤー上のスペースで蒸らします

成満堂のとんかつは、160度の低温でじわじわ揚げたあとフライヤー上のスペースで蒸らします

髙野さん:蒸らせば蒸らすほどおいしいので、最近では4分の蒸らし時間を、15分に伸ばし提供しています。

当店にはゆっくりご飯を食べに来てくださる方が多いので、1番おいしい状態のとんかつを食べていただけたらと思っております!

観光客、地元の人に愛されるお店に

成満堂の名前の由来は、お遍路を終える「無魔成満(むまじょうまん=滞りなく法要、修行を終えたこと)」から。

成満堂の名前の由来は、お遍路を終える「無魔成満(むまじょうまん=滞りなく法要、修行を終えたこと)」から。

ナカノ:髙野さんは、なぜ長野でお店を開いたのですか?

髙野さん:元々知り合いだった喫茶「大福屋」の、店主である望月さんに声がけしていただいたことがきっかけですね。最初はランチタイムのみの営業でしたが、予約をいただければ夜の営業も行うようになりました。

ランチタイムのみ間借り営業をしている「成満堂」。配膳してくださったのは「大福屋」の店主・望月ひとみさん。

ランチタイムのみ間借り営業をしている「成満堂」。配膳してくださったのは「大福屋」の店主・望月ひとみさん。

ありがたいことに来客数も、先月は前年比の2倍に増えました。時間と気持ちに余裕のあるお客さんが多いので、とても気持ちがいいですね。

大学生から年配の方まで、幅広くいらっしゃっていただいています。若い女性がひとりでいらっしゃるケースも多いです。

オープン当初は厚めにカットされていたとんかつが、昨年の冬、薄切りカットになったのが女性には嬉しい

オープン当初は厚めにカットされていたとんかつが、昨年の冬、薄切りカットになったのが女性には嬉しい

ナカノ:「成満堂」ならではのこだわりってありますか?

髙野さん:「いい肉が手に入ったから揚げてほしい!」と、お肉を持ち込んでくるお客さんもいますね。ここに集まってとんかつパーティーをすることがあるんだけど、あれはとても盛り上がりますね。

ナカノ:お客さんからしたら、要望を柔軟に聞いてくれるお店は嬉しいですね。

髙野さん:本当は、営業時間を短くしたいんですけどね…。だって、せっかく会社やめたんだもん!(笑)

取材の最後に「弟子を雇ったら休みができるのでは?」と問いかけると、「同じ材料を同じ分量で調理しても、揚げる人が違うとびっくりするくらい味も違うんですよ」と返ってきました。

そうか。髙野さんだからこそ、このおいしさを引き出せるんだろうな。

食べる人に寄り添って揚げ続ける、優しいとんかつの味。

「成満堂」ののれんをくぐれば、満腹以上の幸せを感じられるはずです。

ライター紹介

ナカノヒトミ
ナカノヒトミ
1990年長野県佐久市出身。2017年よりフリーライターとして活動を始めた。ウェブメディアを中心に執筆を行う。2018年4月に「やってこ!シンカイ」の店長になり、佐久市から長野市に引っ越す。シンカイで自分の子供を育てることが目下の目標。
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