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期待の新人は70歳! 第二の人生で開業したカレー屋さん、その名も「ルーキー」

こんにちは! ライターの山口祐加です。

おいしいもの、食べていますか?

さて、以前の記事にも書きましたが2017年に引き続き、カレーにハマっています。

カレーは奥が深すぎて、もう一生飽きない気がしています…。

そんな私が最近見つけたお気に入りのお店。

かわいらしい看板に書かれた「ルーキー」という名前が気になって入ったのが始まりでした…。

まさかの"ルーキー"現る!

「(看板かわいい。店名がルーキーってことは、店主は20代のかわいらしい女性かな…)」
 

ガラガラ(戸を開ける)
 
 
 
 

 
「・・・。」

 

「いらっしゃいませ〜」
 
 

「(……お、おじさま!! 全然想像していたルーキーじゃない!!)」

「どうされました?」

「あ、えっと……ルーキーって看板に書いてあるので、てっきり若い方がやられているのかと」

「そうですか(笑)」

「失礼ですが、おいくつなんですか?」

いま70歳です

「えええ! 70歳には見えない。お若いですね、本当に」

「そうかな? 店を始めたのはまだ最近ですよ

「お店を開く前は、別のお店で働かれていたのでしょうか?」

「いえ、僕はもともとカメラマンです

「え? 元カメラマン??? 全然カレーと関係ない…。なんでカレー屋を始めたんですか?」

「簡単に言うと、60歳を超えてだんだんカメラマンの仕事の電話が鳴らなくなってきて、そろそろ潮時かなと思っていた時に、カレー屋をやろうと思いついたの」

「聞きたいことが多すぎるので、ぜひゆっくりお話を聞かせていただけませんか?」

「いいですよ。まぁまぁ座ってください」

雑誌の黄金時代のカメラマンから、街のカレー屋に

「もともとカメラマンのお仕事をされているとのことでしたが、どんなお写真を撮られていたのでしょうか?」

「僕はマガジンハウスで長年写真を撮っていました。今はない『平凡』という雑誌からはじめて、ターザンをやった後、1988年の創刊からHanakoを担当しました。25年くらい撮っていたのかな」

「Hanako! 超有名な雑誌ですよね。40年近くキャリアがあったにもかかわらず、60歳を超えて仕事が減ってきたと…」

カメラマンは撮られるのが苦手なんだよ、と笑う大久保さん

カメラマンは撮られるのが苦手なんだよ、と笑う大久保さん

「そうそう。その頃にちょうど東日本大震災が起こったんです。僕は家にいて、隣のビルが揺れているのが見えて『僕の人生が終わる』という感じがしました」

「なんだか寂しくなってきました」

「年金生活に突入かと思ったんだけど、年金はマンションの管理費と駐車場代を払ったらなくなることに気づいたんだよ(笑)。それで何か別の仕事を探さなきゃと思いました」

「どうしてカレー屋なんですか?」

「ゆっくりかけるね」というカメラマンらしい気遣いも

「ゆっくりかけるね」というカメラマンらしい気遣いも

「もともとカレーが大好きで、昔からよく食べ歩いていました。その中でも思い出深いのは、今はなき『カレー屋 えすと』。そのお店は5〜6人しか座れない店で、テイクアウトも大人気だった。そういうさっと食べて帰るスタンド形式のカレー屋をやってみたいなと思ったんです。仕事で飲食店を取材することも多かったから、憧れもあったのかな」

「なるほど」

チキンカレー+季節の焼き野菜トッピング 900円

チキンカレー+季節の焼き野菜トッピング 900円

「それから、この歳で日本料理をイチから学ぶのは無理があるけど、カレーは勝手でいいでしょ。これっていうルールがない

「カレーは勝手でいい! いい言葉ですね。確かにカレーは明確なルールのない、懐の深い食べ物ですよね」

カメラマン時代があったからこそ生まれた「歴史が溶けたカレー」

いただきます。カレーの一口目の高揚感といったらないですね

いただきます。カレーの一口目の高揚感といったらないですね

「カレー、とってもおいしいです! 私もカレー大好きでいろいろ食べ歩いていますが、こんなにさっぱりしたカレーを食べたのは初めてかもしれないです。ちゃんと辛いのに、しつこくない。暑いけど気持ちいい、サウナみたいな感じです」

「さっぱりしている理由は、カレーソースに野菜しか使っていないからです。鶏ガラからとったスープは使っていますが、乳製品などは使用していません」

「野菜だけなんですね! 驚きました。どうしてさっぱりとしたカレーソースになったのでしょう?」

「マガジンハウスの近くに『ナイル』というインドカレー屋があって、そこのトマトベースのスープ『ラッサム』がヒントになっています。二日酔いでも食べられる、スパイシーだけど優しいスープでした。僕はお酒が好きなので、自分で作るカレーは二日酔いでも絶対に胸焼けしないのがいいと思ったんです。」

チキンは手羽元と胸肉を2種類使用

チキンは手羽元と胸肉を2種類使用

「長らく食べ歩いてきた経験と、元職場近くのカレー屋があったからこそ生まれた、歴史が溶けたカレーですね」

「そんな大したものじゃないけどね(笑)」

「話は戻りますが、カレー屋を始めるにあたって料理の勉強はどうされたのでしょうか?」

「料理関係の仕事をしている奥さんにイチから教えてもらいました。最初は何もわからず、手際の悪さに怒られてばかりでカメラアシスタントに戻った気分でしたね(笑)」

「なんと微笑ましいお話。奥さんの存在が大きいと」

「そうです。奥さんに料理を教えてもらいながら、ブックオフで本を買いあさって独学でカレーの勉強をしました

内装はほぼDIY! 小ざっぱりしたかったけれど"雑多な店内"

「奥さんと一緒に作られたと聞くと、もっとおいしく感じてきました。お店はいつオープンされたのでしょうか?」

「2013年の5月ですね。物件を借りてから3ヶ月の間で、内装はほとんど自分で作りました

「え!! 内装DIYですか

「もともと自分で作るのが好きなんです。キッチンカウンターも自分で設計・施工しました。機材は妻が料理好きで揃えていたものを持ってきて、ほとんど新しいのは買っていません」

「すごいですね…。機材まで持ち込みという手弁当仕様。でも、無理に作りこまれていない感じがすごく居心地が良いなと思いました

「そうですか、それは良かった。僕は無機質なくらいさっぱりした店づくりを目指していたんです。のに…」

「のに?」

「妻やお客さんがどんどん壁に貼っていくんですよ(笑)。落語が好きなお客さんやお客さん自身が出演する舞台のチラシを持ってきては、『貼っていい?』みたいな流れで」

「このくらいのほうが落ち着きます(笑)」

無造作に貼られたポスター。下北沢の飲み屋みたい

無造作に貼られたポスター。下北沢の飲み屋みたい

お客さんは一人暮らしの人からキャバクラ嬢やお坊さんまで

「お客さんはどんな方が多いのでしょうか?」

「昼間はサラリーマンが多くて、夜は近所の一人暮らしの人が多いです。もともと19時までの営業でしたが、一人暮らしの若い人から『19時には帰れない! せめて20時まで開いていて欲しい』と言われて、20時までの営業に延長しました。

「私も地元にルーキーみたいな店があったら、仕事帰りに通いたいです」

「私の娘と同じ年代の方に頼まれると、帰る時間まで開けておきたいと思いますね。それから職種でいうとキャバクラ嬢からお坊さんまで買いにきますよ。いろんな人がいて、面白いです」

「地元密着型のカレー屋なんですね。他に地元の方々との関わりはあるのでしょうか?」

「商店街のつながりで、地元のサッカーチームの写真を撮ったり、この建物の下のバーで演奏しているバンドの写真を撮ったりしていますね

「カメラマン時代の仕事もそうして役立てていらっしゃるのですね…。なんか、じーんときました」

「20時までの営業に延長したり、無機質にしようと思ったらチラシがどんどん置かれていったり、思っていた営業スタイルとは違うけど、満足していますね。僕は、新人ですからね」

「新人…それで、ルーキー!! 一本取られました!(笑)』

いかがでしたでしょうか?

カメラマンからのカレー屋というキャリアチェンジ。そして、64歳での開業という選択。

お話を聞いていて、大久保さんのチャレンジ精神と地道な努力に終始感動してしまいました。

ルーキーはここ数年のカレーブームと全く関係ない文脈で誕生していて、そこが魅力だと感じました。飾り気がなくて、実家のような穏やかな時間が流れている。

結局こういう店に一番通いたくなるのかもしれない、と思うのでした。

ぜひ、70歳のルーキーに会いに行ってみてください!

それではまた!

山口祐加

山口祐加
山口祐加
ごはんの人。東京生まれの25歳。出版社を経て、食のプロデュース会社で働いています。両親共働きで、母親に「ゆかが料理を作らないと晩御飯ないよ」と笑顔でおどされ、7歳のときに料理に目覚めました。趣味は友人にご飯を作ることと、ストイックな食べ歩き(2016年は新規125軒、2017年は新規220軒)です。
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