ライター紹介
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杉村啓
- 日本酒ライター、料理漫画研究家、醤油研究家。 日本酒の基本から歴史・造り方までを熱く語った『白熱日本酒教室』やタモリ倶楽部でも紹介された醤油の奥深さを書いた『醤油手帖』など、食に関する書籍を多数執筆。「むむ先生」として食のコラムや紹介を各メディアで担当。8月末には、グルメ漫画の半世紀を辿る新著『グルメ漫画50年史』を上梓。
Rettyグルメニュースをお読みの皆様、こんにちは。「むむ先生」こと、杉村と言います。醤油の本やお酒の本や料理漫画グルメ漫画に関する本を書いていたりします。
「むむ先生の”食"超解説シリーズ」として、食の、特に調味料にまつわるあんな疑問やこんな疑問に答えていく本連載。2回目のテーマはずばり、「九州の醤油は甘いって本当?」です。
そもそも甘い醤油って?
「甘い醤油」と聞くと、もしかすると非常に甘い、フルーツソースなようなものを想像するかもしれません。でも、甘い「醤油」ですから、味のベースは醤油なんです。
イメージ的には、お餅につけて食べる砂糖醤油を想像するといいでしょう。
砂糖が入っていて甘味を感じますが、しっかりと醤油の風味や塩気を感じますよね。この砂糖醤油や、さらにはみたらし団子のタレのように、醤油は甘いものと非常に相性がいいのです。
九州の醤油はなぜ甘い?
では、九州の醤油は甘いのでしょうか? 答えは「甘い」ものが多い、です。いわゆる普通の濃口醤油もあるのですが、それに甘味を加えたものがとても多いのですね。
なぜ甘くなったのかには、さまざまな説があります。
まずひとつめの説は、江戸時代にまで遡ります。江戸時代は鎖国をしていたので、砂糖は長崎の出島で輸入するしかありませんでした。
そこから琉球(沖縄)が砂糖を作り始め、それを扱う薩摩藩が莫大な利益を上げます。中期になると、幕府が砂糖の国産化を奨励して、日本の西南部の温暖な地域において作られるようになります。
では、砂糖と醤油がいったいどう関係するのでしょうか。
当時は、そういった理由で、砂糖は貴重ではあったものの九州地方では比較的、手に入りやすかったのです。
そこで、貴重品をたくさん使うぐらい、あなたのことを大事に思っていますよという意味を込めて、ごちそうであればあるほど砂糖を使うようになったのです。
そこから、味の基本である醤油を最初から甘くしたものが使われるようになったと言われています。
砂糖の産地であった薩摩(鹿児島)に近ければ近いほど、つまり九州の中でも南へ行けば行くほど醤油が甘くなるのはここからきていると考えられています。
魚の食べ方が醤油の味を変えた?
ふたつめは、九州では新鮮な魚を食べることが好まれるということです。
実は魚は、新鮮すぎると身が固く、旨味があまりありません。
熟成することでやわらく、旨味が増えるのです。その代わり、生臭みも若干増えてしまうのですね。
関東で食べる刺身は、やわらかくなり、旨味が増えた状態なのです。
ところが九州の人達は、新鮮な状態を好みます。固くて歯ごたえがあるけれども、魚に旨味が足りません。だとしたら、つける調味料で旨味を補えばいい。
というわけで、醤油に甘味や旨味を加えたものが好まれるというわけです。そして甘い醤油は、関東のお刺身よりは、やっぱり九州のお刺身によく合うのです。
このことからわかるように、味の違いが出てきたのは、それぞれの地域の食文化の違いが大きく影響しているのです。調味料を知ると、その地域の食文化が何となく見えてくるのですね。
むむ先生のイチオシ調味料〜甘口醤油編〜
今回のお話で、九州の醤油に興味を持った人におすすめしたいのが「バル福萬醤油」。このお店は醤油蔵にして、福岡は博多の街中にある醤油を販売しつつ、ランチもいただけるお店です。
なんといっても、九州中の醤油の品揃えは圧巻!実は九州の醤油は、県によって微妙に風味が異なります。
よく獲れる魚に合わせて味を変えているのですね。この店に来たら、そんな微妙な差も試食させてもらったうえで購入することができます。
インターネット通販でも販売していますので、興味がある方はこちらから購入してみてください!
・公式サイト
- バル福萬醤油
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福岡県 福岡市中央区 天神
丼もの
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