ライター紹介
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杉村啓
- 日本酒ライター、料理漫画研究家、醤油研究家。 日本酒の基本から歴史・造り方までを熱く語った『白熱日本酒教室』やタモリ倶楽部でも紹介された醤油の奥深さを書いた『醤油手帖』など、食に関する書籍を多数執筆。「むむ先生」として食のコラムや紹介を各メディアで担当。8月末には、グルメ漫画の半世紀を辿る新著『グルメ漫画50年史』を上梓。
Rettyグルメニュースをお読みの皆様、こんにちは。「むむ先生」こと、杉村です。
「むむ先生の"食"超解説シリーズ」の6回目は、調味料は調味料でも「今後、流行しそうな新たな調味料は?」というテーマです。
これが実に難しいのです。というのも、いわゆる基礎的な調味料は、今後なかなか登場しないと思われるからです。
たとえば塩に変わる塩っぽいものが生まれるかというと、そうではありません。塩に何かを加えた、「新しい塩」と呼べるような調味料なら可能性があるというわけです。
もともと調味料を重ねるのは、昔から行われていました。和食の世界でも「さしすせそ」という、砂糖、塩、酢、醤油、味噌をこの順番に入れるといいという指標がありましたよね。これも、ひとつの調味料だけでは補いきれない旨味や塩味などを、重ねていくことで生み出せるようにしているのです。
したがって、調味料と調味料を混ぜたものに新しい名前をつける、ということは珍しいものではありません。たとえば、お酢と醤油を合わせた酢醤油もそうと言えますし、マヨネーズにピクルスなどを刻み入れたタルタルソースや、ケチャップと混ぜたオーロラソースなども、調味料に何かを加えた新しい調味料と言えます。こちらなら、次から次へと生まれてきているのです。
というわけで、既存の調味料に何かを加えた新しい調味料を見ていくことにしましょう。
近年で最も大流行したのは「塩麹」
ここ数年で登場した新たな調味料で、もうあるのが当たり前になったのは「塩麹」でしょうか。塩と麹と水とを合わせて造る調味料で、肉や魚を美味しくしてくれる魔法の調味料として大流行しました。
実は塩麹にはふたつあります。現在多く広まっている塩糀は、大分県の糀屋本店のレシピからきているものです。「麹200g、塩60g、水250cc」で作るのが基本となっています。
もうひとつは、グルメ漫画『おせん 3巻』(講談社、きくち正太)で紹介されたもの。材料は「麹1升、塩3合」が基本となっています。
1升は10合だから、結局のところ麹と塩の割合は10:3となって、先程の糀屋本店のレシピと同じ分量と思うかもしれません。でも実は、ここで言っているのは「量」であって重さではないのです。「おせん」で紹介された方は、重さで表現すると「麹200g」に対しては「塩120g」となるのです。現在流行しているものの、ほぼ倍量の塩を使っているのですね。
糀屋本店の塩麹は、いうなれば「おいしい麹」です。塩分は少なく、甘酒のような甘さが前に出て、塩で味を引き締めています。麹によって肉が軟らかくなり、甘味が加わって美味しくなるのですね。その代わり塩分が低いので保存が利きません。
おせん版(ちなみに秋田県南部に伝わっている塩麹のレシピです)は、一方で「おいしい塩」です。塩分が強く、漬け物、つまり塩漬けにするのに向いています。保存が利くようになり、常温で1年でも2年でも、場合によっては3年、4年と熟成させることができるのです。
他にも注目の調味料はたくさんある
他にも塩と何かを加えた調味料はあります。2015年の夏に大流行した「塩レモン」が代表でしょうか。
煮沸消毒した保存容器に粗塩とレモンを詰めた、いわゆるレモンの塩漬けです。
レモンの爽やかさと酸味で、魚の生臭みをとったり、脂っこいものをさっぱりと食べさせてくれるという、万能調味料として話題になりました。自分で作ってみたという人もいるのではないでしょうか。
個人的に、2016年に流行するかなーと思っていたのですが、大ヒットとまでは残念ながらいかなかったように思えるのが、「トマみそ」です。
トマトと味噌の調味料で、作り方としてはトマトケチャップと味噌を同じ分量で混ぜたものです。そのままつけて食べてもおいしいですし、味つけにも使える万能調味料です。味噌とトマトなので栄養も豊富。うまく使うと減塩にもなるというのがうれしいポイントです。
ポテンシャルは十分にあると思っているので、もしかしたら今後大流行していくかもしれません。
今後、最も注目の調味料は?
個人的に、今最も注目しているのは、「食べるしょうゆ」の「サクサクしょうゆ」です。
実のところ、これは2011年に発売された「サクサク食べる香ばし醤油 オイルベース」だったものがリニューアルしたもの。サクサク食べる香ばし醤油は、食べるラー油ブームの際に、食べるフリーズドライ醤油として登場したのですが、スーパーなど販売側が食べるラー油の棚に置いたらいいのか、醤油の棚に置いたらいいのかよくわからないという理由で、いったん消えてしまったものなのです。
ですが、工場限定で販売したところ、大人気となり、そのおかげもあってか2017年にパウチパックでリニューアルされたのです。
このサクサク醤油、そのまま食べても美味しいのですが、マヨネーズや味噌に合わせると、サクサク感と香ばしい風味が加わって、今までに無い感覚の調味料になるのです。調理には使いにくいので、つけたりかけたりする調味料としての使い方が中心にはなりますが、その範囲では何につけてもおいしい、万能調味料と言えるでしょう。
機会があったら、是非食べてみてください。ただ、このサクサク醤油。オイルベースなので、カロリーがちょっと高いことには注意してください。
むむ先生のイチオシ調味料〜塩編〜
なんだかんだで、こういった新しい調味料は塩をベースにしているものが多かったりします。塩は人体に不可欠ですし、実はかなり多彩な種類があります。また、他のものと混ぜやすいこともあります。
そんな塩をたくさん味わうとしたら、どこがいいか。いろいろとあるのですが、今回は「ぽんしゅ館」を紹介します。
日本酒がたくさんの種類飲めることで有名な、越後湯沢駅と新潟駅にあるぽんしゅ館。実は、塩もたくさん用意されていて、味比べができます。醤油もたくさん売られています。近くに立ち寄った際には、是非行ってみてください!
- 利き酒 越乃室 ぽんしゅ館
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新潟県 南魚沼郡湯沢町 湯沢
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