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連載:マッキー牧元の"変態メシ"

【変態メシ】わずか1秒の揚げ時間を見極める、高田馬場「とんかつ ひなた」で食べ比べの極みに至る

ライター紹介

マッキー牧元
マッキー牧元
株式会社味の手帖編集顧問。タベアルキスト。「料理王国」他14媒体で連載中。フレンチから居酒屋まで全国、世界中で年間600食を食べ歩く。2017年7月にRetty・TOP USER PRO就任。

「おい、俺たち冷遇されていないか」
「そうだよ。ロースやヒレばかり使われて」
「牛なら、俺らも使ってくれるんやけど」
「特にとんかつがいけません。見向きもされやしない」

豚のランプやイチボ、豚トロやシキンボウは、長い間こうやって、すねていたに違いない。

とんかつで、ロースやヒレしか使われないのは、多く取れるからであり、安定した供給と一般的に馴染みがあるからである。

しかし、勇敢にもロースやヒレ以外も揚げてみようとする男たちがいた。
その男たちは、とんかつ屋を始めるにあたって、ありとあらゆるとんかつ屋を食べ歩き、豚一頭を買って、試作した。

もちろん最初は、ロースとヒレだけである。研究を重ねるうち、他の部位も揚げてみたらどうだろうと、各部位を整形して揚げてみた。すると、「これはうまい」という部位が出てきた。ならば店で出そうと、開業に至ったのが「とんかつ ひなた」である。

この店の料理人は、新垣定哲料理長以下、とんかつへの愛が高じた立派な変態たちである。そう、この「変態メシ」という連載にふさわしい。

とんかつの希少部位を食べ比べ

開店当初は、ロースやヒレ以外のとんかつを注文してくれる人がいるか不安だったそうだ。

だが、作る変態あれば食べる変態あり

私も大のとんかつ好きで「東京とんかつ会議 評議メンバー」であるから、見逃さなかった。
特に、この店のとんかつ食べ比べコースが、とんかつ好きのツボにすっぽりとはまりこんだのである。

一部単体でもあるが、最初訪れたなら、各部位を食べるコース(3500円)をお勧めする。リブロース、ロース、ひれ、しきんぼ、らんぷ、とんとろ(豚トロ)という6部位の食べ比べを楽しめそうな変態さんたちを集結させて、行ってみよう。

リブロース

脂がのった「リブロース」は、いたいけな柔らかさがあって、脂が甘く溶けていく。

こいつはオリーブオイルと塩をつけるとさらにいい。

ロース

一方ロースは、インカの天日塩をつけて食べてみる。
グッと齧り付けば、肉を噛みしめる喜びがあって、噛み進むごとに肉汁が溢れ、より強く甘い香りが鼻に抜けていく。

ヒレ

お次のヒレ肉は、その断面の美しさに惚れ、たまらず手でつかんで食べる。
ああ、なんということだろう。噛んだ瞬間に甘い香りがどっと流れ出て、心を焦らす。
食べてはいけないものを食べてしまったかのような、命の鼓動がある。

シキンボウ

続いてシキンボウが現れた。こいつもインカの天日塩をつけて、手づかみでいってみよう。

おお、たくましい肉の赤い鉄分の味に満ち満ちている。歯を押し返すようなムチっとした噛み応えで、「噛め!噛め!」と肉が叫んでいる。

*シキンボウ・・・後ろ脚のももの外側の肉を「そともも」と呼び、最も運動する筋肉が集まっている部位である。シキンボウは外ももの中でも内側の部位形が金の延べ棒に似ているのでこう呼ばれている。

ランプ

お次はランプである。
一口食べて目を丸くした。薄いかつなのに、甘い肉汁が次から次へと湧き出るではないか。
なぜ先人たちはこれをカツに仕立てなかったのか。

*ランプ・・・後ろのもも脚から臀部(お尻)にかけての部位を呼ぶ。どちらかといえば臀部(お尻)寄りの部位だが、より尻寄りは「いちぼ」と呼ぶ。赤身の中にも適度な脂があり、あっさりした脂とたくましい肉の味わいが特徴。

わずか1秒の揚げ時間を競う「とんかつ界のF1」

しかし、どの部位も、中心がレアでしっとりと精妙に火が通されている。

「1秒を競い合います」と、新垣料理長は言う。ここぞというタイミングで揚げて休ませるのだが、そのとき手で持ってかつを軽くゆする。

「重さと、中の肉汁の様子を測っています。火が通ってないと、中で微かに肉汁が流れるのでしなやかに揺れるのです」。まさに、変態であるわずか1秒を競い合う、とんかつ界の「F1」ではないか

ヒレやシキンボウなどは切って様子を見て、数秒切り口同士を合わせて、最善の状態に持っていく。それはまるで、豚の声を聞いているかのようだ。

「ほら肉汁が表面に浮き上がってきているでしょ。これが数秒で引いていってしまう。だから、出されたら直ちに食べていただきたい」。

食べる方もまた、「F1」でなければならない
揚げ方や衣のつけかたも、当然ながら部位によって異なる。

例えば、豚トロは、中心に脂が通っているので、そこへ火を通すイメージで深く火を入れる。

*豚トロ・・・豚の頬から肩のネック(首)部分の肉を指す。トロのように脂が多いことから呼ばれるようになったとされる。

ヒレとシキンボウは柔らかいので、衣が剥がれにくい。そのためしっかりと成型するように衣をつける。

この店には、とんかつという料理のひとつの極みがある。そういう意味でも「ひなた」は、とんかつ界の「F1」なのである。

コースの最後には、ミニソースカツ丼を。

ロースカツの美味しさ、柚子胡椒の香り、長野のソース会社に特注したウスターソースという三位一体の味わいにのけぞるのは必至。一切れ乗っているだけのようだが、実は…。あとは食べてのお楽しみである。

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