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連載:むむ先生の"食"超解説シリーズ

すべては”お酢"から始まった!?日本の発酵調味料の歴史〜むむ先生の”食"超解説シリーズ4〜

ライター紹介

杉村啓
杉村啓
日本酒ライター、料理漫画研究家、醤油研究家。 日本酒の基本から歴史・造り方までを熱く語った『白熱日本酒教室』やタモリ倶楽部でも紹介された醤油の奥深さを書いた『醤油手帖』など、食に関する書籍を多数執筆。「むむ先生」として食のコラムや紹介を各メディアで担当。8月末には、グルメ漫画の半世紀を辿る新著『グルメ漫画50年史』を上梓。

Rettyグルメニュースをお読みの皆様、こんにちは。「むむ先生」こと、杉村です。

【1】【醤油】濃口・うす口の違いはどうして生まれたの?
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「むむ先生の"食"超解説シリーズ」4回目のテーマは、まだまだ暑さが残る季節にふさわしい「日本で一番最初に生まれた発酵調味料は酢。その歴史を紐解く」です。

お酢は体にいいですし、食欲増進効果もあります。暑いときにはお酢でさっぱりといただきたいですよね。

Sayaka.hさんの投稿より

Sayaka.hさんの投稿より

画像引用元:https://retty.me/area/PRE13/ARE15/SUB1501/100000729687/19002117/

体の中でお酢を造っている?

お酢の歴史を紐解く前に、まずは「お酢はどうやって造られるのか」を見ていきましょう。

実は、お酒を飲んだことがある人は、お酢を造ったことがあると言っても過言ではありません。

お酒が体内に入ると、肝臓でアルコールを分解します。このとき、すぐに分解されるわけではないのです。ちょっと専門用語が出てきてしまうのですが、まずは肝臓内にある「アルコール脱水素酵素」というものの働きで、アルコールは「アセトアルデヒド」という物質に分解されます。

その後、アセトアルデヒドは「アセトアルデヒド脱水素酵素」というものの働きで、「酢酸(さくさん)」に分解されます。そして酢酸が水と二酸化炭素に分解され、呼吸や汗などによって体外に排出されるのです。

このときの「酢酸」こそ、「お酢」の主成分に他なりません。というわけで、「お酢はお酒を分解すると造られる」のです。「お酒を放置しているとお酢になる」という言葉を聞いたことがある人もいると思いますが、まさにその変化が起きているのです。

Jun Kikuchiさんの投稿より

Jun Kikuchiさんの投稿より

画像引用元:https://retty.me/area/PRE13/ARE15/SUB1501/100000729687/2127251/

もちろん、いちいちお酢造り職人の人達がお酒を飲んで、酢酸に分解して、それを抽出……なんてことはしません。

微生物の力を借りて、大規模に行うのです。お酒を「酢酸菌」という菌で発酵させればお酢ができあがります。この酢酸菌が、前述のアルコール脱水素酵素やアセトアルデヒド脱水素酵素を持っているのですね。

お酒は糖分を酵母で発酵させて分解することによって、造られます。というわけで、日本酒と同じようなお米を発酵させたお酒から造れば米酢。糖分が豊富に含まれている果物を発酵させたお酒から造れば果実酢となるのです。りんご酢だったら、りんご果汁を発酵させてお酒を造り、それがお酢に。柿酢だったら柿果汁を発酵させてお酒を造り、お酢にしたのですね。

お酒の伝来と一緒にお酢も伝わってきた

お酢自体の歴史はとても古く、一説には紀元前一万年前までさかのぼるとか。少なくとも、紀元前5000年頃のバビロニアでは、すでに干しぶどうなどからお酢が造られたという記録が残っています。これは、糖分を含んだ果物を放置していたら発酵してお酒になり、さらに、それを放置していたらお酢になったと考えられています。

お酢造りが日本に伝わってきたのは、それから比べるとだいぶ時間が経った、西暦400年頃と言われています。いわゆる古墳時代ですね。中国からお酒の技術と一緒に(あるいは前後して)、現在の大阪府堺市あたりにある和泉の国に伝わりました。そこから、日本のお酢造りは始まったとされています。

お酢を安定して造るためにはお酒を造らなければならない。したがって、お酒造りのしっかりとした技術と共に伝わってきたというのは面白いですよね。伝わったのは米酢の造り方で、以後、日本の酢は米酢が中心となります。

Ai Satoさんの投稿より

Ai Satoさんの投稿より

画像引用元:https://retty.me/area/PRE13/ARE2/SUB201/100000004332/2708184/

造られ始めたものの、当初は高級品で、漢方の一種として用いられたり、高級調味料として使われていました。

日本におけるお酢に関する最古の記述は、奈良時代の万葉集です。ちょっと紹介してみましょう。

「醤酢尓 蒜都伎合而 鯛願 吾尓勿所見 水ク乃煮物」

簡単に言うと「醤油とお酢を混ぜたものに、蒜(にんにく)をつぶして鯛を食べたい。水葵(水葱)のお吸い物はいらない」という、欲望丸出しの歌です。いやー、確かに、お吸い物よりは、鯛を酢醤油&にんにくで食べたいですよね。

その後、江戸時代までいくと味噌や醤油と共に庶民にまで普及し、一般的な調味料となります。

お酢は調味料として美味しいだけではなく、健康に良かったり、洗濯時に少量入れて色落ちを防ぐなど、さまざまな使い道があります。上手に使っていきたいですね。あ、ちなみに酢をたくさん飲むと体が柔らかくなるというのは都市伝説のようですよ。

【むむ先生のイチオシ調味料〜お酢編〜】

今回の話題で、お酢に興味を持った人にオススメしたいのは、東京駅はグランスタ内にある「飲む酢 エキスプレ・ス」です。

さまざまな果実酢から造られた、飲む用に調整された酢があり、多彩な味わいを楽しむことができます。ソフトクリームに好きな酢をかけて楽しむ、「酢フトクリーム」なんかもありますよ。

Chisato Fujinoさんの投稿より

Chisato Fujinoさんの投稿より

画像引用元:https://retty.me/area/PRE13/ARE15/SUB1501/100000729687/20017519/

■グルメ漫画の歴史をまとめた本『グルメ漫画50年史』を出しました!
50年にわたるグルメ漫画の歴史を、10年ごとに区切り、当時の食文化からどういう影響を受けてきたのか、そして食文化にどういう影響を与えてきたのかを記しました。
グルメ漫画に興味がある人だけでなく、食文化に興味のある人にも楽しんでもらえると思います。

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