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連載:コーヒー男子図鑑

平成生まれの昭和スタイル!ネルドリップで淹れた深煎りをこよなく愛する情熱家マスター

Rettyグルメニュースをお読みのみなさん、こんにちは。Retty TOP USERで生粋のコーヒーマニア、Kaya Takatsunaです。

コーヒー男子図鑑、第6回目は、東京・初台にある「G☆P Coffee Roaster」のオーナーであり焙煎士の実豪介(じつごうすけ)さんの登場です。

数年前から浅煎り中心のコーヒーを提供するお店が増えるなか、実さんは2017年7月に深煎り専門店をオープン。

男の隠れ家のようなセンス溢れる店内で、ヴィンテージの直火型焙煎機で五感を駆使し、毎日焙煎しています。

私も深煎りが飲みたくなったら必ず立ち寄る大好きなコーヒースタンドですが、最近ネルドリップ(ネルという布製フィルターを使う抽出方法)のメニューも登場したので、さらに「G☆P Coffee Roaster」の魅力を楽しめるようになりました。

【コーヒー男子ファイル 06】
名前 :  実豪介 Gosuke JITSU
誕生日 : 10月1日 (コーヒーの日)
出身地 : 兵庫県加古郡稲美町
趣味 : バイクに乗ること、散歩、銭湯巡り
会えるお店 : G☆P Coffee Roaster

――実さんがコーヒーに目覚めたのはいつですか?

19歳の頃だから、7年前くらいですね。最初はコーヒーっていうより、お客さんがそれぞれ違うことしてるカフェの空間とか、コミュニティが生まれる独特の雰囲気が好きだったんですよ。

――ご出身は?

兵庫県です。神戸のカフェや喫茶店で働くようになってから、コーヒーの面白さを知りました。

当時は地方にはまだないような、カッコいい東京のコーヒー屋さんばっかり雑誌に載っていたので、いつか東京に出たいと思っていました。

――東京には何がきっかけで出てきたのですか?

僕すごく昭和スタイルなんですけど、働きたくて10通くらい手紙と履歴書を書いて、自分が写真で見てかっこいいなと思うお店に送りまくったんですよ。

――メールじゃなくて手紙!本当に昭和スタイルですね。

そうです。しかも僕、募集もしてないのに送っていたんですよ(笑)。返事が来て面接してくれたのは2つくらいで、 結局全部ダメでしたね。だからすぐに働けなかったんです。

――それで、どうしたんですか?

とにかくきっかけを作ろうと、もともと知り合いだった初台にある「HOFF」というレストランのオーナーさんにお願いして働かせてもらって、そこで働きながら色々探しました。

――最初に働くことになったコーヒー屋さんはどこですか?

横浜・青葉台の、カブトムシとか蛍がいるような自然の中にある「ブルードアコーヒー」っていうお店です。

僕の師匠でもあるオーナーさんは、サーファーでもあるので、店内にはボードが飾ってあるようなカッコいいお店でした。深煎りの豆ばっかり焼くお店でしたね。

――そこはどうやって見つけたのですか?

先輩が近くにガレージを持っていて見つけてくれたんですけど、とにかく気に入ったので通いまくって、オーナーに「焙煎やりたいっす。お金とか本当にいらないんで手伝わせください」ってお願いしたんです。そこがもう昭和スタイルですよね。

――いや、昭和でもなかなかいないと思います(笑)

むしろマスターの方が、「焙煎だったら普通に教えてあげるよ。やり方見ていいよ」くらいのノリだったんですけどね。それで勝手に行って、ハンドピック(状態の悪い豆を手で一粒ずつ取り除く作業)とかを手伝ってたんですよ。

それからしばらくして、お給料もらって働かせてもらえるようになりました。それからは、出勤時間の2〜3時間前に行って、自分の焙煎をやらせてもらって、時間になったら働いて、夜はレストランで働いてを繰り返す毎日でした。

――では焙煎はそこでしっかり学ばれたのですね。

でも、焙煎の仕組みや流れを教えてもらったら、「あとは全部やってみな」って感じなので、数をこなして感覚を掴んで自分のものにしていきました。

――それでこれだけの焙煎ができるのはセンスですか?

やっぱ、豆と喋れるんで(笑)。「今がいいよ!」って聞こえるんですよ。

――いつ頃から豆の声が聞こえるようになりました?

最初は聞こえませんでしたね。「今だ!」と思ったタイミングであげたらめっちゃ深煎りだったり、まだ中煎りだったりしましたけど、何度もやっていくうちに聞こえるようになってきました。豆の表情と香りにいつも注目しています。

――浅煎り中心のお店が多い中、深煎り専門店を今の時代にオープンするのはとても珍しいと思うのですが、実さんにとって深煎りの魅力とはなんでしょう?

深煎りは、古き良き日本のスタイルだと思います。今の時代、豆自体がすごく質の良いものが多いので、 深煎り独特のキャラメルのような甘さが出る焙煎を大切にすると、コーヒーを淹れた時に極めていい甘味が出せるんです。

僕は、苦味と甘みのバランスが良いコーヒーが好きなんですよ。コーヒー飲んでるなぁって感じがするんですよね。

――ご自分の好きな味をしっかり表現されているのですね。ところで店名のGPの由来は?

僕あだ名が「ジプシープリンス」だったんで、頭のアルファベットをとってGPってなったんです。

――確かにジプシーっぽいですけど、プリンスはどこから来たんですか?

当時僕、働き過ぎて目の下にいつもクマがあって、それが歌手の…プリンスのメイクしてる顔に似てるって言われたんです。

――そっちのプリンスでしたか(笑)。オープンして7月でちょうど1年経ちましたが、大変なことはありますか?

焙煎機は25年前くらいのヴィンテージで、作りが簡単でめちゃくちゃマニュアルなんですよ。

火加減をいじって毎回ブレずに同じ焙煎しないといけないんで大変ですけど、それも楽しいです。やっぱりなんでもマニュアルが面白いですよね。

――ところで、ネルドリップもメニューに加わったのですか?

今までペーパーだけだったんですけど、最近始めました。もともとネルが好きだし、やっぱり深煎りはネルですね。

喫茶店のネルドリップは800円〜900円するじゃないですか。でもここはスタンドなんで500円で飲んでもらえるようにしています。

――ネルはやっぱり違いますか?

僕は、お客さんに説明するとき「宇宙みたいです」って言います。なんかこう、深みの底がないっていうか、終わりがないんです。

――なるほど、興味深いです。お店に流れている音楽とも合いますね。実さんは音楽もお好きですか?

もちろん。レゲエが好きですけど、最近は50〜60年代のアメリカのジャズとか、ソウルとかも好きですね。

深煎りのコーヒーに合うと思いませんか。マーヴィン・ゲイとか、ナット・キング・コールとか。

――いいですね!お店の雰囲気も音楽も、焙煎具合も淹れ方も、全てが好きなもので繋がってますよね。これがジプシープリンスワールドでしょうか?

まぁ自己満ですよね。自分が好きなコーヒー出して、自分が好きな音楽かけて、誰に合わそうっていう気もなくやってるだけなんで。

――でも、他を排除するのでなく、実さんの誰でも迎え入れてくださるオープンなお人柄も魅力だと思います。

僕、閉ざさないですね。写真とか名前が一人歩きしてしまっているのか、見た目で怖がられるし、尖ってるように見られがちなんですけど、聞かれればなんでも答えますよ。

――実さんに憧れて、弟子になりたいって人いるんじゃないですか?

たまにいますよ。でも僕が昔やってたくらいの熱意がある人はいないですね。

――それは、どこにもいないと思います(笑)

いやぁ、最近の子って遠慮するんですよ。

――実さんも十分最近の子ですから(笑)

若い子に「今日焙煎やるけど来る?」って聞くと、「え!いいんすか?めっちゃ来たいです」ってなるんですけど、自分から進んで言ってくる子はいないですね。

でも僕が焙煎教えるって言っても「豆と会話しろ〜」しか言えないですけど。

――笑!天才肌ですもんね。最後に実さんのこれからの夢を聞かせてください。

いっぱいあります。まずは、自分の扱っている豆の生産国を転々と回りながら、雑貨とかアクセサリーとかを集めて豆と一緒に説明しながら売ってみたいと思っています。

コーヒーと一緒に、自分の経験をお客さんに話せたらもっと楽しいし、想像しながら飲んでくれるんだろうなって。

それと、いつかアメリカでも喫茶店やりたいんですよ。ブルースの流れる店内でアフリカ系のアメリカ人がシャツに蝶ネクタイして、ネルドリップしてる姿とか見てみたいですね。

***

イベントなどで知り合った人たちなどを通じて、今では多くのレストランやカフェにコーヒー豆を卸している実さん。

「豆を納める時は、息子や娘が嫁ぐみたいな気分。豆一粒ずつ全部に名前つけたいくらい(笑)。そのくらい大切なものなので、その気持ちをわかってくださるところに卸したいですね」

と、生き生きとお話される姿からは、コーヒーに対する並々ならぬ愛を感じることができました。

ちなみに、上京した当初働いていたNYスタイルのレストラン「HOFF」でも「G☆P Coffee Roaster」の豆を使ったコーヒーをいただけます。

コーヒーを通した人と人との繋がりって素晴らしいなと思いました。

次回のコーヒー男子図鑑もお楽しみに!

(Photo: Atsuko Tanaka)

ライター紹介

Kaya Takatsuna
Kaya Takatsuna
Retty TOP USER。美味しいコーヒーがあるだけで幸せな人。コーヒー好きすぎて、コーヒーの味を評価する国際資格”Qグレーダー”まで取得してしまいました。地元で川越コーヒーフェスティバルを主催してます(^^) アイスクリーム、あんこ、チョコレートも中毒レベル。
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