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連載:Retty編集長の"このトレンド"に注目!

かき氷ブームはなぜ起きた?夏以外も楽しむコツとオススメ店を、かき氷評論家が教えます!

ここ数年、じわじわと盛り上がっていた「かき氷」。お祭りや海の家で食べるような簡素なものではなく、様々なこだわりが込められた、いわゆるグルメかき氷の写真がinstagramなどでも毎日大量に投稿されています。

そんなグルメなかき氷ムーブメントについて、フードジャーナリストであり、さらにRettyTOPUSER PROでもある山路力也さんに、様々なお話を伺いました。

TOP USER PRO紹介

山路力也
山路力也
フードジャーナリストかつ、ラーメン評論家でもあり、かき氷評論家でもある。「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を常に考えながら、テレビ・雑誌・ウェブなど様々な媒体で活躍。

なぜ、 2017年夏にかき氷がここまで盛り上がっているのか

この夏、かき氷が大いに盛り上がっています。もちろん猛暑という気候も後押ししているかもしれませんが、昔ながらのメニューが、今なぜこんなに注目されているのでしょうか?

山路力也氏(以下同)「僕にとっては、何を今さらってくらいなんですけどね(笑)。今に続く、かき氷のムーブメントは、2000年代初頭から実は始まっているんですよ。それまでかき氷といえば、和の甘味処、喫茶店のフラッペ、お祭りの屋台で食するものしかなかった。シロップも既製品を使ったものしかなかったんです。

でも、2001年熊谷に『慈げん (じげん)』が、2003年鵠沼海岸に『埜庵 (のあん)』が、と手作りシロップのかき氷を出すお店が都心から離れた場所で登場し、かき氷に可能性があるということを示したんです。あるいは天然氷にこだわった日光の『松月氷室』なども。そうしたお店は、わざわざ遠くまで行かないと食べられない。そんな希少性や、各お店のこだわりやウンチクに惹かれた人々によって、行列のできるお店が局所的に誕生していきます。

そして2007年、都内の谷中に『ひみつ堂』が登場することで、一気にマスメディアもかき氷に注目するんです」

そう振り返ると、かき氷人気はすでに10年以上の歴史があるんですね。確かに、山路さんのいう通り"今さらかき氷ブーム"なのかもしれません(笑)。

海外・ノスタルジック・創作の3タイプ。今こそ創作タイプかき氷に注目を

「でも、かき氷をここまでの人気者にしたのは、やっぱり2015年に原宿に登場した『アイスモンスター』ですよね。

こうした海外ブランドが日本に上陸したのは、かき氷史にとって大きな契機だったと思います。

ちなみに、今日本にある、いわゆる凝っているかき氷は3つに大別できるかなと。

1つ目はアイスモンスターやソルビンのような海外系かき氷。アイスモンスターのような台湾の「雪花氷(シェーファーピン)」は元々の氷に味がついていたり、ソルビンのような韓国の「氷水(ピンス)」は液体や粉末の原料を瞬時に粉状の氷にしたり。

水でできた氷を削るという職人の世界と異なるために、多店舗展開しやすくて、ブランド認知が広がりやすかった点も人気の背景にあると思います。

2つ目を、僕はノスタルジック系かき氷と呼んでいるんですが、甘味処などで食べられていたいわゆる、みんなが懐かしく感じるタイプですね。簡単にいえば、口当たりはジャリジャリで、食べると頭がキーンとなるようなもの」

頭がキーンとならないかき氷なんてあるんでしょうか?

創作系かき氷タイプをぜひ食べてください!それが3つ目です。最近増えてきた、氷にこだわったかき氷は、本当にキーンと来ないんです。なぜなら、氷の温度が全く違うから。ノスタルジックタイプは氷の温度が-20℃、でも創作タイプのお店は、氷を削る前に冷凍庫から出して発泡スチロールなどに入れて、ゆるめるんです。大体-7℃くらいになので、喉を通るときにはすでに固体から液体に。だから頭に響かないんですよ。食感も、驚くほどふわふわなんです」

創作タイプのかき氷から、氷に賭ける職人魂を感じ取ってほしい

「天然氷を使うのか、純氷を使うのか、ブロック氷を使うのか、キューブ氷を使うのか。どんな風に削るのか。氷だけでも、こだわりどころはたくさん。さらに、どんなシロップにするか、シロップの掛け合わせをどうするか、トッピングはどうするか。その美味しさの可能性は広がるばかり。

お薦めのかき氷店はたくさんあるのですが、まずはこの5軒に行ってみてはどうでしょうか?」

1.駒沢大学の『雪うさぎ』

新雪のようなフワフワのかき氷に手作りのシロップをたっぷりかけるかき氷。創作タイプの真髄が、堪能できます。

2.池尻大橋の『和Kitchen かんな』

旬の素材を生かした日本料理店。"旬の素材を使ったシロップはバリエーションが豊富。日光「松月氷室」の天然氷を繊細に削り繭のように盛ったスタイルは芸術的"

3.笹塚の『みなと屋』

たこ焼き屋なのに、かき氷も提供しているお店。甘さ控えめで大きなかき氷はフワフワで人気

4.大阪・中崎町の『大阪浪花家』

こちらは大阪の、たい焼き屋なのに、かき氷も提供しているお店。 ”複雑な素材を上手に組み合わせるのが真骨頂。大阪でも屈指のクオリティを誇るかき氷”

5.京都・東山の『たすき』

お茶とお酒とお菓子とかき氷が楽しめる和風カフェ。"年に何度となく足を運ぶ京都。その中で今一番注目しているかき氷を出す店がこちら。夜はお酒も楽しめるが、かき氷も夜営業帯でもやっている。京都で夜にかき氷を楽しめる数少ない存在でもあるので、知っておいて損はない店だ。"

こうした創作タイプを食べてみると、店主がいかにかき氷に職人魂を込めているのか実感できると思います。もちろん、食べたいものを自分の好みで食べていくので十分だとは思いますが、ぜひいろんなお店を食べ比べてみてほしいですね。各お店の様々なこだわりと可能性を体感できて、本当に楽しいですよ。

そして、氷だけにかき氷は、とても儚い。作り手にとっても時間との勝負なんです。スピードが必要かつ繊細。そんな刹那的な存在であることも、他の料理には見られないかき氷の魅力です」

夏は入り口にすぎない。かき氷は、夏が終わってからがもっと楽しい!

かき氷は、世界的に見るとどんなメニューなのでしょうか?

「世界を見渡すと、かき氷のようなものを食べる文化は結構あります。でも、アジアでの進化、中でも台湾、韓国、そして日本の進化が最近は著しいですね。特に、日本人の職人的気質との相性が良いためか、意外性のあるかき氷がどんどん登場しています。デコレーションケーキみたいにセルクルで型取ったり、伝統的な日本酒とコラボレーションしたり。これからもどんなものが出てくるんだろうと、楽しみでなりません」

そんな風に聞いていると、季節限定なのがもったいないのかもしれません。

「いやいや、僕もそうなのですが、むしろ夏は食べに行かないというかき氷好きも多いですよ。お店も物凄く混んでいますし(笑)。もちろん、暑い夏はかき氷の美味しさ・面白さに気づくにはぴったりの時期だと思います。

しかし、かき氷専門店の多くは旬の素材を生かしたかき氷を作っていますので、夏以外の季節にも魅力的なかき氷を提供しているんです。また、夏の繁忙期が終わるとお店も落ち着くので、手間ひまをかけて作られたかき氷が増える傾向にあります。クリスマスやお正月、バレンタインなどには特別なかき氷を出す店も多いので、かき氷好きが集まるほどです。

少しずつですが、通年開いているお店も増えてきています。僕は、クリスマスもお正月もバレンタインも、かき氷食べに行きますよ。夏以外の時期にかき氷を楽しむようになったら、かき氷通といえるのかもしれませんね」

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