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連載:むむ先生の"食"超解説シリーズ

ラー油はどのように進化したの?アノ「食べるラー油」が生まれた背景って知ってる?

Rettyグルメニュースをお読みの皆様、こんにちは。「むむ先生」こと、杉村です。

ライター紹介

杉村啓
杉村啓
日本酒ライター、料理漫画研究家、醤油研究家。 日本酒の基本から歴史・造り方までを熱く語った『白熱日本酒教室』やタモリ倶楽部でも紹介された醤油の奥深さを書いた『醤油手帖』など、食に関する書籍を多数執筆。「むむ先生」として食のコラムや紹介を各メディアで担当。8月末には、グルメ漫画の半世紀を辿る新著『グルメ漫画50年史』を上梓。

「むむ先生の"食"超解説シリーズ」、23回目のテーマは「ラー油はどのようにして進化していったの?」です。

いまや「食べるラー油」は、当たり前のようにスーパーに並ぶ定番商品になっています。桃屋の「辛そうで辛くない、ちょっと辛いラー油」から始まったブームから、すっかりと食卓に定着しましたよね。

今回は、そんなラー油の進化の歴史について、掘り下げていきたいと思います。

ラー油はいつごろ生まれたのか

ラー油というと、中華料理というイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。

実際、ラー油は中国で16世紀から17世紀にかけて作られた調味料です。中華料理の辛い料理に使う調味料なので、もうちょっと古くからあると思われていたかもしれませんが、比較的新しいのですね。

どうして17世紀前後とわかるかというと、ラー油の主原料である「唐辛子」が伝わったのが、そのぐらいだからです。

そもそも唐辛子は中南米原産で、コロンブスが新大陸を発見(1492年)した後に、ヨーロッパに伝わり、その後、世界中へ伝わっていったのです。

日本へは、柚子胡椒の回で紹介したように、1500年代にポルトガルの宣教師によって伝えられた…という説が有力です。

"唐"辛子という名前ですが、中国から日本へ伝わったわけではないのですね。それどころか、中国へ伝わったのは日本よりもさらに後だといわれています。

日本にラー油が伝わったのは何年か…正確なところはわかっていません。

おそらく、中華料理店では使っていたところもあったと思われますが、日本で初めてラー油が発売されたのは1966年。

エスビー食品が「中華オイル」として販売したのが日本初です。その後、「ラー油(辣油)」と名前を変えて現在にいたります。

ラー油はどうやって作るの?

ここでちょっと、ラー油の作り方を見てみましょう。

基本的には、ゴマ油に唐辛子などの各種香辛料を入れ、加熱。ある程度の温度になったら火を止めて、余熱でじっくりと成分を抽出させます。これだけで、油に辛味などがしっかりと移ったラー油が完成するのです。

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本格的に作る場合には、唐辛子の粉を使います。唐辛子粉やさまざまな香辛料に、軽く水を加えて練り、200℃ぐらいに熱した油を少しずつ入れます。水で練っておくのは、高温の油を注いだ際に焦げないようにするためです。

油を注ぐたびにかき混ぜ、全て入れ終わったらしばらく置いておくと完成です。日本では基本的には上澄みの油だけを使いますが、中国などでは香辛料の粉が底に沈んだまま使ったりもします。

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いつラー油が変わったのか

ラー油はしばらくの間、それほど使い道が多かったわけではありません。発祥の中国ではさまざまな料理に使われましたが、日本では餃子のつけダレに使うという人が多かったのではないでしょうか。

転機になったのは1990年代。六本木にある四川料理のお店のオーナーシェフが、香り高いラー油を開発しました。

しらしめ油(菜種油を精製した油の商品名)に陳皮、八角、花椒、桂皮などを入れて、あらかじめ油に香りをつけておき、唐辛子の粉は水ではなく桂花陳酒というキンモクセイの香りのするお酒で練ります。

そうして作られたラー油はルビーのような深い赤色で、辛いけれども香りと旨味が強く、「飲めるラー油」となるのです。

この「飲めるラー油」は、人気漫画『鉄鍋のジャン』で紹介され、その後全国の中華料理屋さんに広まりました。

この後に、あるレベル以上のお店ではこの方法で作られたラー油と、普通の辛いラー油とを用意して、料理によって使い分けるというのが当たり前になっていったのです。

ちなみに「飲めるラー油」のレシピは、文庫版『鉄鍋のジャン10巻』に収録されていますので、興味のある人は読んでみてください。

家庭用のラー油の変遷

家庭用のラー油は、2000年代に入ってから大きく変わります。

2000年に発売された、石垣島の辺銀食堂の「石垣島ラー油」が、じわじわと口コミで人気を集め、マスコミ等で紹介されたことなどをきっかけに2004年頃から流行しました。

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辺銀食堂を営む夫婦のうち、旦那さんは中国出身ということもあり、底に香辛料などが沈んでいるものをすくって食べる、具材を食べるラー油に慣れていました。そこで、沖縄の素材を使い、具材が沈んだままのラー油を作ったのです。

これらのラー油のブームにより、外食でも内食でもラー油に対する使い方の意識が変わっていきました。

単に餃子のタレに使うだけではなく、さまざまなものに少し加えてみるようになっていったのです。いわゆる「ちょい足しブーム」ですね。

この傾向は、2008年にリーマンショックが起きるとさらに加速しました。景気が一気に悪くなり、内食が進みます。ちょい足しブームもあり、調味料全般の売り上げがどんどん上がっていきました。

このときの調味料の売り上げの特徴は、砂糖や塩や醤油といった、いわゆる基礎調味料はそれほど売れず、めんつゆやタレなどの「一品で味が決まる調味料」や「付け足し系」が伸びていったのです。

もちろんラー油も、少しだけ加えると味が決まるため、売り上げを伸ばしていきました。

そうした中で登場したのが、2009年に発売された桃屋の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」です。

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フライドオニオンとフライドガーリックがたっぷり入った、「具材を食べるラー油」は爆発的ヒットとなりました。

翌年にはエスビー食品の「ぶっかけ!おかずラー油」が登場。

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具材を食べるという、あまり辛くないラー油は、ジャンルとして定着しました。現在ブームはおさまりましたが、スーパーなどの棚にはしっかりと場所を確保し、コンスタントに売れていますね。

食べ過ぎには注意!

ラー油を構成している唐辛子の主成分「カプサイシン」にはダイエット効果があります。また、具材を食べるラー油は、ご飯にのせてそのまま食べてもおいしいので、ついつい多く食べがちです。

でも基本は、ラー「油」というぐらいですから、油なのです。食べ過ぎると、当然カロリーも大変なことになりますので、注意しましょう。

【むむ先生のイチオシ調味料〜ラー油編〜】

いろいろと悩んだのですが、やはり現在の食べるラー油を爆発的に広めた「辛そうで辛くない少し辛いラー油」でしょうか。

味わいに関しては、言われなくても知っているよという人も多いでしょう。それだけのブームになった調味料です。

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このブームはかなり大きく、他社からはラー油以外にもフライドオニオンとフライドガーリックを使った、食感もいい調味料が次々と登場したりしています。残念ながら消えてしまったものも多いのですが……

冷や奴にラー油をのせるという、今までは考えたこともなかった食べ方を提案してくれたこともあり、食べるラー油といえばまずはこれ、という印象が強い調味料です。

■漫画で解説!日本酒教室

日本酒に興味はあるけど、「なんだか難しそう」「どれを選べばいいのかわからない」……。そんなあなたのための“日本酒教室”、はじまりはじまり!詳しくはこちらから http://sai-zen-sen.jp/comics/twi4/nihonshu/0002.html

■グルメ漫画の歴史をまとめた本『グルメ漫画50年史』を出しました

50年にわたるグルメ漫画の歴史を、10年ごとに区切り、当時の食文化からどういう影響を受けてきたのか、そして食文化にどういう影響を与えてきたのかを記しました。

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