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連載:日本一新しい酒蔵・上川大雪酒造の創業ストーリー

憧れを故郷で実現した天才杜氏!北海道に誕生した酒蔵が仕掛ける、前代未聞の”日本酒"町おこし

今回は、前編でご紹介した北海道に誕生した日本一新しい酒蔵「上川大雪酒造」の蔵元・塚原さんに引き続きインタビューをさせていただき、杜氏のお話や今後の展開について伺いました。

▼前編はこちら
「たとえ絵空事だと笑われても」 北海道に誕生した日本一新しい酒蔵"上川大雪酒造"の創業ストーリー

こんにちは。

熱燗DJつけたろうことライターのKENZOです。

普段はIT系のサラリーマンですが日本酒好きが止まらなくなり、日本酒ライターとしてこうして執筆させていただいています。最近は熱燗のレシピの研究に没頭し、実験を繰り返して熱燗の最適な温度を探したりしています。

日本酒といってもお酒ごとに味が異なります。米と水からできているものなのに、作り手によって全然味が変わってしまうのが不思議でもあり、日本酒の楽しい部分でもありますよね。

さて、今回の日本一新しい酒蔵が作る日本酒はどんなお酒だったのか?新しく誕生した蔵の”はじめての一本”は五味(甘・酸・辛・苦・渋)がしっかりと表現されたお世辞抜きの美味しいお酒でした。

その作り手である「日本一新しい酒造の初代杜氏」は、一体どんな方なのでしょうか……。

*「杜氏」とは・・・いわばお酒つくりの棟梁。お酒の味を大きく左右する現場の最高責任者。

目指すのは「飲まさる酒」

「では、別のお酒も飲んでみますか?」

▲上川大雪酒造株式会社の代表・塚原敏夫さん

ありがとうございます!

くいっ。

ごく



ん。

一号タンクと全然違うー!!こっちも美味しいー!!

これは「吟風」というお米で作ったお酒です。雰囲気が違うでしょ?
 

違います!こちらは軽やかで、綺麗な感じで甘めに仕上がってますね。

こっちの方が若干吟醸づくりになっていて、タンクからしぼりたてなので、まだガス感が残っているんですよね。まだ落ち着いてないかもしれないですが、あと数週間すると落ち着いてくると思います。

あああ、すぐに飲んじゃう。

杜氏の川端さんのお酒は、一言でいえば「飲まさる酒」を目指している。お米の良さがわかる食中酒。そういうお酒が川端杜氏の真骨頂なんです。

*「飲まさる」とは・・・北海道弁で「ついつい飲んでしまう」という意味。

失礼な言い方になってしまいますが、今まで一度も日本酒を作ったことのない蔵が、なぜこのようなお酒を造れたのでしょうか?

様々な要因がありますが、1つは杜氏の川端慎治さんの力が大きいと思います。

▲杜氏の川端慎治さん

杜氏さんの力ですか。そもそも、なぜ杜氏を川端さんに任せることにされたんですか?

日本酒は素材の味を超えられない

僕が酒蔵をつくった目的は、上川町や地域に多くの人間を呼ぶことです。だから、造った日本酒は、地元である北海道の特約店さんを中心に当面は販売していきたいと思っています。

上川町や地域に来る理由を作ることが目的で、地元に多くの人を呼びたい、わざわざ行ってでも飲みたい!と思ってもらえる北海道産酒米100%の美味しいお酒をつくりたい。その僕の想いに川端さんが全く合意してくれたんです。

▼自然豊かな北海道・上川町

「道産子が地元のために日本酒を造る」という点で意見が一致したんですね。

はい。川端さんが「それやりましょう!一緒に!」と言ってくれたから、早々に川端さんに杜氏をお願いすることに決めて、蔵の設計から経営計画まで一緒に立てていきました。

またもやドラマのような……!(涙)

杜氏になっていただいた川端さんは、北海道ではすでに名の知れた有名な杜氏さんです。北海道中に、川端さんのお酒を待っている人がいるんですよ。その証拠に、今回のMakuakeの支援者のおよそ6割が、実は北海道内の方なんです。

そうなんですか!すごい!

川端さんのファンは、飲み手だけではないですよ。実は、北海道の米農家さんからも応援して頂いています。「僕の米は川端さんのために作る!」「川端さんの酒に使ってほしいから俺は酒米を作るよ!」と言ってくださる農家さんまでいるんです。北海道内で間違いなく良い酒米を作ってくれる農家さんと契約して買わせていただいています。

出来たばかりの酒造の話を聞いている気がしない!(笑)

さらに、そういう農家さんと川端さんがタッグを組んでどんどん品質を上げていっている。こんな米にして、こんな米にして!と繰り返しね。川端さんはよく「お酒は絶対に素材の味を超えない」と言います。

例えば、美味しいマグロを仕入れて、そのまま切って食べたら美味しい。でも、元々質のよくないマグロを仕入れたらどんな腕の良いシェフが切っても美味しくない。お酒も同じですよ、と川端さんは言うんです。

日本酒の場合、素材である「水」と「米」が絶対的に大事ということですね。

そうなんです。だから、お酒の味はお米の出来が重要な要素なんです。今度できる新酒は絶対美味しいですよ!多くの川端ファンが待っていますので、生産者さんも気合が入っていると思います。

そんなたくさんのファンをもつ川端杜氏とは……一体どんな方なんですか?

伝説の杜氏への憧れから生まれた「至高の食中酒」

川端さんは元々、農口杜氏(*)時代の菊姫に入ったんです。

な、な、なんと!!!あの……!!!

*農口尚彦杜氏・・・「現代の名工」に選ばれた伝説的な杜氏。能登杜氏四天王の1人。手がけた代表的な銘柄は「菊姫」「常きげん」などがあり、今年3度目のカムバック宣言をしたことで話題となっている。

川端さんは北海道で生まれ、金沢大学の電気工学部へ進学し、その時に石川で飲んで衝撃を受けたという日本酒が、農口さんの当時造っていた「菊姫」だったらしいのです。「世の中にこんな美味しいお酒があったのか…!」と思ったそうですよ。

菊姫!!!それで、それで?

大学を中退して憧れの農口杜氏の酒蔵に入ったんです。

えっ!すごい行動力!

だから、川端さんの目指すお酒には、憧れの農口杜氏のお酒がベースにあるんだと思います。常温はもちろん、燗映えもするお酒を造り、フルーティなお酒は目指さない。世の中の流行を後追いするのではなく「飲まさる酒=食中酒」を求めていると思うんです。

▲酒造りをする川端杜氏

世の中の流行より、自分の理想とする味を目指しているんですね……!!!

そうなんです。川端さんは新前の頃、憧れの農口杜氏の蔵で修業し、その後、福岡・群馬・岩手など日本全国の蔵を回ったんだとか。だから、日本全国の日本酒の作り方を知っている。発酵させる温度、加える水の温度、日本酒は地域によって作り方が違うんです。北海道はタンクを冷やすときに雪も使えますし(笑)。

様々な技術を習得されていったんですね!

ただ川端さんは、「40歳になったら北海道に帰る」と決めていたようです。40歳になった時、北海道に帰ったら、当時の蔵の酒づくりは全く違っていた。

川端さんが周りと違う作り方をしていたら「お前そんなことをして、うまい酒にならなかったらどうするんだ!?」と、関係者から散々言われたらしい。それでも自分を信じて造った日本酒が、全国新酒鑑評会でいきなり金賞をとるんです(笑)。

か、か、かっこいい……!!!!!

惚れちゃうでしょ(笑)。その日本酒に使った酒米が、北海道産の酒米『吟風』100%。しかも、北海道に帰って初年度で、使い慣れた設備もなんにもない状態で取っちゃった(笑)。

全国で日本酒を造ってきた経験があるから、どんなことでも対応ができる。川端さんは、酒造りの天才だと思う。ですので、上川町に来て、この川端さんが造るお酒を飲んでみてほしいのです。

北海道から描かれる、新しい日本酒の未来

今日お話を聞いて、上川町まで行って日本酒を飲んでみたくなりましたが、なかなか北海道まで行くのが難しいという方もいますよね……?

実は、ダイレクトマーケティングも考えてはいるんです。地元優先とはいっても、全国に「北海道出身なんですけど」という人はいて、今回のクラウドファンディング(※Makuakeプロジェクトはすでに終了)でもたくさん支援をしてくれている。そういう人たちにも飲んでほしいじゃないですか。

本当は北海道に帰った時に買いにきて飲んでほしいですが、通販という形で多少枠を決めて売りましょう、というのは考えています。ただ、関東や関西の酒販店さんからの問い合わせも頂いているんですが、将来体制が整うまでは北海道中心の販売となる予定です。

出すとしても消費者ダイレクト!すごい徹底ぶりですね!

そう。いま、1年くらい先までの醸造予定を公開して、数か月先まで消費者が予約できるようなシステムを考えているんです。

酒造のタンクって全部ローテーションがあって、いつ仕込んで、いつ絞って……とスケジューリングします。その事前に決めたスケジュールが年間で流れていて、僕たちの酒蔵でいえば小さいタンクで初年度は年間約50本しか作らないと決めている。

そうすると、このタンクはいつ仕込んで、空になって、というのがローテーションで決まってきます。もちろん杜氏の判断で全てにおいて変更や調整を行い、最も良い状態で出荷できるようにします。

▼公開する醸造スケジュールの流れのイメージ

我々の蔵の年間予定数量ですと、北海道内だけでもすべてのご要望にお応えできないかもしれません。

それでも、少しだけダイレクトマーケティングでも販売しようと思っています。杜氏の判断で細かいスペックなど変更する場合はありますが、「こんな酒を作ろうと思っている」「こんな酒を何月頃に仕込もうと思っている」というところに、「じゃあ、自分は来年の1月のこれを予約」という感じで個人でダイレクトに予約を入れられるようにしようと思っています。

いやいやいや、すごい!!!もう、すごすぎて、さっきから「すごい」しか言えてない。

(笑)。

酒の仕込みスケジュールを公開して、それを個人がダイレクトに予約して、受注生産をする酒蔵なんて聞いたことない……!

そうでしょ(笑)。造り手にとってはリスクもあり面倒なことが増えますが、自分が飲み手なら嬉しいなと。

歴史がない蔵、初代蔵元だからこそ、年間を通して造るお酒が全て少量小仕込みじゃないと挑戦出来ないことをやりたいんです。

そんな僕たちのチャレンジを支援して頂いている北海道外の方にも、「飲まさる酒」を楽しんで飲んでいただければと思っているんです。

日本酒好きからすると、本当に応援したくなる挑戦です!僕も熱燗の活動をしているので、そういうのに合うお酒のタンクを予約できたりするんですよね。

今回造った試験醸造仕込2号は彗星70%で、アルコール度数15%の辛口なんです。燗して料理に合わせたら美味しいですよ!

おおお……!そういう自分の好みに合ったお酒を事前に知って予約購入ができるんですねー!なんなら予約購入したお酒を仕込んでいるところとか、絶対見に行きたくなっちゃいますね!素人の酒蔵見学は可能なんですか?

ええ、もちろんです。中には入れないようにしているのですが、見学デッキがあるので外から中の酒造りの様子を見ることができますよ。しかも、麹室(こうじむろ)にもガラス窓がついているんです!

ええ〜!!!すごい!!!(*)

*普通は仕込みの時期は作業を見学することはできず、ましてや麹室での作業は素人には絶対に見せてもらえない。

……あ、そうか!これも「上川町に人を呼ぶために作った蔵」だからこそなんですね!

▲上川大雪酒造の酒蔵

そうなんです。

僕も次の取材で、酒蔵を見学に行かせていただいてもいいですか?

もちろんです!是非来てください、上川町の魅力を直に感じていただきたいです!

▲上川町・黒岳の秋の景色

▲上川町・緑沼の秋の景色

※※※

前後編にわたり終始、穏やかに酒造ができるまでの壮絶なドラマをお話してくださった塚原さんでした。

すべては上川町に人を呼ぶために業界の常識をくつがえして実現させた酒造の設立。しかし、お話を伺っていて、目的が「日本酒をつくって儲けること」ではなく「酒蔵をつくって町おこしをする」ことだったからこそ、実現したのではないかと思います。

塚原さんから伺ったお話では、すでに町の方々は「うちの酒」と口にしてくれているようで、酒蔵の草刈りなどボランティアでたくさんの方々が協力してくれているそうです。

また、上川町のため、北海道のため、という純粋な想いだったからこそ、既に酒づくりをしている北海道の酒造組合からも反対がなかったのではないでしょうか。

「僕には”やる気”しかなかった」

これだけのドラマの実現に対して、そう言い切った塚原さんは本当に格好良かったです。「すべてはご縁がつながったから、運が良かったんです」と仰っていましたが、すべてのご縁を塚原さんがつなげたから新しい未来が生まれたんだと思います。

純粋な想いは人を動かし、歴史を変える。

北海道から描かれる新しい日本酒の未来が楽しみです。

塚原さん、ありがとうございました!次は上川町でお会いしましょう!

・上川大雪酒造の公式HPはこちら

【編集後記/Retty編集部より】
この記事では、北海道に誕生した日本一新しい酒蔵「上川大雪酒造」の蔵元・塚原敏夫さんに創業にいたるまでのお話を伺いました。
 
「上川町に人を呼ぶために酒蔵をつくりたい」
 
塚原さんが掲げたこの旗印のもと、杜氏の川端さんをはじめ、デザイナー、建築家など、その道の第一線で活躍する北海道民が集まる。上川町では、町役場から住民まで、町ぐるみでひとつの酒蔵を応援する。本当の意味で地域がひとつになり、未来の上川町を考えている姿がとても印象的でした。
 
Retty編集部では、上川大雪酒造の取り組みを地方創生の新しいモデルと考え、ライターのKENZOさんと共に今後も活動の様子を取材していきます!次回は、実際に北海道上川町へ訪れ、「杜氏」「デザイナー」「建築家」「町役場」など、上川大雪酒造の創業に携わった人々にお話を伺います!
 
本記事の制作にあたりご協力いただいた皆様には、この場を借りて改めてお礼を申し上げます。

(編集者・山田和正/ライター・KENZO【熱燗DJつけたろう】)

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