皆さんは5年に1度、“和牛の祭典”が行われることをご存じですか?
その祭典の名前は 「全国和牛能力共進会」。通称 「全共」と呼ばれています。公共社団法人全国和牛登録協会が主催しており、優秀な和牛を一堂に集め、改良の成果やその優秀性を都道府県単位で競う全国大会です。
大会で優秀な成績を収めることは、その和牛ブランドの市場価値向上につながるため、全国の畜産農家にとって大変名誉なこと。出品される和牛は、大会に向けて品質の改良を重ねてきた精鋭たちです。
今回、Rettyグルメニュース編集部は開催地である宮城県に直行! 9月7日~11日にかけて仙台市内で行われた、第11回大会の様子を取材しました。和牛たちの熱い5日間を、牛(ぎゅ~)っと詰め込んでお届けします。
和牛がずらりと並ぶ審査会場、静かに白熱するセリ会場へ
メインの開催場所となったのは、仙台市にある”夢メッセみやぎ”。体つきや品位などを審査する「種牛の部」の会場です。
メイン会場からほど近い仙台市中央卸売市場食肉市場では、枝肉(骨がついた状態の肉)の脂肪の入り具合などの肉質を見る「肉牛の部」の審査が行われています。
種牛の部には330頭、肉牛の部には183頭、合計513頭が全国から出品されました。
早速、「種牛の部」の審査会場へ。広々としたスペースには、全国から集まった出品牛がずらり。固唾をのんで審査の様子を見守っているのは、出品者である農家の方々です。
「種牛の部」が1~6区、「肉牛の部」が8,9区、種牛と肉牛の混合部門が7区と、月齢や雌雄などを基準に区分けされ、それぞれの区で順位が決まります。さらに区や順位とは関係なく優れた特徴を示すものには特別賞が与えられ、順位や賞が決まるたびに客席からは大きな拍手と歓声が上がりました。
続いて訪れたのは、開催期間中9月10日のみ行われた枝肉のセリ会場です。
賑やかな種牛の審査会場と打って変わって、こちらは卸業者や出品者のみ参加しているため緊張感のある雰囲気。それぞれ真剣な面持ちで、スクリーンに映し出される枝肉の写真を見つめています。
次々と写真が切り替わる中、購買者たちは入札額を決めていきます。この日、高額なものでは1kgで5万円以上の値がついたものも! 普段はなかなか見ることができない貴重なセリの様子を、肌で感じることができました。
ブランド和牛の無料試食やBBQも! 大盛況のイベントスペース
全共はプロのためだけの祭典ではありません。一般来場者向けにも開放されているため、各ブースでは全国のブランド和牛の試食や仙台黒毛和牛のバーベキューなど、絶品グルメが目白押し! 編集部が会場に到着したお昼ごろには、既に多くの人で賑わっていました。
家族連れを中心に、若いカップルや年輩のグループまで、老若男女がおいしい和牛を求めて会場内を歩いていました。
何人かの方にお話を聞いてみると、やはり宮城県内にお住まいの方が多い様子。小さなお子さんを連れたママ友2人組は「テレビCMを観て来ました。親戚が集まるときやお祝いごとのときしかブランド牛は食べられないので、こういう機会は嬉しい!」とにっこり。
親子3人でブランド牛の試食に並んでいたファミリーは「家がすぐ近所なので来ました。たくさん食べて帰ろうと思います(笑)」と気合十分! どなたもお肉を口に運んだ瞬間、みるみる笑顔になるのが印象的でした。
今回の開催地・宮城県産和牛のトップブランドである仙台牛の試食ブースにもお邪魔しました。
A5・B5ランクの牛のみと定められている高品質な仙台牛ですが、地元でもまだその魅力に気づいていない人は少なくありません。今回の全共の開催をきっかけに、そのおいしさがより多くの人に伝わっていくことが期待できそうです。
ほかにも、会場には親子で和牛のことを楽しく学べる「べごっこミュージアム」や、ご当地ヒーローや人気タレントによるステージイベントなど、丸一日いても楽しく過ごせるイベントで充実していました。
注目の審査結果発表! 果たして地元・宮城県の入賞は?
いよいよ最終日となった9月11日、全体の成績発表、表彰式が行われました。その結果、出品団体表彰上位5席、そして「種牛の部」「肉牛の部」の名誉賞に輝いたのは下記のとおりです。
【出品団体表彰】
首席 鹿児島県
次席 宮崎県
3席 大分県
4席 宮城県
5席 鳥取県
【種牛の部】
名誉賞 大分県
【肉牛の部】
名誉賞 宮崎県
圧倒的な強さを見せた九州勢! 開催地である宮城県は惜しくも全体での首席を逃しましたが、出品団体表彰では九州勢に続き4席を獲得。
そして生後14~17か月齢未満の若い雌牛が出品される「種牛の部」第2区で、見事1席・日本一の座に輝きました! 表彰式では宮城県知事から表彰状が授与され、受賞した小野寺さんは深々とお辞儀をして受け取ります。
そのほか、宮城県は特別賞として「肩付賞」(第4区)、「体積・均称賞」(第5区)にも選ばれました。
賞に選ばれた牛も選ばれなかった牛も、この日のために丹精込めて農家さんたちが育ててきたことに変わりはありません。最後はすべての出品者に会場から盛大な拍手が送られ、和牛の祭典は閉幕しました。
開催期間の合計来場者数は41万7000人。5日間という短い間で、多くの人が和牛の魅力にふれることができました。
次回は5年後の2022年、鹿児島県で第12回大会が開催されます。5年後の栄誉に向けて、そして5年後もおいしい和牛を食べてもらうため、農家の皆さんはすでに準備を始めているはず。
果たして今度はどの和牛が日本一に輝くのか? 楽しみに待ちたいと思います。