連載:結局、餃子とビール

何度でも言う。赤坂「珉珉」の焼餃子&酢コショウは、餃界を揺るがした発明品だ

ライター紹介

塚田亮一
塚田亮一
餃子の食べ歩きブログ「東京餃子通信」編集長。「餃子は完全食」のスローガンのもと、訪問したお店は1,000軒以上。首都圏を始め、宇都宮・浜松などのご当地餃子の街、さらには世界中の「美味しい餃子」を求めて食べ歩く餃子のスペシャリスト。食べあるきオールスターズ「食べあるキング」の餃子担当も務める。

こんにちは。皆さん、餃子はお好きですよね。私も大好きです。

私は、餃子好きが高じて立ち上げた餃子専門ブログ「東京餃子通信」の編集長を務めています塚田亮一と申します。

餃子の魅力のひとつにシチュエーションに合わせ、変幻自在にその役割を変えることができる自由さがあります。白米のお供として餃子定食では主菜を務め、ラーメン店ではラーメンの引き立て役もきっちりと演じます。

餃子発祥の地、中国では麺や米と同様に主食として、そして宴席のお祝いの食事として活躍しています。野球では大谷翔平の二刀流に注目が集まっていますが、餃子はその上を行く三刀流、四刀流の役割をこなし、皆さんの期待に応える料理界のスーパースターといっても過言ではありません。

そんな、いかなる状況でも活躍が期待できるスーパースターに、私が最も活躍を期待しているのはお酒のお供、特にこれからの夏に向けて飲みたくなるビールの相棒としての役割です。

「餃子とビール」、この最強の組み合わせを楽しむためには、実は餃子側にもかなりのレベルの高さが求められます。そこで、私がこれまで食べ歩いてきた1,000店を超えるお店の中から、ビールが本当に楽しめる餃子をご紹介していきたいと思います。

ニンニク入り焼き餃子を広めた伝説の餃子店の直系

今回紹介する餃子とビールの美味い店は、赤坂の「珉珉」

赤坂駅から徒歩15分ほど。赤坂小学校の脇をさらに奥に進んだ路地裏にある中華料理店です。

見た目は大衆中華のお店ですが、この立地の悪さにもかかわらずランチタイムは連日行列、夜も予約が必須の超人気店なのです。

この人気の秘密は「焼き餃子」。先代の清水秀夫さんが約50年前に独立して珉珉が誕生。実は、清水さんが独立前に料理長を務めていた渋谷の「珉珉羊肉館」は、戦後の日本に「ニンニク入り」の焼き餃子を広めた立役者のひとつとしても有名な伝説的な餃子店だったそうです。

「珉珉羊肉館」は、ご飯のおかずとしてニンニク入りの焼き餃子をブレイクさせました。そして、その味を受け継ぐ珉珉では、更にその餃子をビールとの相性抜群な味に進化させているのです。

「酢コショウ」で食べる餃子はビールと相性抜群!

餃ビーを注文すると、ビールと一緒にお通しが運ばれてきます。

このお通しも珉珉の名物メニュー。白髪ネギと大根と揚げニンニクに肉味噌、これらを全部まぜて食べるパンチの効いたお通しです。

お通しをアテにビールを飲みながら餃子の焼き上がりを待ちます。

続いて、餃子の焼き上がりに合わせてタレを調合しようとお皿に手を伸ばすと、名物女将がすかさず「あんた、うちの餃子の食べ方知ってる?」と、タレに作り方を指南してくれます。

お皿にお酢を注ぎ、粗挽きコショウをたっぷりと振りかけてくれます。そう最近流行りの餃子ダレ「酢コショウ」です。

この珉珉は、酢コショウ発祥のお店としても有名。戦後ニンニク入り餃子を流行らせたお店が、次に作ったトレンドが「酢コショウ」なのです。

珉珉の焼き餃子は一見するとオーソドックスな餃子ですが、ひとつひとつ手包みで焼き面を広めにとり、縁の部分までカリッと焼かれています。餡も粗めに刻まれた野菜と豚肉の食感を活かすため、あくまでも手ごねにこだわっています。

そして、珉珉の餃子の特徴は、餡の味の奥深さ。先代が、「珉珉羊肉館」の餃子よりも深く濃い味付けにしたんだとか。さらに秘伝の調合で下味をつけた餡を皮で包んだ後、一旦凍らせることで味をなじませる工夫もされているとのこと。

餃子が出てきたら迷わずに酢コショウを餃子にたっぷりと付け、そのままひと口で頬張りましょう。

すると、口の中で皮が破けて、旨味たっぷりの肉汁が溢れ出します。そして、その後から食感のしっかり残った粗挽き餡に舌が到達。お酢で余計な油が落とされているため、餡の味わいがダイレクトに舌に伝わってきます。コショウの刺激の相乗効果もあって、口がビールを求めます。

口の中に餃子の余韻が残るうちに、すかさずジョッキに手を伸ばしビールを流し込みます。ビールで口の中が一気にリセット。気がつけば、次の餃子に箸が伸びています。

餃子、ビール、餃子、ビール、どちらかがなくなるまで延々と続く無限ループ。この調子で珉珉での餃ビーの第一ラウンドはあっという間に終了してしまいます。

中から外から濃厚ひき肉が押し寄せる「味噌餃子」

珉珉にはもうひとつビールと合わせて欲しい餃子があります。その名も「味噌餃子」。神戸の餃子のように味噌ダレをつけて食べる餃子ではありません。餡の味付けに味噌が使われているわけでもありません。

初めて珉珉の「味噌餃子」に出会った方は一様に驚きの表情を見せます。こちらが、驚愕の味噌餃子! 

かなりインパクトのあるビジュアルですよね。

丼いっぱいの肉味噌の中に茹で餃子がどっぷりと浸かっています。餃子の皮を挟んで餡もひき肉、ソースもたっぷりの肉味噌のあんかけ。この肉味噌はピリ辛で、味付けもかなり濃厚。この濃厚な肉味噌が茹で餃子の餡とからまることで、他では味わえない餃子に仕上がっています。

皮の表面に肉味噌を絡めるだけでなく、餃子の皮に穴を開けて肉味噌の旨味を吸い込ませてから餃子を食べるのがお勧めの食べ方です。味噌餃子も見事なまでにビールのピッチを速めてくれます。

この肉味噌は餃子がなくなった後まで取っておいて、締めの白米やチャーハンに掛けて食べると二度楽しめます

実はカレーも美味い!  人急上昇中の「茄子咖哩」

珉珉で最近密かに人気急上昇中のメニューが「茄子咖哩」です。いわゆる中華系のカレーなのですが、油通しをして油を吸った茄子とカレー粉のスパイシーな風味の相性が抜群。

さらに、衣をつけて揚げた鶏肉がトロッとしたカレーをまとってまた美味い。胸肉を使っているのですが、パサついた感じは全くなく、とても柔らかく、旨味もしっかりしています。隠れたところで高い技術を見せてくれるが嬉しいですよね。

メニューには書いていないのですが、ライスが欲しい方は「茄子咖哩丼」とオーダーするとカレーライスとしても楽しめます

そして、この「茄子咖哩」は、揚げ餃子にかけて食べるとまた美味なのです。サクっと揚げられた揚げ餃子の上からスパイシーな香りでとろみのあるカレーソースをたっぷりかけると、表面が若干しんなりとした独特の食感になります。餃子の中に閉じ込められた肉汁と餡とカレーが組み合わさり旨味倍増!

思わずビールジョッキに手が伸びます。みんな大好きな餃子とカレーの共演。ビールに合わない訳がないですよね。

締めはやっぱり「ドラゴン炒飯」

ビールと餃子、そしてカレーをたっぷりと楽しんだ後は締めのメニューに行きたいところ。

珉珉ではご飯ものや麺類も充実しているので締めのメニューでも目移りしてしまいますが、私はほぼ100パーセント、「ドラゴン焼飯」で締めます。

ドラゴン炒飯の「ドラゴン」たるゆえんは「ニンニク」と「ニラ」。これらがガッツリと効いたスタミナ系炒飯。もともとはスタッフが夏場に元気をつけた時の賄いメニューから生まれたものです。

「ドラゴン炒飯」が運ばれてくると、そのニンニクとニラの香りで食欲が再度刺激をされます。ニンニクとニラ以外にも、卵とごろっと大きめに刻まれたチャーシューが入っていて満足度がとても高い炒飯です。ふっくらと炊かれたお米を炒めすぎず、しっとりと仕上げているのもポイントです。食べた後のお口の匂いが若干気になりますが、この美味しさには変えられませんね。

餃子、カレー、スタミナ系炒飯……どれもビールとの相性は抜群! 美味しいビールを飲みながらスタミナ補給できるなんて最高ですよね。今年の夏の暑さに負けそうになったら、赤坂の珉珉まで足を運んでみてはいかがでしょうか。

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