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炭水化物×炭水化物のおいしさは普遍!エジプト料理店「スフィンクス」で異国のそばめしを食べた

中近東のイスラム諸国にも麺を使った料理がいくつかある。

インド亜大陸から離れた地域でも麺は料理に利用されており(焼きそばと呼ぶにはちょっと無理があるかも知れないが)、今回はそのひとつを紹介したい。

今回訪れたのは西武池袋線秋津駅。1駅で東京都の東村山市と清瀬市、埼玉県所沢市の2都県3市にまたがるという県境の駅だ。

そこから5分ほどの距離にあるのがエジプシャンレストラン&カフェ「スフィンクス」。ご夫妻2人で営まれているエジプト料理店で、エジプト人のご主人が調理、日本人の奥さんが接客を担当されている。もちろんハラールにも対応。

外観も内装もピラミッドにスフィンクス、ツタンカーメンのマスクやヒエログリフで彩られた装飾品がびっしり。エジプト関連グッズでいっぱいだ。

土曜のお昼時で、親子連れやカップルで3分の1ほどのテーブルが埋まっていた。ただ、そのうちの何割かはテイクアウトのお客さんだった。

ランチメニューの一部

ランチメニューの一部

窓際の席に腰掛けてメニューをチェック。ランチではタジン鍋やコシャリ、シャクシューカ、ビリヤニなどがお得な価格で食べられる。魅力的な料理が並ぶ中から、モロヘイヤチキンのランチセット(1200円)をチョイス。

まずはサラダだ。キャベツの千切りを中心とした生野菜に、インド料理店では定番の人参ドレッシングが掛かっている。オレンジ色のこのドレッシング、ほどよくスパイシーで妙に美味いんだよなあ。

続いてスープ。「ショルバト・リサン・アスフール」(Shorba lesan asfour/ شوربة لسان عصفور )というスープで、アラビア語で「雀の舌(リサン・アスフール)」と呼ばれるショートパスタが使われている。

2cmほどの長さで両端が尖っていてメロンの種のような形だ。調べたらリゾーニというパスタとほぼ同じ品だった。出汁は鶏で、さっぱりした味わい。

モロヘイヤチキン ランチセット1200円

モロヘイヤチキン ランチセット1200円

そして、メインディッシュのモロヘイヤチキンとライスが運ばれてきた。モロヘイヤはエジプト原産。アラビア語で「王様の野菜」を意味する「ムルキーヤ」(Mulukhiyah/ ملوخية )が、日本へ伝わる際に「モロヘイヤ」と訳された。現地は細かく刻んでスープにするのが定番で、そのスープ自体も「ムルキーヤ」と呼ばれている。

今回のモロヘイヤチキンは、アラビア語だと「ムルキーヤ・ビ・ダッジャージ」(Mulukhiyah bial dijaj/ ملوخية بالدجاج )で合ってるのかな。粉末状のモロヘイヤがたゆたうチキンスープに、ソテーした鶏肉の塊が三切れ沈んでいる。

サラっとしているが、実際に食べてみるとちゃんとモロヘイヤのぬめり気がある。ガーリックの香りが立って、滋味に富んだ味わいのスープだ。

ロズ・ビ・シャーレイヤ

ロズ・ビ・シャーレイヤ

ライスは「ロズ・ビ・シャーレイヤ」(Ruz bil She’reya/ رز بالشعرية )と呼ばれるパスタ入りライスだ。「ロズ(リズ)」( رز )は「米」、「シャーレイヤ(シャアリーヤ)」( الشعرية)は「麺・パスタ」を意味する。

中近東では広く普及していて、「エジプト風ライス」「レバノン風ライス」「シリア風ライス」など地名で呼ばれることも多い。

イラン周辺まで行くと、ペルシア語の「レシュテ・ポロ」(Reshte Polo/ رشته پلو )に呼び名が変わる。参考になりそうなレシピ動画を貼っておこう。

使われているパスタは「ヴェルミチェッリ」(Vermicelli/バーミセリ)や「カペッリーニ」(Capellini/エンジェル・ヘア・パスタ)に相当する極細のパスタ。

アラビア語では「マカローナ・シャーレイヤ」(Macarona She’reya/ معكرونة الشعرية )と呼ぶらしい。乾麺のまま折って2〜3cmくらいに短くし、熱した油でキツネ色になるまで炒める。

米も加えてさらに炒めて、塩と熱湯あるいはチキンスープを加えて水分が無くなるまで煮込んで炊き上げる。麺を炒める工程があるので「焼きそば」系の料理とみなし、取り上げてみた。

スフィンクスの「ロズ・ビ・シャーレイヤ」は、割としっかり味付けされている。奥さんによるとエジプトで米を食べる場合、日本の白米と違ってほぼ例外なく下味をつけているらしい。

ちなみに、米は日本の米を使用。もともと現地でもこのタイプのジャポニカ米が食べられているそうだ。

できあがりの見た目は色の白い「そばめし」である。パスタだけ食べてみると小麦粉の麺独特の食感と味わいで、米とは明らかに異なる。

しかし米と一緒に頬張ると存在感がほとんど無くなる。ただ美味しいことは間違いない。たぶん食べ慣れて経験を積むと、パスタ入りの独特な味わい深さが分かるんだろうな。

スープをご飯に掛けて食べます

スープをご飯に掛けて食べます

そのパスタ入りご飯にモロヘイヤチキンをスープごと掛けて食べる。モロヘイヤのトロみと鶏肉の旨味がご飯と相まって、さっぱりした味わいだ。

ライスへの出汁の滲み加減は、シンガポール・チキンライス(海南鶏飯)に似ているかも。食べごたえもあり、万人受けしそう。ただ最後まで同じ味が続いたので、他にもう一品、少しスパイシーな副菜を頼めばよかったな。

食後はエジプトの紅茶、「シャーイ(Shaay/ شاي)」で一服。余談になるが、世界各国でのお茶の呼び方は「チャ(cha)」と「ティー(tea)」に分かれるそうだ。

福建省から海路で伝わった地域では「ティー(tea)」、広東省から陸路で伝播した地域では「チャ(cha)」と呼ぶ。エジプトは後者のようだ。キリンのサイトの解説がわかりやすい。そしてお茶に負けず劣らず、麺食文化の伝播もかなり複雑だ。

エジプトの紅茶、シャーイで締め

エジプトの紅茶、シャーイで締め

今回の記事で「パスタ入りライス」を知った方の中には、「イタリアからイスラム文化圏にパスタが伝わったんだな」と考える人がいるかも知れない。

しかし、実はそうとも言い切れない。麺文化研究の第一人者である石毛直道氏は著書『麺の文化史』で、”中国で生まれた麺文化は、アラビア半島に起こったイスラム文化圏を経由し、イタリアを含む地中海に伝えられたのでは”と推測している。

つまり、イタリアでパスタが食べられるようになる以前から、イスラム文化圏で「パスタ入りライス」が存在した可能性も十分にありうるのだ。

米と麺を混ぜて調理するのは、乾麺のパスタが保存食として重宝するという側面も大きいのだろう。ただ日本の「そばめし」やインドの「コンビネーション・ライス・ヌードル」、果ては南米ペルーの「アエロプエルト」、コロンビアの「アロス・コン・フィデオス」など、米と麺の混合料理は想像以上に多い。

東欧系ユダヤ料理の「カーシャ・バーニッシュカス」も、穀物(蕎麦の実)とショートパスタを混ぜ炒めて煮込んだ料理と考えれば同系統だ。もしかしたら何かしら普遍的な美味しさが、この食べ方にはあるのかも知れない。

神戸市長田区 青森のそばめし

神戸市長田区 青森のそばめし

また、長い麺をわざわざ短く切って利用するという点は、ウイグル料理の「コルマ・チョップ」と共通している。そっちは手食文化によるものかな。麺食文化の伝播について考察し始めると止まらなくなる。

そういうのが好きな物好きさんは、以前こちらの記事で公開した「世界焼きそばMAP」もチェックしてね。

初台「シルクロード・タリム」のコルマ・チョップ

初台「シルクロード・タリム」のコルマ・チョップ

秋津のエジプト料理店、スフィンクスには他にも興味深いメニューが多々あった。「マカロナ(マカロニ)」を使ったパスタ料理も試してみたいし、エジプトのビリヤニがどんな味かも気になる。

「チキンカジュ」のカシューナッツ・ココナッツミルク・トマトソースという組み合わせとか、インドカレーっぽいけど、たぶんいろいろ異なってそう。

ちなみにこちらのインタビュー記事によると、店主のムハンマドさんは日本の焼きそばが好きらしい。これはまた近々再訪せねば、だな。

ライター紹介

塩崎省吾
塩崎省吾
焼きそばブロガー、ライター、編集者。本業はRettyのエンジニア。 2011年から、ブログ「焼きそば名店探訪録」を開設。日本全国の焼きそば名店を探しては食べ歩き、47都道府県を制覇。「焼きそば」達人として、TV・雑誌をはじめいま注目を集めている。
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