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連載:日本酒ライターKENZOの「1/3の純情な吟醸」

「日本酒は絶対熱くしろ!」酒蔵公認の“熱燗マスター“が熱燗にこだわり続けるワケ

初めまして。ライターのKENZOと申します。

真ん中が私です。

私は年間で300種以上日本酒を飲むほど日本酒が大好きで、それが高じて現在は飲食店で日本酒のメニューや仕入れを担当したり、日本酒と料理のイベントを毎月開催しております。

そんな私も基本的に日本酒は冷たくして飲んでばかり。ワイングラスで飲むような香りの良いフルーティな日本酒が好みでした。
熱燗に対しては「アルコール臭い」「安酒が温められてる」など良いイメージを持てていませんでした。強いて言えば「冬に飲みたいよね、あったかいし」くらい。

しかしある日、そんな私のイメージが180度、いや、熱燗で天地反転するくらいの衝撃を受けたお店があります。私の中で熱燗はもとより、日本酒に対する概念が変わりました。

熱燗ってこんなに奥深いのか・・・! と。

衝撃の出会いから1年、今では熱燗が日本酒で一番好きな飲み方です。

今回は、その衝撃の出会いをくれたお店へ熱燗とはなにか? なぜ熱燗にこだわるのか? 熱燗の真髄を聞くため取材に伺いました。

熱燗の専門店・・・?

そのお店とは渋谷区の神泉駅から細い路地に入ってすぐのところにある、
「燗酒Bar Gats」(かんしゅバー ガッツ)さんです。

燗酒Barとあるようにこちらのお店は熱燗の専門店です。お店で提供されるお酒は日本酒の熱燗ばかり。

そして、今回取材をさせていただくのはマスターのマサさんです。

(見た目はちょっとコワモテですが心の優しい方です笑)
マサさんはプロのジャズミュージシャンでありながら、ここ「燗酒Bar Gats」のマスターでもあります。年間1,000種類以上の日本酒を飲み、その中から厳選したものをお店で提供しています。

熱燗の専門店を開いたきっかけとジャズの深い関係

ー本日はよろしくお願いいたします。まずは熱燗の専門店というのは珍しいと思うのですが、どのような経緯でお店を始められたんですか?

マサさん(以下同じ):「もともとはモルトウイスキーのバーを開いていたんよだね。俺はミュージシャンで職業が遊び人みたいなもんだから、酒も飲めば夜更かしもする、女遊びもすれば、タバコも吸う。なんでもやってきた」

(プロのジャズミュージシャンのマサさん)※Facebookより
「そんな生活でいろんな酒飲んでる中で、翌日一番カラダにダメージが少ないのが日本酒だなって気付いたんだよ。それでオープンして2年目で店の酒をウイスキーから純米酒に全部変えたんだ」

カラダを気遣った結果だったんですね。

「ライブで全国を回ってたんだけど、各地で手厚く迎えてくれるじゃない。そうするともう帰れない(笑) ライブハウスのマスターとずっと朝まで話して、寝ずに次の街へ行って歌わなきゃいけない。そんな時はもう声もボロボロだし、体調も最悪。それを十何年続けてきた」

それはアーティストとしてしんどそうですね…。

「もういい加減にしてくれ! と思っていたら、仲の良い食道楽なアーティストの方が『純米酒の燗が最高におもしろい』と教えてくれて。それがきっかけとなって、3年目から純米酒の熱燗オンリーの専門店にしたんだよ」

福島県の酒蔵仁井田本家が紹介された冊子。マサさんは現在、福島で300年以上続く仁井田本家という酒蔵公認のお燗番でもある。「お燗番」とは飲食店などで熱燗を専門で受け持つ人。マサさんは300年続く酒蔵で初の公式お燗番になったそう。

「熱燗は”調理”だ」熱燗で無限に広がる日本酒の世界

熱燗について教えてもらってからすぐに現在のような燗酒の専門店になったんですか?

「いや、純米酒の専門店の時にも熱燗のお店をやりたいなとは思ってた。けどどうしても満足のいく熱燗にはならなくて。それまで熱燗は家でしかやってなかったんだけど、いろんなお店に飲みに行って見て盗んで、試行錯誤をくりかえした。それで半年くらい経った時に、ただ温度を上げればいいだけじゃないと気付いた。料理でもただ沸騰させて出汁を取るわけじゃない。日本酒も一緒だ、と」

湯気がゆらめく熱燗用具がならぶ

「そこから日本酒を『お酒』ではなく『食材』として捉えるようになった。『熱燗は”調理”』だと」
熱燗は”調理”? もう少し具体的に伺っていいですか?

お酒一本一本に個性があって、熱燗のやり方もすべて変わるということだね。『お酒=食材』と捉えて、それを最適な状態で調理する。お肉と一緒。”部位”や”熟成度合い”によって焼き方や食べ方が変わるでしょ? 高温で焼いたほうがいいものもあれば、じっくり火を通したほうがいいものもある。純米酒も一本一本それぞれ熱燗のつけ方を変えて、お酒を調理する」

銅の熱燗をつける器「ちろり」に純米酒が注がれ湯せんし始める
「例えば、実際にやってみるけど、この仁井田本家の自然酒の純米吟醸」

「これの熱燗のつけ方はこうすると美味いんだ」

仁井田本家「自然酒 純米吟醸」のつけ方

お酒を銅のちろりに入れる
湯せん(70°C)で60°Cまで上げる
水せん(氷水)で40°Cまで下げる
湯せん(70°C)で58°Cまで上げる
常温のお酒を少し足して53°Cまで下げる
あらかじめ温めておいた徳利に静かに注ぐ
口径が5cmくらいのおちょこで飲む

想像をはるかに超えて複雑ですね。道具の金属種類も、温度も、酒器もすべて変えている…ものすごいこだわり...!
「じゃ、つけたのをそろそろ飲んでみよか」

燗をつけられた日本酒を注いでもらう
はい! いただきますっ!

(スッ)

(クイッ)

(ゴクリ)
  ・
  ・
  ・

うぁ〜、うおおぉぉ〜ぁ、う、うめぇ・・・(溜息)

「美味いでしょ?」

お、おいしいです。。なんですかこれ・・・!? ふわっとお米の香りがして、柔らかい舌触りで、甘みがボワン! と口の中に広がって・・・これ、僕の知っている熱燗ではない・・・!!!

「これが本当の純米酒の熱燗。米も炊きたてが一番美味いのと同じ。純米酒も”炊きたて”の熱燗が一番なんだよ」

こだわっている酒蔵が報われる世の中にしたい

熱燗に合う日本酒はどういうのがいいんでしょう?

「まずは絶対に純米酒。とにかく愛情をこめて作っている蔵がいい。特に熱燗には全量純米蔵(※)のお酒をオススメしたいね」

※「米と水だけで作られている純米酒」しか作っていない蔵のこと。醸造アルコールを添加している本醸造や普通酒などを作っていない。

それはなぜ?

熱燗で飲むとそのお酒の特徴、特に米のうまみが引き出されるから。全量純米蔵っていう蔵になってくると、『お酒の良し悪し』だけではなく『お米の良し悪し』を気にし始める。だから蔵によっては地元の農家さんと契約して、有機栽培や無農薬栽培したお米を使った純米酒をつくってる。さっき飲んだ仁井田本家の『自然酒』なんかはまさにそう」

なるほど。

「『より安全なものを口に入れさせたい』という気持ちが、やっぱり作り手としてあるんじゃないかなと思うんだよね。でも有機栽培や無農薬栽培だとお米の供給が安定しないから、ビジネス的にも安定しない。それでも蔵は信念を曲げずに、安心安全なお米にこだわり続ける」

た、大変そうですね……

「そう、超大変。でも、きっと一番大事にしているのがお金よりも誇りなんだと思う。だから熱燗を通して純米酒の美味しさを知ってもらい、信念を持った蔵が報われるようになったらいいなと思ってる」
1人1人が熱燗で美味しく飲むことが、蔵を救うことにつながるんですね!

「救うというとおこがましいけど、全体を通して僕が伝えたいのは『食への感謝』なのよ。金出したら手に入るとか思ったらダメ。もっと手の込んだものに対する感謝、愛を感じましょう」

さきほどの手の込んだ純米酒の熱燗も最高でした。今日は他にもいくつか「熱燗が美味しいお酒」や「美味しい熱燗のつけ方」なども聞いてもいいですか?

「もちろん! 隠し事なんて一切なし! なんでも聞いて!」

会話はまだまだ続く…次回はマサさんが推薦する「熱燗が美味しいお酒」の銘柄、合わせる料理、購入できる酒屋まで教えていただきました! お楽しみに!

続きはこちら:毎年1,000種以上の日本酒を飲む”熱燗マスター”が厳選!熱燗でもっと美味しくなる日本酒5選+α

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