ライター紹介
こんにちは。日本全国の居酒屋を巡り、梯子酒をしている酒場案内人・塩見なゆです。
吉祥寺の焼鳥「いせや」というお店、大衆酒場に興味を持たれている方ならば一度は耳にしたことがあるではないでしょうか。
昭和8年に精肉店として創業し、戦後はすき焼きと焼鳥をはじめた老舗です。吉祥寺駅前のいせや総本店と、井の頭公園横の公園店の焼鳥2店舗が有名で、吉祥寺を訪れた人には焼鳥の煙とニオイが強烈に印象づいているはず。
筆者の大衆酒場好きは何を隠そう、ここ「いせや」から始まります。
杉並で生まれた筆者は、両親が共にノンベエだったこともあり、ベビーカーに乗せられ家族で「いせや」に焼鳥を食べに行ったものです。微かながら、その頃の記憶があり、物心がついた頃には「いせや」の大ファンになっていました。
「いせや」は吉祥寺のランドマークといって過言ではない
東京を代表する観光名所の一つである井の頭公園。駅から公園までを結ぶ細い路地は吉祥寺らしくアンティーク小物やファッション系のお店が建ち並びます。
この路地の公園の手前に、そこだけ時間の流れが止まったような建物がありました。掘っ立て小屋を組み合わせたような建物で、狼煙をもくもくとあげ、まるで戦後すぐのよう。こちらは公園店で、現在は建て替えられています。
もうひとつ、井の頭通り沿いにもお店があり、こちらも2006年に建て替えを始めるまではまるで遊郭のような2階建ての木造の建物でした。
両店舗とも地元の老若男女に幅広く親しまれ、筆者のように親子で通う人も多い、まさにランドマークと言える存在です。
「いせや」の楽しみ方、それは“シューマイ”にあり
総本店のメニューはかなり絞られていて、焼鳥各種とシューマイ、とうもろこし、唐揚げ、しょうが焼き、煮込み、刺身、そして日替わりという顔ぶれ。
どの料理もそれぞれ好きな人がいて、昔から変わることのない洗練された内容です。焼鳥は1本80円と、昔から変わらない安さも大きな魅力。
焼鳥のいせやですが、必ず頼むサイドメニューは自家製シューマイ。早くて安くてクセになる美味しさ。
いせやで飲みたいと思っていらっしゃる方や、いつもなんとなく飲んでいたという方には、最初の注文で「赤星(サッポロラガービール大びん)とシューマイ」と頼むのがおすすめ。
筆者も呪文のように着席と同時にこのふたつを頼みます。もしかしたらビールよりも先にシューマイが届くかも?というほど素早くでてくるシューマイは、優しい甘さと旨味がついていて醤油をつけずに食べるのもあり。
煙たち込む店内で、赤星を傾けながらつまむシューマイは、私の原体験。(※もちろん赤星は両親が飲み、私は当時はジュースでした。)
一人で、二人で、大勢で
吉祥寺という街だからでしょうか。
この街は昔から若い女性の一人飲みも多く見かけますが、いせやはコテコテの老舗酒場でありながらも、若い二人組や慣れた感じで焼酎を口に運ぶマダムなど、女性客がありふれた感じで飲んでいます。
軒先の立ち飲みスペースは酒場慣れをした黒帯ノンベエやいぶし銀のお父さんたちの指定席。
はじめての人は店内の椅子席のほうに通されることが多いです。
一人で飲むときは焼台を向いたカウンターで、もくもくと仕事をこなすスタッフの方を酒のツマミに飲むひとときが不思議と楽しいのです。
まるで、酒場という風景の中に自分も溶け込んでいるような、酒場と同化しているような感覚になります。
二人で飲むときは一階のテーブル席へ。
活気ある店内に浸り酒場浴とでも言える雰囲気が楽しめます。
二階は座敷になっていて、数人でくるとこちら。
二階から吉祥寺通りを見下ろし、井の頭池から吹くちょっと煙たい風をうければ、気分はすっかり“ジョージ”の人。
焼鳥数本とシューマイ…そして、赤星とチューハイ
お通しなし。素早く出てくる自家製シューマイ(360円)が突き出し代わり。これでチビチビと赤星の大びん(550円)を飲み進め、焼鳥1本80円、つくねやカシラなど好きなものを3本程度焼きあがる頃に、酎ハイ(350円)をもらって40分ほどで千円ちょっと。
軽くちょいちょいと摘んで次に行く、そんな使い方ができるようになれば、あなたの吉祥寺巡りはより楽しいものになるに違いありません。
マニアックですが、ここは梅エキスが置いてあり、酎ハイや焼酎(甲類)にぽちょんと数滴垂らすのが“通”な飲み方。
プレーンな甲類をより飲みやすいものに変えてくれる魔法のエキスで、琥珀色になった焼酎と焼鳥の組み合わせは吉祥寺の先輩方が飲んできた味です。
【本日のお会計】
瓶ビール550円
酎ハイ350円
自家製シューマイ360円
焼鳥3本240円
お会計=1,500円
- いせや 総本店
-
東京都 武蔵野市 御殿山
居酒屋