
土用の丑の日といえば、やはり「鰻」ですが、皆さんは今年、鰻を食べましたか?
昨今では、コンビニやスーパーで購入できたり、ファストフード店でも気軽に味わえるメニューが提供されているなど、そのハードルは少しずつ下がっています。
一方で、鰻の絶滅危惧を心配する声があるのも事実。そんな中、鰻屋さんなのに「当店は毎年、土用の丑の日は休業させて頂いております」という驚きのお店を発見しました!
調べてみると、最も繁盛する日だからこそ、お店を閉めてまで必ずしていることがあるのだと判明。
筆者である「名古屋グルメ探偵」がインタビューして参りましたのでご覧ください。

昭和35年から3代に渡って愛され続ける『うな豊』があるのは、愛知県名古屋市瑞穂区。
中村区や中区などの名古屋中心部ではないものの、その味を求めて多くのファンが通い詰める名店なんです。
ちなみに公共交通機関でのアクセスは、名古屋市営地下鉄桜通線「瑞穂運動場西駅」3番出口から徒歩5分程。専用駐車場は8台分設けられています。

ガラガラ~と戸を開くと、広がるのは実家に帰ってきたような安心できる空間。心温まるアットホームな接客で出迎えてくれます。
炭火で鰻を焼き上げる良い香りが充満しているので、食欲もそそられますね。

奥にはテーブルだけでなく、お座敷の席も。
繁忙期の6月から9月は、席の予約を受け付けていないのでご注意ください。

どこか懐かしい…家庭的でホッとやすらぐ店内です。
ちなみに『うな豊』は、2019年5月17日(金)に発行された「ミシュランガイド愛知・岐阜・三重2019特別版」にて、ミシュランプレート部門に認定されたもの凄いお店なんです!

『うな豊』店主:服部公司さん
ーーこの度はミシュランガイドへの認定、おめでとうございます。以前こちらで食事した際に「凄く美味しい!」と、感動したファンの1人なので私も嬉しいです。
「僕が1番驚いています(笑)。名古屋近辺のミシュランガイドブックが発行される前から、載りたいなという気持ちはあったので1つの夢が叶ったようです」
ーー掲載後の反響はいかがでしょうか?
「ありがたいことに非常に多くのお客様からお祝いのお言葉を頂戴しました。友人からは、さらに上を目指してほしい!という声もありましたが、僕としては真面目に自分にできる精一杯のことを、やり続ける以上にできることはないんです。
もし次に掲載されなかったとしても、上とか下ではなく方向性の話かなと。きっと悔しい気持ちはあるでしょうけどね(笑)」
ーー『うな豊』さんは、土用の丑の日をあえてお休みされているんですよね?
「先代からお休みにしていますね。仕事が雑になることを嫌ってという理由もありますが、鰻の食文化がこの先も守られるようにと、名古屋市南区の長楽寺動物霊園さんで感謝の気持ちを込めて鰻を供養しているんです」
鰻を破棄しない為、受注販売を始めたコンビニがある。
— うな豊 (@unatoyo) 2019年6月8日
そもそも鰻を破棄する想定。
我々鰻屋には破棄など全くあり得ない想定。
鰻屋は「全ての鰻でお客様を幸せにしたい!」の強い思いでひと焼きひと焼きに魂を込めている。
改めて伝えたい。
「鰻は鰻屋で。」
昔から決まっている。
私ごときのツイートに多大なる反応をくださいました事、驚きと共に感謝申し上げます。
— うな豊 (@unatoyo) 2019年6月10日
私が申し上げたいのはコンビニへの批判ではなく寧ろ受注販売に踏み切った事実。
そしてそれまでに鰻のみならず“破棄”を容認している食品業界に胸を痛めている事を伝えたかったのです。命ある食材への感謝を込めて。
ーー最も繁盛するであろう日に供養とは…!絶滅が危惧されている鰻への愛情を感じますね。Twitterで発信されていた内容も、凄い反響でしたね。
「否定しているわけではありませんが、破棄することを想定した販売体制はいかがなものかと。絶滅危惧種の鰻が、そのような扱いを受けていることに、怒りと悲しさが混ざった気持ちになりますね。
鰻屋はそれだけの覚悟でやってるんだよ、という気持ちが伝われば嬉しい。だからこそ貴重な鰻を食べるのであれば、元気な鰻を良い状態で提供できる専門店を勧めたいです」

鰻の価格は年々高騰していますが、専門店にしてはかなりリーズナブル。税込表記でこの価格帯は、かなりお値打ちではないでしょうか?
どれだけ忙しい時でも、注文後に生から焼き上げる強いこだわりも素晴らしいです!
魅力的な商品は多数ありますが、今回は「まぶし丼・松(¥2,000)」と食べ比べができる「紅白重(¥3,500)」を頂きました。

名古屋名物のひつまぶしを気軽に堪能できる「まぶし丼・松」
提供される直前から漂う良い香り、そして美しい焼き色に惹きこまれます。お吸い物に肝が入っているのも嬉しいですね。
まずはそのまま、うな丼としていただきます。

鰻の表面は香ばしい状態ですが、中はふっくらと柔らかい仕上がり。店主曰く、薄皮1枚のサクッと感を目指し、備長炭を使用してじっくり中まで焼き上げているとのこと。
あまりにも食感がフワッとしているので、江戸前のように蒸していると思われる方も多いそうです。
そして扱っているお米は、新潟産のコシヒカリ。「可能な限り少量をこまめに炊くことで必ず炊き立てを食べてもらう」という信念から、保温機能を付けていないんです。

続いて薬味の、葱と山葵を合わせていただきます。こうすることで、先ほどよりもサッパリと頂くことができます。

先代からの味を守り続けているというタレは、濃すぎないので鰻本来の味わいをしっかり感じられ、上品な出汁と合わさることで、その旨味が活かされたお茶漬けに。

「紅白重」
続いてはこちら。
蒲焼きのうな重、別添えになった白焼きを、同時に味わえる人気メニューです。

まぶし丼と同様、最高の焼き加減を堪能できます。
鰻は産地で選ぶのではなく、目利きで良いものを厳選して仕入れているそう。
「日本国内に流通する生きた鰻は、輸入物でも非常に厳しい検査をクリアしたものなので安心してお召し上がりください」とのことですよ。

白焼きは塩か白醤油で頂きます。タレが付いていないからこそ、焼き具合の素晴らしさをよりお伝えできているのではないでしょうか。
ホロホロとほぐれる食感とともに、口いっぱいに香ばしさと鰻本来の脂がのった美味しさを感じます。シンプルだからこそ店主の技術を実感しますね。

店主曰く、「僕は融通が利かない。それゆえに最初は"敷居が高い"と感じるお客さんもいるでしょうが、まっすぐ生きて信頼される人間になりたい」とのこと。
土用の丑の日に、あえて休業する鰻屋『うな豊』。
絶滅が危惧されている鰻を供養することで、この先も守り続けていきたいという深い愛を感じるお店でした。
素材への凄まじい愛情こそが、技術だけでは生み出せない絶品料理の境地に繋がっているのではないでしょうか。
- うな豊
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愛知県 名古屋市瑞穂区 豊岡通
うなぎ