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連載:絶滅危惧種にさせない、地味だけれどうまい"和食"の深遠

カウンターで寝てしまうなんて願ったり叶ったり。風情ある荒木町で寛ぎながらしみじみ味わう日本料理

あなたは和食が好きですか? 和食ってどんなものだと思いますか?
和食が世界文化遺産に登録され、いま世界が注目している和食。

でも、日本では「和食離れ」が長年叫ばれ続け、中でも「しみじみ美味しい」「滋味溢れる」、そんな言葉が食の世界でもあまり使われなくなったように思います。

だからこそ、いま「滋味溢れる和食の良さをみんなに知って欲しい」。
そんな想いの詰まった"地味だけれどうまい和食の深遠"連載です。

ライター紹介

柏原光太郎
柏原光太郎
1963年東京生まれ。出版社でグルメガイドの取材、編集などをするうちに料理の魅力にはまり、フジテレビ「アイアンシェフ」評議員なども務める。「和の食と心を訪ね歩く会」主宰、「軽井沢男子美食倶楽部」会長。2017年12月よりRetty TOP USER PRO。

くじらサエズリのハリハリ風にぐじ蕪蒸し、にしん茄子……

「いまの季節に似合う三品を」と事前にお願いしていたのですが、こうも地味でいて滋味あふれた料理を作るなんて、「津之守坂 小柴」の小柴武さんの好みは私と完全に一致、これには驚きました。

「最初炉辺焼き屋でアルバイトしながら大学に通い、日本料理の修業を始めたんですが、26歳のときに師匠といえる人と出合ったんです。古典の京料理を作る昔かたぎの流れ板のような人で 、一緒に6年間寝食をともにして、さまざまな店を渡り歩きました」

その後、料理長、共同経営を経て、荒木町に「津之守坂 小柴」を開いたのは昨年9月。先付、八寸、お椀、お造りまではおまかせ、焼物を選んで、羹(あつもの)、食事(親子丼か新米とジャコ、煎り鰹節)、甘味で1万円という、どこにもないスタイルが特徴的な店です(選択肢が増える1万2千円コースもあり)。

「将来的にはおこのみもやりたいんですが、今は自分の好みにもこだわりたいので、おまかせに自由度を加えたやり方を選びました」

焼物は常時5種類ほど。いまの季節だと、鰯の麹漬け、鰆の燻製、カマスの幽庵焼き、うなぎの印籠焼きなどで、高いコースだと焼きすっぽんや鴨、ノドグロも選べます。冬になったら猪や豚も登場するそうです。

選ぶのは焼物とご飯だけですから、全部おこのみはちょっとハードルが高いと思っている方にはぴったりの店ではないでしょうか。しかも、おまかせの料理もしみじみと旨いものばかりです。

写真の一品、くじらサエズリのハリハリ風は、関西ではポピュラーなハリハリ鍋(くじら鍋)を小柴流にアレンジし、箸休めに最適。

ぐじの蕪蒸しは、これから冬にかけてうまくなっていく蕪を使ったもので、淡い味ながら、身体が芯から暖まります。

ニシン茄子は最近の料理屋さんでは見かけませんが、プロが作ると家庭料理がこんなにうまくなるのかと驚く、お手本のような一品です。

焼物のあとの羹は、例えばきんきの身と豆腐を塩と日本酒だけで炊いた潮煮のように、素朴ながら味わい深いものばかり。

「押し付けがましい料理はきらいなので、肩の力を抜いて召し上がって欲しい。先日はカウンターで寝てしまったお客様がいたんですが、そんなに寛いでいただけたなら願ったりかなったりです」と小柴さん。

フォアグラやサーロイン、トリュフといった強い味のものは使わないし、かといって、「食材そのものではなく、仕事を加えてワンステージアップさせた料理を食べていただきたいから、塩だけというのもしません」と話します。その流儀は焼物の仕事に現れています。

これから冬にかけては、5キロ以上のフグを昆布締めや叩きにしたり、カニの甲羅焼きなど手間をかけた料理も登場するとか。

地味だが滋味あふれる、この連載にぴったりな料理が楽しめそうです。

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