• Top
  • PR
  • 飲食店の約9割が今後も「売上減」を予想! ミシュラン二つ星シェフが考える、 Withコロナ時代を生き抜くために必要な飲食店の戦略とは
連載:Withコロナ以降を生き抜く飲食店のEC戦略

飲食店の約9割が今後も「売上減」を予想! ミシュラン二つ星シェフが考える、 Withコロナ時代を生き抜くために必要な飲食店の戦略とは

<Retty>がおこなった調査では、2020年8月以降の売上予想について2割以上減と答えたお店が86%を超えました。そのうち、約半数はこれまでの5割以下の売上見込みと、厳しい予想となっています。“ウィズコロナ”と言われる現代で、飲食店はソーシャルディスタンスや席数減など、営業スタイルが激変しています。ニューノーマル下で飲食店はどう生き抜いていくのか。今年、「BASE」で通販サイトを立ち上げた、ミシュラン二つ星フレンチ<Edition Koji Shimomura>オーナーシェフの下村浩司氏と、<Retty>執行役員の梅田亮が、今後求められる飲食店像を語り合いました。

<プロフィール>
下村浩司氏
ミシュラン二つ星フレンチレストラン<Edition Koji Shimomura>オーナーシェフ。22歳から8年間、フランスを始め、イタリア、スイスなどのヨーロッパの二つ星、三つ星レストランで働き、2007年に<Edition Koji Shimomura>出店。翌2008年には「ミシュランガイド東京」で二つ星を獲得。現在に至る。
オンラインショップ “Edition at Home”

梅田亮
<JAL><GREE>を経て、2015年<Retty>に入社。執行役員として飲食店向けの新事業開発などを経て、現在は広告コンテンツ事業を中心に飲食店を支援する。

<連載一覧>


売上激減期の麺屋武蔵を支えたのは、30分で作ったネットショップだった。人気ラーメン店が「BASE」を選んだ理由とは


「自社ECでは絶対できなかったし、信頼を失っていたかもしれない」 1日2,800本を販売した「チーズテリーヌ」ショップがBASEで目指す姿とは

緊急事態宣言下で、飲食店に何が起きていたのか

梅田 日本国内では2月に初の感染者が確認されて以降、急速に感染が拡大し、4月7日には緊急事態宣言が発出。5月25日に緊急事態宣言が解除されるも、収束の兆しは見えず、いまなお予断を許さない状態が続いています。

下村 飲食店をめぐる状況は、日々刻々変わりましたね。飲食業界全体の話で行くと、早い店だと4月ごろから店舗の撤退がはじまりましたが、多くの店は補助金や助成金を活用しつつ、テイクアウトやデリバリーでしのぐか、休業を選択するか、という二択を迫られていました。

当時の状況について語る下村氏

当時の状況について語る下村氏

梅田 2月、3月と飲食店の営業は客入り、売上ともにじわじわと苦しくなっていきました。ただ、やはり決定的だったのは、4月の緊急事態宣言ですね。緊急事態宣言中の売上について、調査をした結果があります。

梅田 もっとも多かったのは、緊急事態宣言中も何らかの形で営業を継続したものの、4~5月の売上は通常の「5割以下」が58.8%。次いで「休業」(27.5%)、という厳しい結果となっています。

下村 この時期の飲食店は開けていたとしても、ほぼテイクアウト中心ですね。一部通信販売(EC)に乗り出す店もありましたが、全体からすると、ごく一部。飲食店ではどんな業態でも共通しますが、ワインやビールなどのアルコールが出ないと、売上を伸ばしにくい。こうした結果になるのもうなずけます。

6月以降も、依然として厳しい状況。54%以上のお店が前年比5割以上の落ち込み

梅田 いっぽう、緊急事態宣言が明けた6月以降の実績との比較がこちらです。休業していた店舗が再開して、緊急事態宣言中よりはよくなりましたが、コロナ前と比較して「5割以下」が変わらず最多の54.9%、全体の約84.5%%の店は、2割以上の落ち込みとなっています。

下村 うちは、もともと34あった席数を最大でも22まで減らしているので、物理的にレストラン単体の店舗売上では、8割までは戻らない計算になります。そのため、いまは足りない分をECで埋めているイメージです。

<Edition Koji Shimomura>の店内

<Edition Koji Shimomura>の店内

梅田 ちなみに下村さんの店では、このコロナ禍でどんな取り組みをされましたか?

下村 3月から準備をはじめていました。4月上旬まではレストランを営業しながら、テイクアウトやデリバリーの商品設計をはじめ、緊急事態宣言のころにはメニューの撮影も行っています。実際に「BASE」でECでの商品販売をはじめたのは4月下旬。6月にレストランを再開するまではECに専念して、現在はランチ、ディナーとも席を減らしながら営業しています。もちろん、ECも並行して続けています。

梅田 実際の売上としては、レストランとEC、どれくらいの比率なんでしょうか?

下村 日によってまちまちですね。店舗の予約がすくなくて、ECでたくさん注文が入るような日には50%近いこともありますし、レストランの調子がよければECが5%に満たない日もある。おもしろいことに、レストランとECは、シーソーのような関係になっています。人が外に出るようなムードのときにはレストランの調子はいいけど、ECはいまひとつ。逆に7月上旬以降のように人が出なくなってくると、レストランはいまひとつだけど、ECが伸びたりもします。

<Edition Koji Shimomura>で自粛期間中に提供していた、「野菜たっぷりお料理BOXシリーズ」の一例

<Edition Koji Shimomura>で自粛期間中に提供していた、「野菜たっぷりお料理BOXシリーズ」の一例

売上が戻らない居酒屋・バーでは、63.7%が6月以降も前年比5割以下。なぜ苦しいのか

梅田 緊急事態宣言後、6月以降の売上状況を業態ごとに調査をしたところ、もっとも苦戦していたのが、都から名指しされていた「居酒屋・バー」業態でした。売上がコロナ前の「2割以下」「5割以下」の合計は、63.7%となっています。対してフレンチは、売上がコロナ前の「2割以下」「5割以下」の合計は30.7%と、回復のペースが早いことがうかがえます。この違いは、どこにあると考えますか?

下村 フレンチレストランには「家では食べられない」という付加価値がありますから。いっぽう、居酒屋の398円のサンマと、同価格のスーパーのサンマを家で焼いたものとの間に、差は見出しづらいですよね。家庭で代替できる体験や価値に関しては、回復が遅くなりそうです。
もっと言えば、客単価の低い薄利多売業態は、客数を増やしていかなければならないので、「密」がついて回る難しさもあります。

梅田 コロナ禍では、飲食店にとって今まで「好条件」と考えられていたことにも変化が見えます。たとえば、立地は飲食店にとって最重要の条件でしたが、好立地だとされていた繁華街、オフィスでの落ち込みが激しくなっていて、むしろ住宅街が善戦しています。

下村 遊びに出かける人が減れば、繁華街から人はいなくなるし、リモートワークが増えれば。オフィス街に人が行かなくなってしまいます。
いっぽうで、ECは立地がどこであろうと、商品の提供価値は変わりません。4~5月の数字は極端だとしても、ECが飲食店経営の一定の下支えになる時期は、今後も繰り返しやってくると考えておくべきです。

今年8月以降、1年間の売上予想でも約44%のお店が「2〜5割」を予想

梅田 今年8月以降、1年間の売上予測についても、半分以上の飲食店が「2~5割」と悲観的な予想をしています。レストランとしての売上が落ちたときに、また仕方なく延命のためのデリバリーやテイクアウトをするのか、それとも好機ととらえて新しい工夫をするのか、は飲食店の未来を左右する分水嶺になるのではないでしょうか?

下村 じつは、ネットショップ開設前にSNSでざっと調査をしたら、ECよりもテイクアウト需要のほうが多い、という結果になって。それでテイクアウトをはじめたんです。ところが、いざスタートしてみると、それほどニーズがなかった。理由を考えてみると、たとえば、いつも会社の接待で来店してくださるような方々がリモートワークになっていて、お住まいがテイクアウトで利用可能な商圏を超えたエリアだったんです。それがわかってからは、すぐに軸足をECに切り替えました。

梅田 調査などで仮説を立てることも大切ですが、もちろん予想通りに運ばないこともある。そのときに、すみやかにプランBに移行することは、とても大切だと思います。

下村浩司氏(右)と梅田亮(左)

下村浩司氏(右)と梅田亮(左)

ブランディングと戦略が、飲食店の生死を左右する

梅田 一口にコロナ禍における対策といっても、ECがいいか、テイクアウトやデリバリーをおこなうのがいいか、は、立地や業態、客単価などで変わります。それを理解せずに、効果的とは言えない使い方をされている方もいらっしゃれば、下村さんのようにECメインで対応する判断をして、売上につなげる方もいらっしゃる。その差はなんでしょうか?

下村 一言で言うと、大切なのはブランディングであり、戦略だと思います。さきほど申し上げた「家では食べられないもの」もそのひとつで、われわれのECでは当初、「家でも店でも食べられない、“まかない食”」を販売しました。それも、フランス修業時代のレストランでポーランド人シェフに教えてもらった煮込み料理です。

梅田 たしかにそれはECでしか味わえないものなので、食べたくなります(笑)。下村シェフは、レストランでの営業だけではなく、SNSを通じて、ご自身の価値ときちんと伝え、ファンづくりを続けてこられた。だからこそ、このような戦略が機能するという面もあるのでしょう。
ただ、調査からは、そもそも「ECを用いた販売をはじめた」という飲食店が圧倒的にすくなかった、という結果が出ています。

下村 ほんとうですね。テイクアウト対応は価格帯に関わらず、10数%程度参入しているのに、ECは1.3~5%程度にとどまっています。

梅田 じつは「1,000円以下」の飲食店が5.47%と高いのは、「カフェ・スイーツ」カテゴリの飲食店が参入が多い、ということが起因していると考えています。それをのぞくと、もっと低い利用率にとどまっていると予想されます。

下村 そのほかの価格帯となると、全価格帯で3%以下ですね。『ECサイトへの参入障壁が高い』という思い込みと、『EC向けの商品が作れない』という思い込み、の両方があると思います。
たしかに、レストランがECをおこなうには、許認可申請などいくつかの障壁はあります。たとえば、ECサイト自体の構築は「BASE」を使えばかんたんにできますが、EC向けの商品というのは、メニュー開発だけでなく、保存や発送にも目を向けなければなりません。ほかにも、惣菜製造業など、必要な許可証を保健所に申請する必要もあるし、EC用の冷蔵庫や冷凍庫も確保しなければなりません。

梅田 外食専門だった個人のレストランが、中食や内食にまで入っていくとなると、そうした許認可や冷蔵庫、冷凍庫の増設は避けられませんよね。

下村 そのとおりです。うちもECをはじめてから、冷凍庫を3台増やしました。ただ、そうした投資をしてでも、ECをやる価値はあります。うちは、お客様のいない営業前後の時間やアイドルタイムにEC向け商品の仕込みをすることもあり、仕事をする時間は増えてしまいますが、生き残るためには必要だと、割り切っています。

どんな業態の飲食店でもブレイクする可能性はある

梅田 ECをはじめない飲食店に対して、その理由を訊く項目もあったんですが、全体の46.8%が「自分の飲食店との相性がよくない」と考えていて、参入しない理由の第一位となっています。

下村 相性じゃないですよ。飲食店をやっている方なら、さわればなんとかなります。決まった正解はないかわりに、どんな業態のどんな店でも可能性はあると思います。なので、まずははじめてみて、進めながら一つずつ成功の可能性を探り続けることが重要です。僕は、その可能性を知ってしまった。知人から相談を受けたら、絶対にEC参入をおすすめします。

梅田 テイクアウトやデリバリーと、ネットショップ(EC)で解決できる課題は、どう違うのでしょうか?

下村 さきほども申し上げたように、まずは、ECは商圏に関係なく販売ができるという点が挙げられます。2点目は、時間です。現在、軸足であるレストランにお客様が戻ってきつつある状況ということを考えると、ピークの時間がカブるテイクアウトやデリバリーに注力するのは、よほど人材や雇用をうまく回さないとむずかしい。そして3点目は、ロスの問題ですね。日によって注文数がブレると、商品ロスや欠品のリスクもあります。

梅田 欠品なら、たんなる機会損失ととらえることもできますが、ロスは仕入れ分が純粋な損失になった上、仕込みに時間をかけていれば、労働力もロスになってしまいますね。

ミシュラン二つ星シェフが、「BASE」を選んだ理由

梅田 下村シェフは、ECの導入にあたり、なぜ「BASE」を選ばれたんですか?

下村 開設前、うちのお客さんに「ECサイト作るとしたら、どこがいい?」と訊いたら、圧倒的に「『BASE』でしょう」と答えた人が多かったんです。初期費用がかからず、スピーディにネットショップを立ち上げることができ、自分で更新できる。

梅田 <Edition Koji Shimomura>は、オフィシャルサイトもありますよね。そちらに手を加えることは、考えにありませんでしたか?

下村 もちろん、考えました。ただ、ブランドサイトの制作をお願いしている会社だと、通販システムをいれるには、費用も時間もかかる。コロナ禍では先行きもわからないから、ブランドを毀損しない限りで身軽にはじめたい、と考えたら、予算、スピード感をふくめて、「BASE」一択でした。

梅田 「BASE」は、システムに対する初期費用がかからず、すぐショップが立ち上げられるという特徴がありますが、実際の日々の運営における使い勝手はいかがですか?

下村 とにかくラクですね。商品の入れ替えや欠品に応じて、ECサイト上に最新状況をかんたんに反映できる。決済機能もふくめて、お金の管理もラクなんですよ。うちは「BASE」の口座に100万円たまったら、店の口座にスライドするよう設定していますが、その手数料も250円。サービス利用料や決済手数料は、売れた分への従量課金ですから、初期費用ゼロからスタートできる。自社でECサイトを構築することを考えたら、信じられないほど気軽にECに参入できます。

「BASE」で作られた<Edition Koji Shimomura>のECサイト https://www.edition-koji-shimomura.com/

「BASE」で作られた<Edition Koji Shimomura>のECサイト https://www.edition-koji-shimomura.com/

梅田 ちなみに、ECサイト構築する以外の部分でどれくらい費用は必要でしたか? 

下村 4月の感染拡大期に立ち上げたこともあって、容器などはモデルチェンジなどで廃棄に回るはずのものを安く譲っていただきました。人件費も、もともといるスタッフでまかなえています。新たにかかったのは商品の撮影費と、EC用メニューのストックのために導入した冷凍庫3台の費用くらいですね。

正しい戦略と戦術が、飲食店営業を救う

梅田 さきほど、ECは戦略的に使う必要がある、という話がありましたが、「BASE」を運営するなかでの戦略や戦術はあるのでしょうか?

下村 在庫管理などはスマホで全部自分でやっているのですが、商品の入れ替えや価格設定の調整も、こまめにやっています。EC用の在庫商品がすくなくなって、在庫を追加できる見通しがすこし先の場合には、価格を上げたりもします。

梅田 需給バランスに応じての価格調整――いわゆるダイナミックプライシングまでされるんですか!

下村 そうですね。在庫管理の意味合いが強いんですが、欠品の時間を長くしたくないんです。いつもソールドアウトだと、そのうち見に来てくれなくなって、興味も関心も薄れていってしまう。それもあって、品薄で補充に時間がかかりそうなものは、高めの価格に設定し直します。

梅田 それは、ブランディングにも非常に重要なことですね。SNSを利用して、来店客との信頼関係を築きながら、潜在顧客やファンの掘り起こしもしっかりおこなっておられる点は素晴らしいと思っていたのですが、それに加えて、戦術としてのダイナミックプライシングで、在庫のコントロールもおこなっている。安売りとなると、ブランドを毀損するリスクがありますが、下村さんは在庫量に応じて値上げをして、また潤沢に補充されたら通常価格に戻すわけですよね。ECの運用一つとっても、ブランディングに寄与することにあらためて気付かされます。

梅田 いま、飲食業界全体が困難に見舞われている時期ですが、飲食店や「BASE」さんとともに、より飲食業界が強くていい業界になることができる、お手伝いをしていきたいですね。じつは、今年の緊急事態宣言下では、われわれをふくめて、大手グルメサイトは軒並み月額料金を無料にしていたんです。

下村 飲食業界は、店舗での売上のみに頼る仕組みになってしまっていましたが、それでは今年のような状況になったときに、立ちゆかなくなってしまう。ECやデリバリーなど、店内飲食以外の柱も立てることで、ビジネスが強靭になり、より多くの人に喜んでもらうことができるはずです。

下村浩司氏(右)と梅田亮(左)

下村浩司氏(右)と梅田亮(左)

ネットショップ作成サービス「BASE」
初期費用、月額費用無料で誰でもかんたんにネットショップを作成することができるサービス。ネットショップ開設実績3年連続No.1。(マクロミル調べ:2020年2月)
https://thebase.in/

ライター紹介

松浦達也
松浦達也
ライター/編集者。「食べる」「つくる」「ひもとく」を標榜するフードアクティビストとして、テレビ、ラジオなどで食ニュース解説を行うほか、『dancyu』から一般誌、ニュースサイトまで幅広く執筆、編集に携わる。著書に近著の『新しい卵ドリル おうちの卵料理が見違える』ほか『家で肉食を極める!肉バカ秘蔵レシピ 大人の肉ドリル』(ともにマガジンハウス)など。
最新の人気グルメ情報が届く!

イイねするだけ!
最新の人気グルメ情報が届く!

Facebook

「いいね!」するだけ!
最新の人気グルメ情報をお届けします。