なぜ、人はこんなにも焼き肉に惹かれるのか。
肉が好きだから?ただ焼くというシンプルな調理法だから?それともみんなでワイワイ焼くというプロセスまでも楽しめるから?
今や、国民支持率NO.1メニューといっても過言ではないメニュー「焼き肉」の極め方を、焼肉マニア小関氏が語りつくすこの連載。
ライター紹介
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小関尚紀
- リーマン作家/MBA/Yakiniku Journey(焼肉探検家) サラリーマン、作家。早稲田大学大学院修了。経営学修士。『焼肉の達人』(ダイヤモンド社)、『世界一わかりやすい「ゲーム理論」の教科書』(KADOKAWA 中経出版)など単著5冊。趣味の焼き肉は、予約困難店含め200店舗以上を訪店。日々、セクシーミートを探索しつつ、美しく、美味しい焼き方を独自に研究している。
2018年後半 タレ焼肉が流行する!と予測
ワタクシはYAKINIKU JOURNEY として、焼肉店を平均すると週2以上のペースで巡っております。
最近、焼肉ブームの潮目が変わってきたと思えてなりません。
理由は、タレ焼肉にブームがキテいると思えてならないからです。
何を今さら、タレ肉?原点回帰か?というお言葉はごもっともですが、焼き肉ブームの歴史を俯瞰してみると、実は近年の焼き肉ブームの中で、一度もタレ肉がブームになっていないのです。
では、改めて近年の焼き肉及び牛肉グルメブームを整理し、タレ肉ブーム予測を紐解いてみましょう。
連載一回目の【いまの焼き肉ブームは「希少部位食べ比べ」から始まった〜国民支持率No1メニュー"焼肉道"の極め方〜】にも記載しておりますが、近年の焼き肉(及び牛肉グルメ)ブームは以下の通りです。
・2005年 恵比寿・焼肉チャンピオンが部位を細分化して提供し、食べ比べることでブームに
※部位の細分化は過去に他の店でも展開していますが、ブームの火つけ役は焼肉チャンピオンと言っても過言ではないでしょう・2007年 青山・よろにくの登場により、焼き肉のコース化
・2009年 ホルモンブーム
女性のホルモン好き「ホルモンヌ」増殖・2012年 赤身肉ブーム
・2013年 塊肉ブーム
・2014年 熟成肉ブーム
BSE問題で一時ストップ気味になっていた米国産牛が再度輸入されるようになりWolfgang’s Steakhouse(東京・港区六本木)をはじめ、アメリカの人気ステーキ店がこぞってオープン・2015年 牛カツブーム
牛カツもとむ村、あおな等を中心にレア肉の旨味を堪能できると注目される・2016年 ローストビーフ丼ブーム
高田馬場レッドロックから、ローストビーフの山盛りがリーズナブルに。2015年の生肉規制により、レア"目"の肉が人気に・2017年~現在 牛肉×高級食材(雲丹、牡蠣など)ブーム
牛肉と高級食材の組み合わせが焼き肉店でも流行
焼き肉の凄いところはブームの連続性があることです。
一般的にグルメはブームが訪れても、ずっと継続されるのは難しいことです。理由は、流行しすぎると消費者は飽きるからです。
焼き肉(及び牛肉グルメ)の凄さは、同じ牛肉を使って、色んな部位、別の食べ方が次々と流行し、結果、ブームが継続されているという非常に稀な点。
私はこの現象をブームの連続性と呼んでいますが、ブームの輩出源がそれぞれ違っているのも焼肉のポテンシャルの高さであり、希少性です。
先述の通り去年から今年にかけては、焼肉業界で「肉×高級食材」を合わせて食べるということが流行しています。
例えば、牛肉×雲丹、牛肉×牡蠣。牛肉をのせた雲丹めしに、牛肉雲丹寿司、牛肉牡蠣寿司、牛肉と蒸し牡蠣・・・
これに合わせる牛肉には当然、高級な和牛で上質な部位になります。旨味の塊同士の食べ合わせなので、食べ方は塩や醤油など非常にシンプルな形です。
「牛肉×高級食材」からのアンチテーゼがタレ焼肉が流行する理由
目新しさというのは、数回消費すれば満足します。最初の出会いに価値を置いているからかもしれません。必需品の世界なら、改良につぐ改良の連続性で成長するのかもしれませんが。
そして、焼肉ブームの陰の立役者は、間違いなくインスタグラムだと思います。
インスタグラムというメディアの成長と共にブームを作り出してきた焼き肉ブームにあっては、誤解を恐れずに言うと、焼き肉はインスタ映えにも表現される優良なメディアコンテンツなのかもしれません。
その証拠に「#肉スタグラム」「#フォトジェ肉」というハッシュタグの存在でしょう。
焼き肉をメディアコンテンツとして考えるのであれば、必需品グルメの改良型のブーム発信ではなく、アンチテーゼ型のブーム発信が考えられます。
アンチテーゼ型とは、エンターテイメント業界と同様、所謂、逆張りの考え方です。一方の極から反対の極へ振れるのがアンチテーゼで、エンタテインメントの流行は往々にして反動から反動へ振れるということです。
つまり、アンチテーゼ型から鑑みると、上質な部位も味わいも逆に触れることで流行する可能性が高いということになります。
比較的安価な部位で、濃い味と言えば、タレ肉になります。並みカルビのタレ味が思い浮かぶでしょう。
「タレ肉というのは、焼肉の定番。昔からあるじゃないか?」
ご意見、御もっともでございます。ただ、上記の表にあるとおり、近年の焼肉ブームにおいて、一度も焼肉ブームの土俵に上がっていないのが"タレ肉"なのです。
塩焼肉にくらべると、煙モクモクになりがちなタレ肉。女性からは敬遠されるのではないか?と思っていましたが意外や意外。自催の焼肉会では嫌がることなく、初めてなのか、久しぶりなのか、煙モクモク焼肉を楽しむように女性メンバーにも多数、参加頂きました。
これも焼肉のブームの連続性により、焼肉自体が男女問わず、長期的に地位を得ている証拠なのかもしれません。
比較的安価な肉がブームになるのか? 可能性は十分です。
過去にホルモンヌが増殖した時のホルモンブームがありました。ホルモンは正肉と比較しますと、比較的安価で楽しめます。
焼肉本来の楽しみ方の1つであるタレ肉と相性の良い、ご飯の組み合わせにもスポットライトを浴びせてみたい。牛肉×高級食材の、次なる焼肉ブームの連続性を継続させる主役は、「タレ肉の焼肉」になる可能性が大なのです。
タレ肉が美味いお店
浅草に古くから営業する焼肉店「大成苑」
昭和ノスタルジー焼肉にともいうべきか、看板は新しいが、店内はレトロの雰囲気。
ここで食べるべきは、マキロース、カルビ、ハラミ。
湖のようなタレにつかった焼肉はご飯との相性抜群。焼くときは勿論、一度焼いてからタレを再度つけて焼く、二度漬けがOKです。
安価で新鮮なお肉を味わえる「ホルモン焼 もんもん」
京急北品川駅から徒歩5分。ホルモン焼もんもんは、改装されて清潔感溢れる店内。
佐賀牛も扱うが、市場から状態の良い肉を仕入れており、安価で非常に美味しい。
タレには浸かっていないが、程よいタレ味で、白飯が止まらない。
ロンブー淳さんもオススメ!バッドロケーションに影響を受けない住宅街の店
小田急線・祖師谷大蔵駅から徒歩15分。内観がやや古めかしいですが、看板が綺麗な住宅街のお店「梨光苑」。
先日でラジオで共演した際、ロンドンブーツの田村淳さんにオススメされて早速訪問。
上カルビ、上ロースはメニューにあれど、ここはタレにたっぷり浸かった並みのカルビとロースと大盛りご飯でしょう。
オススメの、すじからし肉もピリ辛でご飯に合います。〆は、つけ麺。
訪問時、並みカルビタレ、並みロースタレ、上ミノ、すじ辛子肉、上タン塩に大盛りご飯+普通ご飯をたっぷり食べてから、〆に挑みました。
この時点で、腹十二分目です。確かにお腹はパンパンでしたが、さっと食べれました。
そば粉が入った冷麺は固めで非常に弾力があるのですが、つけ汁が冷たく、ザル蕎麦のような感じで食べるので、美味しく頂きました。
ごま油風味のつけ汁と冷麺は、夏場の〆には最高でしたね。タレ肉の美味しいお店は、実は〆が美味しいお店も多いのです。
著書「焼肉の達人」、絶賛発売中!
焼き肉業界は、従来からの"自分で肉を焼く店2と、"高級店で焼いてくれる店"の二極化が進んでいますね。それでもまだまだ自分で肉を焼く店が多いと思います。
今月発売になった小関尚紀『焼肉の達人』(ダイヤモンド社)にも書きましたが、「炭とガスの火の位置を知る」「部位ごとの焼き方を理解する」ことは重要だと思います。この理解をするだけで、美味しいお肉に、たどりつけるのではないかと思います。その極意をまとめました。
そう、焼肉を巡る旅はまだまだ終わらない。