Rettyグルメニュースをお読みの皆様、こんにちは。「むむ先生」こと、杉村です。
ライター紹介
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杉村啓
- 日本酒ライター、料理漫画研究家、醤油研究家。 日本酒の基本から歴史・造り方までを熱く語った『白熱日本酒教室』やタモリ倶楽部でも紹介された醤油の奥深さを書いた『醤油手帖』など、食に関する書籍を多数執筆。「むむ先生」として食のコラムや紹介を各メディアで担当。8月末には、グルメ漫画の半世紀を辿る新著『グルメ漫画50年史』を上梓。
「むむ先生の"食"超解説シリーズ」の17回目のテーマは、「"ソース"って今更だけどどんなもの?種類は色々あるの?」です。
連載7回目のポン酢編と似たテーマですね。ポン酢と同じようにソースも、地域差がかなりある調味料です。
使ったことがない人がいないだろうと思われるソースですが、その種類はかなり豊富。「トンカツソース」「たこ焼き用ソース」「お好み焼き用ソース」など、さまざまな料理の専用調味料の先駆けともいえるのです。
今回は「ソース」について、話していきます。
「ソース」はいつ頃から伝わったのか
調理に使う「ソース」は、大きく2つに分けることができます。
ひとつは、料理を作る際の、調味料としてのソース。ホワイトソースや、トマトソースなど、かなりの種類がありますし、調理の基本要素でもあります。
もうひとつがウスターソースです。名前は、イギリスのウスターシャー州ウスターで生まれたことからきています。
日本に伝わったのは明治18年(1885年)。神戸の阪神ソースの社長である、安井敬七郎が造り始めたと言われています。最初はどうやって使ったらいいのかわからない人も多く、またどう売っていいのかわからなかったため、当時は販路のあった薬屋さんで売っていたそうです。
その後、安井敬七郎は明治25年(1892年)に、イギリスにある世界最古のウスターソース会社「リー&ペリン社」を訪れ、ソース造りを学び、本格的に生産を始めることになるのです。
ソースは「洋式醤油」とも言われ、だんだんと普及していきました。(現在の醤油の形である濃口醤油は、江戸時代に生み出されています)
法律上の「ソース」とは?
この「ソース」ですが、そもそもどういうものなのか…については、JAS(日本農林規格)によって明確に定められています。では、「ウスターソース類の日本農林規格」を見てみましょう。
ウスターソース類とは?
次に掲げるものであつて、茶色又は茶黒色をした液体調味料をいう。
1:野菜もしくは果実の搾汁、煮出汁、ピューレー又はこれらを濃縮したものに砂糖類(砂糖、糖みつ及び糖類をいう。以下同じ。)、食酢、食塩及び香辛料を加えて調製したもの
2:1にでん粉、調味料等を加えて調製したもの
野菜や果物などを煮つめ、砂糖、食酢、食塩、香辛料などを加え、調整して出来上がるソース。あの複雑な旨味や甘味は、野菜や果物からきているのです。
さらに見てみると、粘度の違いによって名称が分かれています。
つまり、中濃ソースや濃厚ソースは、よりドロッとしているかどうか…という、粘度の違いでもあるのですね。
ウスターソースは醤油に近い、さらさらな液体。中濃ソースは少しとろみのあるソース、濃厚ソースはさらに、でん粉を加えてドロッとしている、いわゆるトンカツソースとなります。
ソースの世界も西高東低?
スーパーで、ソースのコーナーを見てみましょう。関東を中心に、東日本で圧倒的に強いのが、ブルドッグソース、カゴメソース、そしてオタフクソースでしょうか。
関東だと基本的には中濃ソースが好まれ、また消費量が高くなっています。ブルドッグソースの中濃ソースは、関東に住んでいる人なら、一度は目にしたことがあるはずというぐらい、シェアを誇っています。
一方の関西では、地元ソースが豊富で、スーパーには所狭しとさまざまな会社のソースが並びます。
種類もさまざまで、ウスターソースや濃厚ソースを中心に、お好み焼きソース、串カツソース、焼きそばソース、どろソース(このあたりのソースは基本的には濃厚ソースです)などなど、たくさんあります。
もともとソースの発祥が神戸であること。さらに大阪の粉もん文化の発展と共に、ソースが細分化されていき、このような形になったのでしょう。
粉もんと言っても、焼きそばやトンカツ、そしてたこ焼きでは味がだいぶ異なります。とすると、それぞれに合ったソースを用意するということになります。
さらに大阪では、複数種類のソースを買ってきて、自分好みにブレンドする人も多いのだとか。粉もんをどうしたら美味しくできるかに傾ける情熱は、見習いたいところです。
ちなみに関東と関西の中間である中京圏では、こいくちソースという、ウスターソースの味わいを濃くしたものが広く使われています。
濃厚ソースのようにドロッとしていない、でも味わいは強いというものです。これは、たまり醤油や八丁味噌といった、旨味が強い調味料が好まれる土地柄からと考えられます。
ソースの保管はどうすればいい?
意外と難しいのが、ソースの保管場所です。ソースをよく見ると、「要冷蔵」とは書いていません。冷暗所に保管すればいいのです。
ですが、一度開封した後は、なるべく冷蔵保存の方がいいようです。さまざまな野菜や果物が入っているため、どうしても酸化してしまったり、色が濃くなってしまうからです。
ソースの色が黒いのは、メイラード反応という、糖分とアミノ酸が反応してしまうことから起きます。醤油の色が黒いのと同じ理由なのです。冷蔵保存をすることで、この反応を遅らせることができるのですね。
というわけで、開けるまでは冷暗所で、開けてからは冷蔵庫で保管をし、なるべく早く使い切るのがいつでも美味しくソースをいただくコツと言えます。
【むむ先生のイチオシ調味料〜ソース編〜】
えっ、あの世界的なブランドもソースを造っている!? と、一瞬勘違いしてしまいそうなのが、こちらの「HERMESソース」です笑。英語読みで、「ヘルメスソース」ですね。
町工場で造っているため、生産量はあまり多くなく、基本的には業務用や小売りが中心で、通販は1ヶ月待ちと人気な商品。大阪の粉もん文化、ソース文化を知るためにも、是非一度試してみてください。
■漫画で解説!日本酒教室
日本酒に興味はあるけど、「なんだか難しそう」「どれを選べばいいのかわからない」……。そんなあなたのための“日本酒教室”、はじまりはじまり!詳しくはこちらから http://sai-zen-sen.jp/comics/twi4/nihonshu/0002.html
■グルメ漫画の歴史をまとめた本『グルメ漫画50年史』を出しました
50年にわたるグルメ漫画の歴史を、10年ごとに区切り、当時の食文化からどういう影響を受けてきたのか、そして食文化にどういう影響を与えてきたのかを記しました。
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