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連載:あの人気店の第1歩!原点を探る「本店巡礼」

天下一品総本店の「牛すじ・細麺・ニラキムチ」。未知との遭遇こそ本店巡礼の醍醐味

チェーン店ののれんには安心感と退屈がつきまとう。だが外食における最高の喜びは、いつも予定調和の外側からやってくる。品書き、卓上調味料、そして出された品――。失敗上等! 「いつもの!」と言って安心できる店や品頼みでは味わえない愉悦が冒険の先にはある。

「天下一品」。2018年3月現在、全国に240以上の店舗を構える(少なくともこのサイトをご覧になる方なら)誰もがご存じであろうラーメンチェーンである。この店の一杯は創業者の木村勉氏が1971年、京都の銀閣寺周辺で屋台を構えたところから始まった。

この店の特徴はこちらもおなじみ「鶏と11種類の野菜」でとった「こってり」スープ。ほかにも「あっさり」やこってりとあっさりとのブレンドの「こっさり」(メニュー上の呼称は「屋台の味」)もある。ディープなファンの間では「直営とFCではスープの味が微妙に違う」など都市伝説めいた噂も飛び交う。

ならば、行かねばなるまい。京都・北白河の総本店に。直営、FCを問わずいかなる飲食店でも総本店の味こそが至上のはず。今回は、総本店&直営店限定モードの注文をしていくのだ。

まずは東京でも、高円寺や神楽坂などの直営店で見かけるこれ。

鶏のチューリップ唐揚げ

鶏のチューリップ唐揚げ

直営店のメニューに掲載された「鶏のチューリップ唐揚げ」はもちろん総本店でも注文できる。抱き合わせアイテムのビールだって欠かせない。勢いで早くもラーメンまで注文してしまう。

まず最初にビールが運ばれてきた。その後、供されたチューリップに食らいつく。サクッと弾ける衣の内側から、心地いい弾力の肉が顔を出す。肉を歯でとらえて、骨から引きはがしてはビールをクイッ……。思わず「クーッ!」という声が漏れそうになってしまう(いや、漏れた)。そしてこのルーティーンを何度か繰り返した頃、一杯目が到着した。

総本店限定の牛すじラーメン

総本店限定の牛すじラーメン

甘辛く炊かれた牛すじがラーメンの上に鎮座している。もちろんスープは「こってり」。天下一品のスープは店舗によって濃度が違う印象だが、さすが総本店はスープが濃い。音にするならトロッではなくドローリ。甘辛い牛すじの味も強いが、濃度が濃いスープ相手だと思いのほかバランスがいい。濃度こそポタージュのようだが、包み込むようなやさしい味わいがある。

そんなことをつらつらと考えていたら、2杯めのラーメンが運ばれてきた。こちらもいつもの「こってり」。ただしせっかくの総本店、ふだん行く店舗にはない細麺を注文する。

細麺。とはいえ、博多ラーメンのような低加水のザクザクした食感とは一線を画す

細麺。とはいえ、博多ラーメンのような低加水のザクザクした食感とは一線を画す

箸で麺を持ち上げる。確かに細い。細いが九州の麺とは違って「ちゅるん!」と音が聞こえてきそうなみずみずしさがある。一瞬「伸びないか」と不安がよぎったが、それは杞憂だった。つるんと舌触りよく、最後までコシもしっかり。僕自身の好みでは本来、踊るような太麺の食感が好みだが、この細麺は細麺らしからぬダイナミックな食感。少し多めに箸に乗せてたぐる。実に楽しい。

スープにもよくからむので、普通の麺より口のなかに多めのスープを運んできてくれる。麺とスープのバランスが変われば、味も変わる。未体験領域ならではの面白さがある。もっとも思いのほかスープの減りも早い。中盤に差し掛かる前に"味変"アイテムも試しておかねば!

天下一品と言えば、ラーメンの"味変"用に卓上の辛子味噌と、近年では冷蔵庫保存となり、要注文(無料)となったにんにく味噌という2種類の薬味がある……が、総本店など関西の一部店舗ではこういうものが用意されている。

一見、全国で見かけるにんにく味噌かと思いきや

一見、全国で見かけるにんにく味噌かと思いきや

フタを開けるとニラが姿を現した

フタを開けるとニラが姿を現した

俗にニラにんにく、ニラキムチ、壺ニラなどと呼ばれる、浅漬けの辛味ニラだ。関東の天下一品ファンになじみのあるにんにく味噌ほどの強烈な香りではない。だが、ニラ独特の香りとしゃきっとした繊維の食感が「こってり」にアクセントを与え、麺はますます胃袋へするすると吸い込まれていく。

いつものような安心感がありながら、いつも以上のクオリティがさも当然のように提供される。守りの予定調和などありえない。天下一品の総本店にはそれだけ深掘りできる"素材"が隠されている。

ライター紹介

松浦達也
松浦達也
ライター/編集者。「食べる」「つくる」「ひもとく」を標榜するフードアクティビストとして、テレビ、ラジオなどで食ニュース解説を行うほか、『dancyu』から一般誌、ニュースサイトまで幅広く執筆、編集に携わる。著書に近著の『新しい卵ドリル おうちの卵料理が見違える』ほか『家で肉食を極める!肉バカ秘蔵レシピ 大人の肉ドリル』(ともにマガジンハウス)など。
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