連載:中国各省をご案内・旅する中華

週替わりのビャンビャン麺が独創的!麺好きなら絶対に行ってほしい「秦唐記」

大家好(こんにちは)!

相変わらず中華ばっかり食べているアイチーです。

2018年、皆さんは中華料理をいっぱい召し上がりましたか?

今年は、店名に中国の地名を掲げるお店が増え、「中華料理」という大きな括りから、中国の地方料理の選択肢がグッと広まった年でもあります。

そして、地方の特色ある麺料理に注目が集まった1年でもありました。

当連載にて今年1月に紹介した「蘭州牛肉麺」を提供するお店は全国各地に急増し、「ビャンビャン麺」の注目度も急上昇しました!

そんな2018年を象徴する一軒が、今回の舞台となる八丁堀にある「西安麺荘 秦唐記」です。

まず紹介したいのが、お店の名物「週替わり麺」!

週替わりで登場する、めくるめくビャンビャン麺に陶酔!

週替わり麺の発表など、店舗情報はTwitterにて発信されていますので、利用している方は早速フォローしてチェックですね!

「西安麺荘 秦唐記」Twitterアカウント

▲裤带大肉面(とろとろ角煮ベルトビャンビャン麺)
 

▲酸汤面(香菜入りさっぱりスープビャンビャン麺)
 

▲翡翠油泼面(ヨウポーほうれん草ビャンビャン麺)
 

▲麻婆面(マーポービャンビャン麺)
 

▲蘸水面(ベルトビャンビャンつけ麺)
 

▲大盘鸡拌面(鶏肉じゃがいもピリ辛和え細麺)
 

これらが今まで登場した「週替わり麺」の一部となります!

ビャンビャン麺をより多くの人に知ってもらいたいと、馮樹フォンシュウ厨師が考案。お客さんが驚いてくれるような「週替わり麺」のアイデアを考えることが、馮樹さんにとってとても楽しい時間なのだそうです。

馮樹さんはビャンビャン麺の提供を通して、ビャンビャン麺の技術を故郷の誇るべき芸術文化として日本の人たちに知ってほしいと語ります。そのため、ビャンビャン麺を作る様子はガラス越しに真近で見ることができます。

馮樹さんは、故郷西安東郊の蓝田县にて18歳から料理の世界へ。

元々麺を食べるのが大好きだった馮樹さんは、かつて勤めた麺館でビャンビャン麺の師匠と出逢い、麺を作る楽しさに目覚め、麺の手延べ技術を習得しました。なんと馮樹さんの師匠の製麺技術は、地元で「非物質(無形)文化遺産」と称えられているほど。

麺館でコツコツ技術を身につけた馮樹さんは、「日本へ行ったほうが生きる世界が広がるのでは」と東京へ来ることを決意。餃子の人気店「独一処」で長く料理技術を振るったのち、現在のオーナーとのご縁があり、西安小吃「肉夹馍」というお店を任されることに。

馮樹さんと同様にオーナーも大の麺好きということもあり、今秋9月19日にビャンビャン麺の魅力を伝えるお店として「西安麺荘 秦唐記」がオープンしたのです。

看板・店先の外壁・店内の壁面、あちこちに激ムズ漢字「ビャン字」が踊ります!

通常メニューでは、現地でも定番とされる「味の三本柱」である

◎油泼(ヨウポー:油かけピリ辛)
◎炸酱(ザージャン:ひき肉餡かけ)
◎西红柿(シィホンシィ:トマト)

によるビャンビャン麺をはじめ、牛肉麺やホルモン麺なども並びます。

さらに、「味の三本柱」を一挙に堪能できてしまう、

◎全套(全部のせ)

もあります!

各側面からそーっと、3種を食べ分けるのではなく、全体をしーっかり混ぜてください!

「ええっ、別々に食べた方がいいんじゃないの!?」と怯まず、しっかり混ぜましょう。

唐辛子の辣・ザージャン餡の甜・トマトの酸による、見事な三"味"一体を成すのです。
ぜひお試しを!

そして、麺と一緒に出されるのが白濁の液体。

それは…麺の茹で汁です!

実はこの茹で汁を飲む習慣は、西安をはじめとした中国の西域一帯にて、実際になされていることなのです!

無理強いはしませんが、現地の食文化を体験するひとつとして広く皆さんにお伝えしたいと思い、私が主宰するコミュニティ中華地方菜研究会で以前紹介させていただきました!

「ゆ、茹で汁飲むの!?」「料理に添えて出してくるなら普通はスープじゃないの!?」
と、びっくりする人も多いでしょう。


これを「原汤化原食(原湯化原食)」といいます。


〜以降、科学・医学的な効能を謳い保証するものではなく、おもしろ豆知識としてお楽しみくださいませ〜


「原汤化原食(原湯化原食)」について、様々な言い伝えが存在します。


麺の歯ごたえや強いコシを売りにしている、とある麺館。茹で汁を出したが客はこんなの要らんと口を付けず。麺を食べ終え店を出たら途端に激しい腹痛に襲われるなど具合が悪くなる。それを見越してか、店主が店員に茹で汁を持たせ客についていくよう命じていた。店員は倒れこむ客の口をこじ開け茹で汁を飲ませたところ、たちまち回復し、一命を取り留めたのだった。飲んどきゃよかったわ。


部分的にシーンは異なりますが、概ねこのような内容。 「原汤化原食(原湯化原食)」の「化」は消化を意味します。湯(茹で汁)が麺を消化してくれる、ということですね。


麺のでんぷんに含まれる酵素が湯の中に溶け、それが消化器への負担を和らげ消化を助けてくれるのだそうです。
消化の助っ人的役割だけでなくビタミンB群も豊富に含まれており栄養補給にもよいとの説もあるようです。


今回訪ねた「西安麺荘 秦唐記」では、「一边吃一边喝吧(食べながら飲んでね)」とご案内いただきましたが、「胃に膜を張れる上に若干空腹感を抑えることもでき、余分な吸収を抑えると同時に食べ過ぎを防げるので、食前に飲むべし」という食前派も。

訪れた店で麺の茹で汁を出されたら、西安や西北地域辺りを旅する気分でぜひ飲んでみてくださいね!

来たる2019年もまた、中国各地を旅するように中華料理を楽しめるお店とたくさん出会えますように!

ライター紹介

アイチー(愛吃)
アイチー(愛吃)
「中華地方菜研究会〜旅するように中華を食べ歩こう〜」主宰。四半世紀ほど前、中国・山西省へ留学。滞在中、時間を見つけては中国大陸を東奔西走。帰国後現地で食べた味が恋しくなり、日本で懐かしい味を求めて中華を食べ歩く。日本でも楽しめる「地方菜(中国各地の郷土料理)」を紹介しつつ、読者のみなさんとワイワイ食べる会も時折開催中。
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