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連載:Withコロナ以降を生き抜く飲食店のEC戦略

売上激減期の麺屋武蔵を支えたのは、30分で作ったネットショップだった。人気ラーメン店が「BASE」を選んだ理由とは

<Retty>がおこなった調査では、2020年8月以降の売上予想について2割以上減と答えたお店が86%を超えました。

“ウィズコロナ”と言われるニューノーマル下を飲食店はどう生き抜くべきか。

今年、「BASE」でECサイトを立ち上げた人気ラーメン店<麺屋武蔵>代表取締役社長の矢都木二郎氏に「コロナ禍で『BASE』をはじめた理由」と「『BASE』とほかのサービスとの違い」をうかがいました。

<プロフィール>
矢都木二郎氏
1976年、埼玉県生まれ。大学卒業後、一般企業に就職するが、24歳で独立開業を目標に<麺屋武蔵>に転職。3年後、27歳で上野店店長に昇格。店の運営・経営を一任される。その後、新宿総本店店長を経て、2013年に 2代目代表取締役社長に就任。

<連載一覧>


飲食店の約9割が今後も「売上減」を予想! ミシュラン二つ星シェフが考える、 Withコロナ時代を生き抜くために必要な飲食店の戦略とは


「自社ECでは絶対できなかったし、信頼を失っていたかもしれない」 1日2,800本を販売した「チーズテリーヌ」ショップがBASEで目指す姿とは

売上激減に方針転換を余儀なくされた

――<麺屋武蔵>は、「お客様体験」をとても大切にするラーメン店として知られています。これまで、ラーメンイベントなどにも出店せず、EC事業にも手をつけてこなかった。しかし今年ついにECに取り組むことになった、ここまでの経緯を教えていただけますか?

矢都木 風向きが変わったのを認識したのは、2月頭の春節ですね。年明けから中国がたいへんなことになっている、という話は聞いていたんですが、春節までは実感はありませんでした。

――それでも、かなり早いタイミングですね。2月上旬当時、まだ飲食業界全体では大きな影響は出ていませんでした。

矢都木 <麺屋武蔵>は春節の時期、海外からのお客様がかなりいらっしゃるんです。

ところが、今年は外国人観光客の来店者数が例年の半分以下でした。それが3月末くらいから、自粛ムードもあっていよいよ売上が落ちてきて。4月に入って、緊急事態宣言のころには売上が半分、1/3となって、生き残るためになんでもしなければいけないステージに入った、と判断しました。

当時は、生麺とスープのお土産ラーメンセットを店頭販売もしていましたね。

「店に行くのが怖い」が通販を考えたきっかけ

――これまで通販(EC)をやってこなかった理由をお聞かせください。

矢都木 われわれはお客様がのれんをくぐってから退店してもらうまでの間、どれだけ幸せな時間を過ごしていただくか、ということだけに注力してきました。

ところが今年のコロナ禍で、お客様から「店に行くのが怖い」という声が聞こえてきて。のれんをくぐってもらわなければ、われわれは何もできない。そこで、通販をはじめることにしたんです。

当初は、アナログでやっていたオンライン販売。「BASE」だと30分でショップができた

――通販を「やろう」と決めたのはいつごろですか?

矢都木 7都府県に緊急事態宣言が出た直後、4月上旬ですね。

まず自社のホームページで販売をはじめて、お客様の問い合わせフォームに書き込んでいただく形でスタートしました。

こちらからメールで振込先情報を送って、入金を確認してから宅配伝票に手書きで記入して、商品を送る。

オンラインですが、やっていることは完全にアナログ。20人もご注文いただいたら、いっぱいいっぱいでしたね。そのころに「BASE」のことを知人経由で知りました。

<麺屋武蔵>ブランドサイトのお問い合わせフォーム。4月は、ここから通販の注文を受けていた。

<麺屋武蔵>ブランドサイトのお問い合わせフォーム。4月は、ここから通販の注文を受けていた。

――「BASE」の開設は、スムーズにできたのでしょうか?

矢都木 パソコンでアカウントの新規登録をして、手持ちの商品写真を貼りつけて……と進めてみたら、ものの30分で、実際に商品が販売できるサイトができあがってしまった。

登録のナビゲーションのとおりに進めていたら「あれっ、できてる?」って(笑)。本当、拍子抜けするくらいにかんたんでした。

――仮に「BASE」がなかったとしたら、どのような形で通販に手をつけていたと思われますか?

矢都木 じつは最初は、自社のホームページに通販機能をもたせようと考えていたんです。

ところが、いざ相談してみたら、通販や決済の機能をもたせるには100万円単位でお金がかかるし、どんなに急いでも数週間はかかるとか。売上が激減するなか、資金も時間もかけてはいられない。

それに対して「BASE」は0円ではじめられるし、ランニングコストも売上が発生しなければかからない。しかも実際にECサイトをはじめて運営する僕でも、あっという間に登録・開設できた。

「やろう」という熱が高いうちに、ショップ開設までたどり着くことができたのは非常に魅力的でしたね。

モール型ECだと売上に関係なく月額固定の支払いが発生したり、実際に商品販売ができるようになるまで、1か月以上かかることもある。コロナ禍では少しの資金も時間もムダにはできません。

激減した店舗の売上を、ECが救った

――実際、「BASE」上での売上は、どれくらいになりましたか?

矢都木 5月に、ざっと300~400万円分くらい売れました。数量としては3,000食分くらいでしょうか。

店舗の売上がない時期に、ほんとうに助かりました。店舗の売上も戻ってきた6月以降は、ECはゆるやかに落ちついてきて、いまは月に100万円くらいだと思います。

店舗とECの売上は、シーソーのような関係ですね。店舗をやりながらでもECができることがわかってきたので、もうすこし売りのばして、月商200万円くらいのところで安定させたいですね。

――「BASE」を立ち上げた当初と現在とで、何か変更されたことはありますか?

矢都木 こまかいことですが、送料の設定ですね。

当初は1セット(3食入り)を送料込みの価格設定にしていたんですが、2個口にすると、送料分まで2倍になってしまって、お客様には割高感が生まれてしまう。

いまは送料を別扱いに変更して、送料が1.5倍程度ですむ2個口の商品を用意しています。

BASE」だと、こうしたこまかい調整も、「すぐやろう」と思ったタイミングで即変更できる。助かりますね。

https://menya634.thebase.in/ 当初は「30分で作った」という<麺屋武蔵>の「BASE」ショップ。現在も矢都木さん自身がカスタマイズしている。

https://menya634.thebase.in/ 当初は「30分で作った」という<麺屋武蔵>の「BASE」ショップ。現在も矢都木さん自身がカスタマイズしている。

「相性が悪い」は思い込み。ワンオペ店でもEC導入のメリットは大きい

――今回のコロナ禍を受けて、<Retty>による飲食店調査では、「コロナ禍を受けて、ECを用いた販売をはじめましたか?」という設問に対して、「はじめた」というラーメン店はゼロ。その理由として、「相性がよくない」と考えている店主が多いようです。この結果について、どうお考えになられますか?

矢都木 大きく二つ理由があると思います。

まず、人手の問題。とくに個人経営のラーメン店は、事実上ワンオペで回している店舗もすくなくありません。

ラーメンのECをはじめるには、保健所から「飲食店営業許可」以外にも「そうざい製造業」「食肉製品製造業」など、飲食店の営業と、別の許認可を取る必要があります。また、原則として製造・販売系の許認可には、専用の製造室などが必要になります。

そしてもうひとつ、ラーメン業界の人の多く、これは僕たちもそうですが、IT系に弱く、ECを難しいもの、として考えている人が多いことも挙げられます。

――となると、やはり小規模ラーメン店でECの導入は難しいのでしょうか?

矢都木 いえ、そうとは限りません。飲食の営業とEC用の製造時間帯をわけることで、許可が出るケースもあると聞きます。

つまり、その気があれば、客入りの悪い時間やアイドルタイムをEC用の仕込みにあてて、10食、20食でもEC用のパッケージを作ることはできると思います。

また、「ネットが難しい」という思い込みがあるかもしれませんが、「BASE」でショップを立ち上げるのは、誰にでもできるくらいかんたん。配送伝票の入力にしても、「BASE」上でお客様に入力してもらったデータを、そのまま印字できる。

ハードルが高いと思われがちなECも、「BASE」の導入で「ラーメンを作る」以外のオペレーション面で生じるハードルを、極限まで下げられると思います。

「ECでもおいしい」を実現するポイント

――「ラーメンを作る」部分で、ECならではの難しさはありますか?

矢都木 うちのECのアイテムは、ストライクゾーンを広く取るような商品づくりを心がけています。作り方を厳密に守ってもらえなくても、おいしくなるようなチューニングですね。

たとえば、店舗では秒単位で管理している麺の茹で時間ですが、EC用の麺は、茹で時間が多少前後しても食味が変わらないような配合・太さにしています。スープも、多少ぬるくてもおいしく食べられるよう、塩分や油分を調整しています。

調理をあまりしない人でも、仕上がりの味がブレないよう調整しています。

ECで販売している商品

ECで販売している商品

――緻密な工夫があるんですね。<麺屋武蔵>のEC向け商品の製造体制は、どのようになっているのでしょうか?

矢都木 うちは神田の<麺屋武蔵 神山>の上階に「そうざい製造」の免許を取得している厨房があるので、そこに各店の店長が集まって、EC用の商品を作っています。

いまは製造から「BASE」での受注、発送業務まで、現場に完全にまかせています。

ITに明るくない人もいますが、大きなトラブルもなく運用することができています。

――「BASE」を導入して、お客様からの反響はいかがですか?

矢都木 地方に転勤された昔の超常連さんのなかに、毎週「BASE」から買ってくださる方がいらっしゃるんです。<麺屋武蔵>は東京でしか展開していないので、「地方にいても食べられるなんて! 引っ越してから食べられなかったので、うれしいです!」とめちゃくちゃ喜んでくださった。これだけでも、「BASE」をやってよかったな、と思います。

ECへの参入障壁を下げてくれた上に、新商品を気軽に投入しやすいUIで、新しい展開にもつなげやすい。本当に助かっています。

――次に「BASE」を使ってやりたいこと、仕掛けたいことはありますか?

矢都木 いままで、店頭だけではできなかった展開ですね。たとえば先日まで「BASE」で「DIYらー麺」というラーメンキットを販売していました。

4~5食分になるラーメンの全素材が入った超本格キットで、豚ゲンコツや鶏ガラからスープを取り、小麦粉から麺を打ってラーメンを仕立てる。

各工程の見極めの不可欠な画像やYouTube動画を貼りつけるのもかんたんで、こうした新商品は、「BASE」があったからこそ形にできたアイデアだと思います。

これからも「BASE」とSNSを連動させながら、ECでしか味わえない新しい楽しみをどんどん提案していきたいですね。

<麺屋武蔵>は、各店で提供するその店だけのラーメンを媒介として、店頭やSNSでファンと強く結びついてきました。

そして「BASE」を利用してECに参入した今年、店頭に来ることができないお客様にもラーメンを届け、新たなステージへと一歩を踏み出しました。

ウィズコロナ時代において、ECは飲食店をより強靭にしながら、新しい可能性を開く希望のツールとなるのではないでしょうか?

ネットショップ作成サービス「BASE」
初期費用、月額費用無料で誰でもかんたんにネットショップを作成することができるサービス。ネットショップ開設実績3年連続No.1。(マクロミル調べ:2020年2月)
https://thebase.in/

ライター紹介

松浦達也
松浦達也
ライター/編集者。「食べる」「つくる」「ひもとく」を標榜するフードアクティビストとして、テレビ、ラジオなどで食ニュース解説を行うほか、『dancyu』から一般誌、ニュースサイトまで幅広く執筆、編集に携わる。著書に近著の『新しい卵ドリル おうちの卵料理が見違える』ほか『家で肉食を極める!肉バカ秘蔵レシピ 大人の肉ドリル』(ともにマガジンハウス)など。
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