モンブランと言われて思い描くのは?
栗をふんだんに使ったスイーツ、モンブラン。見た目はちょっと地味なこのモンブランは、スイーツの中で一番好きという人も多い、隠れた人気者。
手土産のケーキで、実は取り合いになりがちなのもモンブラン。
そんなモンブランだが、名前を聞いて思い浮かべるのは黄色いもの?茶色いもの?
実は、そのイメージで世代が分かれるといっても過言ではないのだ。
『オムライスの秘密 メロンパンの謎〜人気メニュー誕生ものがたり〜』(新潮文庫)の著者・澁川祐子氏は語る。
「昭和生まれの私にとって、モンブランといえば、栗きんとんみたいな黄色いペーストをぐるぐるっと高く盛ったものでした。
でも、気づいたら、茶色いペーストで一定方向にした均整の取れたものが主流になったような気が。
そこで執筆に当たって、モンブランについて調査し始めたのです」
澁川さんが日本の定番となったメニューの歴史を辿り、それがいつ、どのように生まれて根づいていったのかを
探る時に、決めたことが一つある、という。
「文献によってできるだけ事実を明らかにしようと努める、ことです。
元祖とされる店に直接話は聞かないということにしました。
話を聞いてしまう客観的な判断が下しづら苦なるので、一般に出回っている説を、文献によって改めて検証しようと思ったんです」
元祖・自由が丘「モンブラン」の黄色いモンブラン
日本で初めてモンブランを売り出したのは、東京・自由が丘のその名も「モンブラン」だ。
その「モンブラン」のモンブランは、これである。
「そうそう、これこそモンブラン。そう思った人は昭和世代って言っていいでしょうね(笑)。創業は1933(昭和8)年。
迫田千万億(さこたちまお)氏が開いたのが始まりです。
登山が好きだった彼が渡欧した際に、秀峰モンブランを見て感動したところから、この店名がつけられました。
そして、モンブランを看板メニューにするべく独自のものを開発したそうです」
こちらのモンブランの特徴はまず、土台にカステラが使われていること。
土台のカステラ上部をくりぬいたところにカスタードクリームと生クリームをたっぷり、そして栗を丸ごと一粒。
バタークリームで縁取りした後、栗のペーストをぐるぐる絞ってある。
「この栗のペーストもポイント。フランス産のマロンペーストではなく、日本人の舌になじみ深い甘露煮を使っているんです。
トップには焼いた白いメレンゲ。アルプスの山々に残る万年雪をイメージしているそうです」
「この和栗のペースト。まさに栗きんとんですよね。おせちに入ってても全く違和感がない。さらっとしてて、どこか懐かしい味わい。
そして、フワッフワッのカステラも、とても懐かしい感じがしませんか?
全体的な柔らかい口当たり、しっかりした甘さは、やっぱり日本人の為に開発された昭和の洋菓子なんだと改めて感じます」
「モンブラン」という言葉。迫田氏は、モンブランという屋号を商標登録したものの、独自に開発した黄色いモンブランの方は商標登録しなかったという。
「日本洋菓子界の発展を願い、広く一般にこの洋菓子の銘柄を解放することを望んだから、だとか。
そのため、黄色いモンブランはあらゆる洋菓子店で真似て作られるようになり、結果的にモンブランと言えば黄色と認識されるまでになったんです」
ちなみにRetty編集部は、昭和世代2人と平成時代3人の構成。
昭和世代にとっては、幼少期の記憶がよみがえるような懐かしい見た目と味わいに胸をときめかせ、平成世代にとっては「初めて味わうモンブラン」と新しい文化との出会いであった。
そんな風に世代を超えて語り継がれるもの、それこそが定番メニューの必要条件なのかもしれない。
- MONT BLANC
-
東京都 目黒区 自由が丘
ケーキ屋
黄色いモンブランを知ったところで、次は「茶色いモンブラン登場。さらに、実は白いモンブランが元祖だった?〜人気メニュー誕生ものがたり①後編〜」。
茶色いモンブランと白いモンブランに迫ります。
■「オムライスの秘密 メロンパンの謎〜人気メニュー誕生ものがたり〜」(澁川祐子著・新潮文庫)
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