大家好!(こんにちは!)
相変わらず中華ばっかり食べているアイチーです。
中国各省の料理をご紹介していく連載「旅する中華」、今回の舞台は埼玉県さいたま市にあるウイグル料理店「シルクロードムラト」。つまりは「新疆ウイグル自治区」編です!
新疆ウイグルは、中国大陸の西北端に位置し、広大な面積を占めています。
その面積なんと166万㎡。中国大陸のおよそ六分の一も。日本がおよそ4個半!
その広さから、モンゴル・ロシア・カザフスタン・キルギスタン・タジキスタン・アフガニスタン・パキスタン・インドの8カ国と接しています。よってさまざまな民族や文化が混じり合う、まさに「シルクロードの交流点」。
食べ物も同様、隣接各国との共通点が見られる清真料理(ムスリムの料理)が多く、羊と小麦粉がとても大きな存在。
羊は大きめな塊での串焼きから細かく切ったパイの具まで、さまざまな料理に。小麦粉も、ナン・パイ・麺・水餃子や包子と色々な姿に変身。
「シルクロードムラト」にも、それらが多彩な姿でメニューに並びます。
今回はその中から、店主であり厨師でもあるウシュル・エリ(吾守尔・艾力)さんに「厳選!イチオシメニューTOP3」を挙げていただきました!
1. シシカワプ(ラム肉の串焼き)
ウイグルと一口に言えど、冒頭触れたように広大な地。店主エリさんの出身地カシュガル(喀什)の人々はこの「羊肉串」には一家言あり。
エリさんによると、
「中国のあちこちで羊肉串を食べることができるが、彼らが使うのは羊肉『片(小さいかたまり)』。我らが使うのは羊肉『塊(大きいかたまり)』だ!」
「我らが使う羊は鮮度に自信あり!クミンの香りや辣椒の辛味には頼らない!」
「我らの味付けは、10種以上のこだわり自家製ミックススパイスで下味をつけるんだ!」
これがこだわりのポイント!
2. ソメン(炒麺:ウイグル式焼うどん)
ちょっとちょっと!ツウな人なら「ウイグルといったらラグメンでしょ!?」とおっしゃる人もいるでしょう。
「シルクロードムラト」にも、ラグメンはもちろんあります。とっても旨い。ですがそこをあえて、まだあまり知られていないものを勧めたい!そしてみんなにぜひ食べてみてほしい!
この料理の「うどん」は、長い麺状ではなく2〜3cm程度に短く切ったもの。
麺は平麺・丸麺の2種類から選べます。これらの麺はそれぞれ、
平麺→面片炒面(ミィエンピエン)
丸麺→丁丁炒面(ディンディン)
とも呼ばれます。
選んだ麺を、玉ねぎ・にんにく・羊肉と炒め、あらかじめ炒めておいた野菜と合わせます。
今回いただいたのは、丸麺バージョン「丁丁炒面(ディンディン)」。コシの強いモッチモチ麺がクセになります!
3. グシナン(ウイグル式ミートパイ)
このパイの特徴は、薄めの生地ながらも、外側がパリッパリで内側がモチっとしているところ。「シルクロードムラト」の餡は羊肉と野菜のミックス餡。
テーブルに運ばれたら、アッツアツのうちにパリッパリ感をお楽しみください!
以上、エリさんからTOP3をご紹介いただいたところで、
「あっ!もうひとつオススメ言っていい?」
ということなので、追加しちゃいます!
4. ヤンユセイ(細切りポテトのシャキシャキ炒め)
使う肉をラムか鶏かで選べます。黒酢と自家製辣子醤による酸味と辛味は自在に調整可能。
それぞれ程よくきかせれば酒のつまみによし、ちょっと控えめにすればご飯のおかずに子供達もモリモリ!
歯切れ良い食感が楽しめる一品ですよ!
「あっ!そうそう!ウイグルのスゴいもので作った、オリジナルのお酒があるんですよ!もうひとつ言っていい?」
おーっ!スゴいものってなんだ?興味津々!どうぞどうぞ!
おまけ.シルクロードムラト特製「カンカ(砂漠人参)酒」
エリさんが日本に来たのは、まだ学生の頃。テレビを観ていたら「世界ウルルン滞在記」という番組で、ウイグルのホータン(和田)産の砂漠人参「カンカ」が紹介されていてびっくりしたらしい。
スゴいものとは認識していたけれど、あんな遠くのものでも日本で紹介されるようになるなんて、有名になったのだなぁと、故郷の特産品を誇らしく思ったという。
この「ホータン産砂漠人参」は、体内さまざまな部位への効能や高い強壮作用がある「砂漠の宝」として知られ、含有率が低い錠剤なども現地では高値で取引されているほど。
産地ホータンでは、カンカで薬酒を作ったり、料理に入れたりとよく摂取するそうで、その効果もあってか、過酷な砂漠地域の中の生活環境でありながら世界有数の「長寿郷」とも言われているのだとか!
時は経ち「シルクロードムラト」をオープンさせてしばらくの間、お客さんから「ウイグルのお酒はないの?あったらいいのに」との要望を受けたエリさん。
その要望にどう答えようか、と考えあぐねているうち、昔テレビで観た砂漠人参を思い出す。そこから砂漠人参について勉強し直し、酒造に関わる専門組織とのつながりを探し出し、リキュールも製造する酒造会社と出会い、、、
そうして完成したのが「シルクロードムラトオリジナル 天然砂漠人参のお酒 タクラマカン」なのだ。
グラスでも注文できるので、砂漠の長寿を支える秘密酒の威力をぜひご体感あれ!
今回挙げていただいた料理の他にも、エリさんご自身が愛すとともに周辺在住の同郷人にも愛される数々の料理が揃っています。
「ムラト」とは、ウイグル語で「希望」や「夢を叶える」という意味なのだそう。ちなみにこの素敵な名前は、店名でもありエリさんの息子さんの名前でもあります。
その名の通りここは、1日を終えたあと締めくくりに寄ってホッと落ち着ける、みんなの「オアシス」的な存在なのかもしれません。
砂漠を吹き抜ける熱風を浴びながらシルクロードを旅するように、そして旅の末にたどり着いたオアシスで休息をとるように、ウイグル料理を食べに出かけてみてください!
- シルクロードムラト
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埼玉県 さいたま市桜区 栄和
羊肉
ライター紹介
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アイチー(愛吃)
- 「中華地方菜研究会〜旅するように中華を食べ歩こう〜」主宰。四半世紀ほど前、中国・山西省へ留学。滞在中、時間を見つけては中国大陸を東奔西走。帰国後現地で食べた味が恋しくなり、日本で懐かしい味を求めて中華を食べ歩く。日本でも楽しめる「地方菜(中国各地の郷土料理)」を紹介しつつ、読者のみなさんとワイワイ食べる会も時折開催中。