• Top
  • PR
  • ケンドーコバヤシが慕うお好み焼き屋「ことみ」。86歳、82歳の夫婦が営む路地裏の店にある人生の縮図
連載:人生最高レストラン

ケンドーコバヤシが慕うお好み焼き屋「ことみ」。86歳、82歳の夫婦が営む路地裏の店にある人生の縮図

誰しも、人生で一番美味しかった料理がある。

味はもちろんのこと、共にいた仲間。感じた想い。交わした言葉。目にした風景…。様々なことが重なり合って、美味しい想い出を創り上げている。

そんな、忘れられない最高の料理を語る番組『人生最高レストラン』。これは当番組で紹介された一品を、ライター松浦達也が実際に食し、その想い出を追いかけた記録である。

ライター紹介

松浦達也
松浦達也
ライター/編集者。「食べる」「つくる」「ひもとく」を標榜するフードアクティビストとして、テレビ、ラジオなどで食ニュース解説を行うほか、『dancyu』から一般誌、ニュースサイトまで幅広く執筆、編集に携わる。著書に近著の『新しい卵ドリル おうちの卵料理が見違える』ほか『家で肉食を極める!肉バカ秘蔵レシピ 大人の肉ドリル』(ともにマガジンハウス)など。

裏路地の奥の奥。のれんをくぐると、気さくなお母さんが「いらっしゃい」と迎えてくれる。大阪にはそんな店が無数にある。

例えば大阪の下町、82歳のお母さんと86歳のお父さんの夫婦ふたりで切り盛りする「ことみ」のなんと心温まることか。

「ことみ」は『人生最高レストラン』でケンドーコバヤシさんが紹介した、お好み焼き店だ。

一見、心細くなるような路地の突き当たりにあるが、引き戸を開けて甲高い「いらっしゃい」という声が聞こえたらもう安心。懐かしいおじいちゃん、おばあちゃんの家に遊びに来たような安心感に包まれる。そしてそこから先、客は客ではなくなる――。

どういうことか。

まず卓に着くと、お母さんが、すうっとお紙と鉛筆を差し出す。そこに注文を書くのは客だ(値段まで書きこむ常連もいる)。

客が紙に書き込んだ飲み物を客自身が冷蔵庫から取り出す。おでんだってそう。おでん鍋から好きな具材を皿に盛り、自分で紙に書く。高齢の店主夫妻を気遣った地元の常連客を中心に、いつしかこういう注文方法になってきた。

創業は昭和32(1957)年だから、もう60年間営業し続けている。お母さんに昔話を聞くと……。

「もともと私はな。兵庫の田舎のほうの出身。大阪に来て結婚して、すぐ子どもができちゃったから、商売でもやろうかって話になったの」

開業当時のお母さんは22歳。時折お父さんも手伝ってくれたものの、会社勤めをしていたお父さんが定年を迎えるまでの34年間、店を切り盛りするのはお母さん一人だったという。

「昔は朝10時から夜中の2時くらいまで営業しとったな。お昼は高校生が学校をサボって来るし、夜は夜でお風呂上がりにみんな来る。昔はこのあたり、洋服屋さんなんかも遅くまで営業してた」

 客の求めに応じるうちに、品書きはずいぶんと増えた

客の求めに応じるうちに、品書きはずいぶんと増えた

番組でケンドーコバヤシさんが「じゃが玉」と言っていた「豚玉のじゃがいも入り」も「これはな。ケンドーさんが『じゃがいも入れたら、お腹いっぱいになる』って言うてくれて」、以来、品書きに入ったリクエストメニューだという。この店は気遣いでできている。

豚玉は500円、そこにおでんの具材である大きなじゃがいも(100円)がコテで8つ割りにして乗せられる。左のじゃがいもなしの「すじ玉」に比べて、じゃがいもひとつ分大きい

豚玉は500円、そこにおでんの具材である大きなじゃがいも(100円)がコテで8つ割りにして乗せられる。左のじゃがいもなしの「すじ玉」に比べて、じゃがいもひとつ分大きい

お父さんが「もうけ度外視でやってる」と言う通り、値段も「いつ変えたかわからないくらい」変えていない。

17時の開店直後、おでん鍋から大根を取りだそうとすると、お母さんから「大根、ちょっと早かったかな。昨日、全部出ちゃったからな。ゴメンな。玉子も沁みてるの取ってな」と声がかかる。おでんも十分沁みているが、それ以上にお母さんの気遣いが沁みる。

お好み焼きも夫婦二人の共同作業だ。奥でお母さんがお好み焼きの材料を調えたら、カウンターのお父さんへとボウルがリレーされる。その様子がなんとも微笑ましい。

お父さんはゆったりと、しかし淀みのない手さばきで、長さ2mはあろうかというつなぎ鉄板の中央に生地を落とす。

お好み焼きなのだから、焼き上がりにももちろん時間はかかるし、混み合えば、多少待つことだってある。それでも、客はみなやさしい顔でコップ片手におでんをつつきながら、にこにことお父さんとお母さんを見守っている。

そう、「ことみ」のお好み焼きは、店内にいる全員の気遣いの賜物なのだ。念のために申し上げておくと、味はまぎれもなく一級品。だが味だけを求める客に、この店はもったいない。「ことみ」には人生に欠かせない「やさしさ」の縮図がある。

ケンコバさんいわく「カンで相づちを入れるしかない」お父さんと、「すごくかわいい」お母さん。そのやさしさに触れるためだけに、この店ののれんをくぐる価値はある。

人生最高レストラン

TBSテレビ・土曜よる11:30〜 MC:徳井義実(チュートリアル)、笹川友里
ゲストの「人生で最高に美味しかったものの”お話”」が聞ける、新感覚・グルメバラエティ。「人生最高に美味しかったもの」を通して、その人の人となり、価値観、人生が浮かび上がる、まさに人と食は切っても切れない関係だということを教えてくれます。

12月2日(土)のゲストは、賀来賢人さん。

心休まる週末の夜に、美味しい話、奥深い語らいで豊かなひとときを過ごしてみてはいかがですか?

最新の人気グルメ情報が届く!

イイねするだけ!
最新の人気グルメ情報が届く!