連載:カツセマサヒコのRettyの食ヲタクと行く、美味しいごはん

カレーは飲み物ではなくて概念!?奥深すぎるカレーの世界を少しだけ覗いてみたら

世の中には、とにかく食べることが大好きな人たちがいる。

いろんなお店に足を運んで、「もっとうまい飯はないか」と探していくうちに、いつの間にか人智を超えた知識と情報量を身に着けてしまい、いつしか「歩くミシュラン」なんて適当なあだ名を友人から付けられてしまう人たちもいる。

この連載は、そういったRetty TOPUSERであり、いわゆる「食オタク」の皆さんがオススメする“とっておきのお店”に連れて行ってもらい、一緒においしいご飯を食べながら思う存分「食」について語ってもらうという、大変飯テロな企画です。

さあ、今日も開けてはいけない扉が、勝手に開いていきます。

【今日の食オタク】

H.Matsuさん
カレー屋訪問3000軒以上。あらゆるメディアを横断し、国内外の様々なカレーを紹介しており、ジャパニーズカレーアワードの審査員も務めるいろいろと凄い人。普段は映像制作の仕事をしている。

新店舗は“超能力”で見つける変人、登場。

自己紹介もそこそこに、乾杯から始まるインタビュー。

自己紹介もそこそこに、乾杯から始まるインタビュー。

――今日はよろしくお願いします。

はい、お願いします。

――Matsuさんは、昔からカレーが好きなんですか?

そうですね。カレーはおもしろいんですよ、本当に。

――いろんな食べ物があるのに、どうしてカレーなんでしょう?

カレーって、漠然とした中心はあるけど、境界線がないんですよね。

――境界線がない……?

なんていうか、ラーメンだったら「こういうもの」っていうイメージがみんな描けるんですけど、カレーって、そういうイメージがないんです。つまり、カレーは概念なんですよ。

――「カレーは飲み物」なら聞いたことありますけど、「カレーは概念」は進化しすぎじゃないですか?

そう。だから、カレーには「これで完成!」っていうものがないんです。すごいでしょ?

――ええ? でも「ルー」と「ご飯」があれば、なんとなく完成じゃないですか?

カツセさん、カレーファンに怒られますよ、本当に。

――やばい、全然わからないですけどごめんなさい。

今日のお店は、経堂駅にある「ガラムマサラ」。「カレー自体はインド発祥だけど、原材料である唐辛子は中南米だし、クミンはエジプトから来ている。“異文化を混ぜることで新しい刺激が生まれていく”というのがカレーの本質だと思うので、年に何度も世界旅行をして、そこで出会った美味しいものを取り入れて新しいメニューにするこの店は、カレーの概念を象徴していると思ってセレクトしました」とMatsuさん。

今日のお店は、経堂駅にある「ガラムマサラ」。「カレー自体はインド発祥だけど、原材料である唐辛子は中南米だし、クミンはエジプトから来ている。“異文化を混ぜることで新しい刺激が生まれていく”というのがカレーの本質だと思うので、年に何度も世界旅行をして、そこで出会った美味しいものを取り入れて新しいメニューにするこの店は、カレーの概念を象徴していると思ってセレクトしました」とMatsuさん。

ーー3,000店も回るとなると、カレー遠征とかも行かれていますよね?

それこそ昔はよく行っていました。僕は本職が映像制作なので、南米のカレーを食べたことがないぞ?と思ったら南米で撮影する企画を出すとかができたんです。

――完全に公私混同していて、最高です。お店の情報って、どこから仕入れているんですか?

よく聞かれるんですけど、いいですか?

――はい。

超能力なんですよ。

――さすがに笑います。

僕は子どもの頃から昆虫採集が得意だったんですけど、「あの山の、あの木の、あそこの穴に、クワガタがいる!」ってのがあらかじめ分かるっていう、謎の才能があったんですね。

――完全に第六感に目覚めてるじゃないですか。

それと同じ感覚で、今も突然電車に乗りたくなって、意味もなく知らない駅で降りたくなり、小さな路地に入ってみたら、オープンしたばかりのカレーの新店が見つかることがあるんですよ。

――こわっ!!

あとは、SNSが多いかな。Instagramで皆「#カレー」で投稿しているので、それを追うだけで情報はつかめます。僕がSNSでフォローしているメンバーもかなりコアな人たちなので、そこからのタレコミはかなり精度が高いです。「今度、店を出します」みたいな情報も集まってきますし。

ーー発信したぶんだけ、情報が集まってくる感じなんですね。

Matsuさんとカレーの出会い

「原価割れしてる」と評判のラムチョップや、サバの缶詰をアレンジした同店名物「鯖缶マサラ」、ウサギのもも肉など、独創的な料理が並ぶ。

「原価割れしてる」と評判のラムチョップや、サバの缶詰をアレンジした同店名物「鯖缶マサラ」、ウサギのもも肉など、独創的な料理が並ぶ。

――Matsuさんがカレーに興味を持ち始めたタイミングって、いつなんですか?

高校時代ですね。僕は神戸にいたんですけど、通学路の途中にあった「インド人もびっくり 印度屋本店」っていう、ふざけた名前のお店が自分のルーツです。

――有名店なんですか?

当時はそんなことなかったんですけど、後に「dancyu」に、伝説の店として載るんです。というのも、95年の阪神大震災で、この店はなくなってしまったんですよ。長田っていう町にあるんですが、古い木造の長屋とかがあるいわゆる下町で、全部燃えてなくなってしまったんです。

ーーそうだったんですね……。

人生で初めてできた行きつけの店で、11枚綴りの珈琲チケットを持って、毎日のようにカレーを食べる暮らしをしていたんです。その後、お店のお母さんとは再会できたんですけど、店はなくなったままで。

――めちゃくちゃエモい……。

取り分けも慣れ過ぎているMatsuさん

取り分けも慣れ過ぎているMatsuさん

それで、今もあの味が残っているんですよね。僕は必ずカレーライスを食べた後に珈琲を飲むんですけど、それも当時の経験が影響しているし、ブラックペッパーが効いているカレーに反応するのは、その店のカレーにブラックペッパーが効いていたからなんです。

――いい話じゃないですか。

カレーはやっぱり各自の原体験から作られるものなんだなと思うのがひとつと、もうひとつは、そういう店でもふっと消えちゃうんだな、と。今行けるところにちゃんと行っておかないと、また後悔することになるし、まだ出会っていないところとは、たくさん出会いたいって思うようになって、いろんな店を食べ歩いています。

――めちゃくちゃ納得できました。

一日3食カレーでも大丈夫な理由

「お腹いっぱいになってきたなあ」と思ったころに出てきた、メインディッシュのカレーたち。主役は遅れて登場するものだ。

「お腹いっぱいになってきたなあ」と思ったころに出てきた、メインディッシュのカレーたち。主役は遅れて登場するものだ。

――それだけ食べていると、朝・昼・晩カレーって日もあると思うんですけど、しんどくないですか?

カレーって本当にいろんな種類があるので、「今日は何カレーにしようかな?」って考えれば、一般の方の食の感覚とあまり変わらないです。

――いや、だいぶ変わってると思います。

「今日は何料理にしようかな?」って考えるでしょ? それと一緒ですよ。最近はカレー居酒屋とかカレーバーもありますし、極論、「カレーという食べ物」の世界と「カレーじゃない食べ物」の世界の広さは、僕の中ではだいたい1対1です。

――どう考えても比率がおかしい。

ナンの形は、きれいな円状で、どちらかというとピザのようにサクサクした歯ごたえなものが本場。日本だとふわふわした生地で形が崩れても大きく作りがちだが、あれは本来のものとは違うらしい。

ナンの形は、きれいな円状で、どちらかというとピザのようにサクサクした歯ごたえなものが本場。日本だとふわふわした生地で形が崩れても大きく作りがちだが、あれは本来のものとは違うらしい。

――カレーに飽きたことはないんですか?

飽きる可能性はないですね。1回だけピンチはありましたけど。

――ピンチ?

過去にストレスと過労で血が出たことがあって。病院で診察を受けたら、「潰瘍性直腸炎かもしれません」と言われたんです。

――え、それ、どういう病気ですか?

「一言で言うと、カレーが食べられなくなる病気です」って言われたんです。

――そんなピンポイントな病気あります?

お医者さんは僕がカレー好きとか知らずに言っているんですよ。怖くないですかこれ?

――漫画ですね、もはや。

精密検査を受けてみたら大丈夫だったんですけど、それからあまり過度な刺激の辛さは控えようと思いました。100倍の辛さを70倍にしようとか。

――全然控えられてないですよ、それ。

「潰瘍性直腸炎」は安倍総理が総理大臣を1度退任したときの原因となった病気。安倍総理は回復したことをアピールするためにカメラの前でカツカレーを食べたことがあるが、マスコミは「3500円のカレーなんてぜいたくすぎる!」と別の騒ぎ方をしたらしい。そりゃあ「カレーが食べられなくなる病気」だとは誰も思わないだろう。

「潰瘍性直腸炎」は安倍総理が総理大臣を1度退任したときの原因となった病気。安倍総理は回復したことをアピールするためにカメラの前でカツカレーを食べたことがあるが、マスコミは「3500円のカレーなんてぜいたくすぎる!」と別の騒ぎ方をしたらしい。そりゃあ「カレーが食べられなくなる病気」だとは誰も思わないだろう。

カレーを通して手に入れた“もうひとりの自分”

――Matsuさんはこれまでたくさんのお店の情報を発信してきましたが、得られたものはありますか?

ブログでもなんでも、続けていけば情報はストックされていくし、閲覧の入り口も増えていくんですよね。メディアとしての自分が育ってくると、下手したら本職としての自分よりもそっちの方が有名になっちゃうことがあるんです。

――実際この取材も、Matsuさんの仕事の話ほとんど聞いてないですもんね。

そうそう。するとね、カツセさんと僕がこうして出会えているのもそうだし、仕事では絶対に会えそうにない人とお近づきになれたり、そこから仕事につながったりするので、めちゃくちゃおもしろくなるんですよね。

――会社名ではなく自分自身に価値が出てくるんですね。

僕は「カレー細胞」という名前でSNSやブログをやっているんですが、もうこれらは習慣付いてしまったし、好きなことだから無限に発信し続けられちゃう。

――発信自体が苦じゃなかったら情報は永遠に集まってくるでしょうし、最高の循環ですよね、それ。

そうそう。本来は同じことを続けていると飽きちゃう性格なんですけどね、カレーって、飽きないんですよ、本当に。ずっと発見があるし、進化している。無限の可能性があるから終わりがないんです。

――だから「ジャンル」ではなくて「概念」なんだと。

そうそう。だから「いつまでも続けられるぞ」って思ったし、そうこうしているうちにRettyさんとかいろいろなサービスが出てきた。同じことを書いてもメディアによってリアクションは全然違うから、各メディアごとにアレンジして掲載して、それぞれの反応を見ているのが今は楽しいです。

ーーカレーという概念の片鱗は見えた気がしたんですけど、奥が深すぎてゾッとしました。ありがとうございました!!

おわりに

こうして「カレーオタク」のMatsuさんのインタビューは終わりました。

ちなみにMatsuさんが名乗る「カレー細胞」という名前の由来は、“ブログを始めた当初、カレーと生き物(細胞)の記事を交互にアップしていたから”という完全に狂気な理由と、“人間の細胞は3カ月で大体入れ替わるので、毎日カレーだけを食べている僕は、自分の身体がカレーでできていると言えるから”というふたつの意味があるらしいです。

世の中は、僕の知らない世界で溢れている。
次回も食のディープな世界の片鱗を探しにいきます。

ライター

カツセマサヒコ
カツセマサヒコ
Twitterのフォロワー数11万以上。妄想恋愛ツイートが話題の、通称"タイムラインの王子様"。取材記事・エッセイ・小説・作詞・脚本など書くこと中心に幅広く活躍している。
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