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連載:塩見なゆのせんべろ酒場

恵比寿の老舗酒場たつやが「ホッピーファンの聖地」と呼ばれる理由

「言わずとしれたビールの街、恵比寿」

なんて思っていたら、友だちからは「オシャレな街でしょう?住みたいランキングによく入る。お酒と関係なんてあるの?」と言われてしまいました。

ちょっとお待ちを、お嬢さん。恵比寿の地名はビールの商品名に由来するんですよ。

ということで、年間を通じて日本中を飲み歩いている専業酒場ライターの塩見なゆです。

"専業"ですからね、しっかりとお酒業界のことを皆さんに知っていただかないと。

恵比寿とヱビスビールの切っても切れない関係

アンティークショップやビストロ、パブが立ち並ぶ恵比寿は確かにオシャレです。

キラキラ女子にぴったりな街なのも、とりあえずうなずきます。ただ、地名についてはしっかりお伝えしたい。同じみの「ちょっと贅沢なビール。」で知られるヱビスビールが由来であることを。

明治時代、東京で最初の近代ビール工場が、現在の山手線沿いに誕生しました。それまでこの界隈は、「目黒のさんま」で知られる鷹狩の原っぱでした。

この工場で製造したビールの名が「ヱビス」です。

ビールの生産には、水と麦とホップが必要です。原料を大量に運び込むには、当時は鉄道がほぼ唯一の手段でした。また、生産したビールも重たいので、出荷には鉄道が必要でした。

そうして、ヱビスビールを出荷するから、この駅は「恵比寿」と名付けられ、当初は貨物専用駅でしたが、やがて旅客化され、そうして現在の山手線の恵比寿駅の原型が完成します。

駅名が恵比寿なら、地名も恵比寿にしよう。そんな動きがあり、目黒の原っぱはやがて恵比寿と呼ばれ始め、そうして現在の渋谷区恵比寿となります。

神社だって、「恵比寿神社」となりました。

だから、恵比寿はビールによって開拓された街。「オシャレもよいですが、酒場もよいよね」ってことで、前置きが長くなりましたが、酒場の話へ。

恵比寿のザ・大衆酒場「たつや」

恵比寿はビール工場とともに発展し、アクセスの良さや工場近接によるビールが美味しいイメージから、多くの人々が夜な夜な飲みに集まる街に成長していきました。

現在でも多数の老舗酒場が変わらぬ風情でノンベエを迎え、大いに賑わいます。そんな中の一軒が、昭和51年創業の「たつや」

豚もつ串を食べさせてくれる駅前の大箱老舗です。一階は焼台を囲むように配された立派なコの字カウンターがあり、ザ・大衆酒場な感じ。

地階にも店舗があり、こちらはグループ利用で使いやすい今風の雰囲気です。

そんな日常のちょいと一杯に最適な「たつや」は、なんと朝10時から営業しています。恵比寿でも貴重なお昼酒スポットでもあり、昔は夜勤明けの人で賑わったんだろうなーと、往時に思いを馳せて飲むのもいいものです。

風情を楽しむならば一階がおすすめ。暖簾を潜ると、「いらっしゃい」と元気よく迎えてくれます。

カウンターに腰掛け、まずはお酒を注文。

やはり恵比寿ですから、ヱビスビールを……と、ここにはヱビスはなくて、ヱビスビール工場でかつて製造されていたサッポロ黒ラベルです。

現在ビール工場の跡地は、サッポロビール株式会社の本社もある恵比寿ガーデンプレイスになっていて、変わらずビールの街、サッポロ&ヱビスの街です。

ここに来たら、ぜひ食べてほしいおつまみは、煮込みと看板のやきとり。

煮込みは白味噌仕立てで、丁寧に下ごしらえされたシロとしっかりした豆腐の組み合わせ。

豚モツの香りはお酒を進ませます。クサミやクセがなく、素直に旨味を感じる味でほっぺも落ちそうです。

口に入れると溶けていくようなクタクタなシロの食感も心地良いです。

続いてもつ焼き。こちらでは「やきとり」と呼びます。

東京では、漢字で焼鳥とすると「鶏」、ひらがなでやきとりならば豚モツという、ぼんやりとした使い分けがあり、ここはまさに「やきとり」です。

鮮度バツグンのやきとりは作り置きをせず、毎日フレッシュなものを串打ちしています。

だから品切れもあたりまえで、飲んでいる横から売り切れていくことも。壁には、そんなやきとりの部位の販売状況が一目瞭然な電光掲示板があります。

売り切れになると、赤い「売切」が灯るアナログな仕組み。でも、これ、飲み屋の仕掛けとしてとっても面白いと思いませんか。

どの部位も大ぶりでハズレなしの美味しさ。初めてならば盛り合わせ5本を頼めばちょうどいい量です。

炭火なんて言わず、ガスでがんがん焼いて、もりもり頬張り「うん美味しい」。

正統派「三冷ホッピー」の美味しさを

さて、たつやはホッピーファンの間では知られた存在です。

実はここ、黒ホッピー誕生のきっかけとなったお店なんです。

もともとホッピーが人気だったたつや。ここでお客さんが「ギネスビール」を白ホッピーに注いで、オリジナルの黒ホッピーを楽しんでいたのを知ったホッピー社が考案。

平成4年に黒ホッピーが製品化されることとなりました。黒ホッピーのキッカケとなった「たつや」は、いまではホッピーファンの聖地のひとつでもあります。

そしてもうひとつ、黒ホッピーの誕生の要素となった「ギネスビール」と恵比寿の地の関係も深いんです。ギネスはイギリスのビールです。国内の販売は1960年代からサッポロビールがおこなっていました。

そう、恵比寿に工場を建てたヱビスの会社、サッポロです。恵比寿にヱビス、黒ラベルが多いのと同じようにギネスも浸透していました。

たつやが繋いだ恵比寿という土地のお酒の誕生物語。

氷なし、焼酎、ジョッキ、ホッピーの3つが冷えた通称「三冷ホッピー」と呼ばれる正統派の美味しさを、町の歴史を感じつつ、くっと背筋を伸ばして飲んでみませんか。

ライター紹介

塩見なゆ
塩見なゆ
酒場案内人/フリーランス。作家で飲兵衛の両親に育てられた生粋のお酒好き。毎日5軒以上はハシゴ酒、年間2,000軒の酒場を飲み歩いています。Web・TV等で酒場情報を発信中。
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