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連載:ありがとう、忘れない、そしてさよなら三江線

来年廃線となる”三江線”。駅のホームで乗客に手を振り続ける寿司屋「新栄寿し」夫婦の想い

三江線沿線魅力化プロジェクト、実行委員長の吉田悠生と申します。

皆様は、来年2018年3月31日に廃線となる「三江線」をご存じでしょうか?

三江線のすぐそばに流れる江の川

三江線のすぐそばに流れる江の川

三江線とは島根県江津市から広島県三次市まで108.1キロにわたって江の川沿いを走るローカル線のこと。両端を含めて35駅あります。

本数が少ない三江線。上り下り合わせて1日10本の列車しかありません。

三江線に沿うような形で道路が整備されたこともあり、年々利用者も減り続け、来年の3月末をもって廃線になることが、決定しました。

三江線の廃線が検討されていた昨年の1月。何もせずに廃線になるのは悔しいので、力を合わせてできることはとりあえずやってみようという考えのもと、沿線有志の4人が集まり、活動を始めました。

花見列車の参加者のみなさまとパシャリ

花見列車の参加者のみなさまとパシャリ

まずは4月。桜シーズンにあわせた企画として私たちが地元の旅行会社に提案して実現した、お花見列車ツアーが行われました。満開の桜に恵まれて、40名ほどのお客さんと一緒に楽しみました。

このように、色んな方と協力して沿線でのイベントやツアー、駅前でのお祭りなどを昨年から毎週開催または支援してきました。

残念ながら三江線の廃止は決まってしまいましたが、「廃線になる前に一度乗っておこう」という全国からのお客様で、現在は多くの人が来てくださるようになりました。

廃線になるまで残り少ない期間ですが、地域の方と訪問される方に少しでも楽しんでもらえるように、現在は活動しています。

三江線の一大スポット「石見川本駅」

三江線の一大スポット「石見川本駅」

三江線を乗るお客様がよく寄る駅の1つに石見川本駅があります。

昔は栄えていた川本の街

昔は栄えていた川本の街

石見川本駅の周辺は昔、その界隈の田舎の官公庁の地方拠点派出所が集まり、そこで働く方々を支える飲食店が多くありました。

今ではその拠点のほとんどが縮小または撤退してしまい、それに伴い店の数も減っていっています。

今年、三江線おもてなしサロン完成

今年、三江線おもてなしサロン完成

廃線を機に再び多くの訪問客がいらっしゃるようになったため、その方々をもてなそうと、駅前に今年から川本町観光協会の運営で「三江線おもてなしサロン」がオープンしました。

こちらでは無料で飲み物の提供をしていて、出発までの待ち時間にゆっくりとくつろいだり、川本の特産品や三江線のグッズを買うことができたりします。

駅前にお店を構える「新栄寿し」

駅前にお店を構える「新栄寿し」

そんな石見川本駅降りてすぐのところに「新栄寿し」というお店があります。

おいしい!お手頃!にぎりセット

おいしい!お手頃!にぎりセット

私イチ押しのメニューは「にぎりセット」。
このにぎりと汁物と小鉢がついて、1,000円です。

江の川のアユも食べられる新栄寿し

江の川のアユも食べられる新栄寿し

6月から三江線沿いを流れる江の川の鮎漁が解禁します。その鮎を提供してくれる数少ないお店です。7月後半から8月ごろの鮎が特におすすめだそうです。

長年、三江線と共に過ごしてきた大将と女将

長年、三江線と共に過ごしてきた大将と女将

こちらが「新栄寿し」の大将と女将さん。

川本まで来たお客さんを夫婦二人三脚でおもてなしします。

このお店が三江線との結びつきが深くなったのは、鉄道ファンそして川本ファンがお店にたくさん集まってきたから。彼らに育ててもらったと二人は話します。

その証を見せていただきました。

お店に置かれた三江線同人誌

お店に置かれた三江線同人誌

まず見せてもらったのは、店内に置かれている三江線の同人誌。店内で販売もしています。

約5年前、都市部から川本に鉄道好きの人が赴任してきました。

彼は店によくきては、よく三江線の話を聞かせてくれたそうです。

そして話すだけでなく、自分たちで三江線同人誌を作成してPRを図ったり、ツアーやイベントの手助けをしたりと三江線に関わることを色々と取り組んでいきました。

そんな姿をみて、大将と女将も少しでも彼らのお力添えになれば・・・と、彼らが作る同人誌をお店で発売するようになりました。

結果、徐々にお店が三江線好きの方を中心に知られるようになったのです。

旅の思い出を記す、名物「駅ノート」

旅の思い出を記す、名物「駅ノート」

そんな中で「旅の思い出を書き留めたい!」お客さんがお店に尋ねました。

その場で急きょ、大将のメモ用のノートを取り出して、書いてもらいました。

みんなが書いたほうが旅のお客さんも書きやすいからと、まずは地元のお客さんも書いてくれたそうです。

今では立派な背表紙の2代目に代わり、5年間つづくお店の名物ノートになりました。

何度も訪れるお客さんもいらっしゃるようで、また会えるのが大変うれしいそうです。

女将さんが90分留まった汽車をお見送り

女将さんが90分留まった汽車をお見送り

三江線は2000年代半ばから、お昼に石見川本駅で約90分間停車するようになっています。

そして5年ほど前から、当時川本町観光協会の職員だった有田さんがお出迎えとお見送りを始めました。有田さんは川本が大好きで町の歴史もよく精通しています。

川本で他所からの人が来るところとして石見川本駅のお昼に注目。鉄道ファンを運んでくるお昼の列車に合わせて、地図を配って飲食店を紹介して、空いた時間では川本の歴史を話したりしていたそうです。

そんな川本のPR、おもてなしに一生懸命な姿をみて、「応援したい」と思った新栄寿しの大将と女将。さっそくできることから始めました。

大将は板場にたって寿司をにぎりながら、三江線や川本の昔話をお客さんに聞かせました。

また、あの「駅ノート」にも記入を呼び掛けて思い出をつづってもらいました。

帰り際は女将さんが有田さんと一緒にホームまで出て手を振りに出かけました。

またお見送りが終わった後、有田さんとご夫婦でお客さんの情報交換をして、次のお出迎えに備えていました。

以前はお見送りする人が少ないどころか、そもそもお昼や土日に空いているお店も少ない町でした。しかし協力して続けていくと徐々に、この三江線の乗客に注目が集まり、昼営業や土日営業を始める店がでてきました。

現在の石見川本駅のお見送り

現在の石見川本駅のお見送り

長きに渡っての活動によって、徐々に仲間が増えていきました。

手作り面白グッズを作る駅前の電気屋のご主人、お出迎えの新たな顔となったUターンの若者、そして必ず毎日誰かがお出迎えしているようにと、交代で町役場の職員までもが関わるようになりました。

それが今では、たくさんの人がお客さんのお出迎え、おもてなし、お見送りにかかわってくれるようになりました。

石見川本駅の13:45はお見送りにかかわる人、散歩ついでの近所の人、ふらっときた旅の人まで関わる、一大イベントとなりました。毎日、別れを惜しむ人たちでいっぱいです。

石見川本駅前にたたずむ一つのお寿司屋さん「新栄寿し」。

その店を営む夫婦は、三江線や川本を愛する人たちを応援し続けています。

その応援の象徴が、石見川本駅でのお出迎え・お見送りなのかもしれません。

お昼の石見川本駅で起きるお見送りも、あと1年。

取材時、「新栄寿し」の大将も女将も「川本までわざわざ足を運んでくれてありがたい」と、何度も言っていました。

そして同じような気持ちをもつ人がどんどん駅へ出てくるようになりました。

新栄寿し以外のお店も三江線のお客さんをお待ちしています。

あと1年間しか見ることのできないこの雰囲気を、まずは一度、ぜひじっくり味わってみてください。

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