「色男、金と力はなかりけり」なんて言いますけど、ホント僕最近どうにも馬力が出ないっすわ。寒いし疲れやすくてね…。歳のせいっすかねー。
えっ?この流れだとお前が色男に聞こえるって?あれ?そう???そりゃー大変失礼しました。おっさんプロデューサー鎮目ですこんにちは。
馬力のないおっさんプロデューサー鎮目博道
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鎮目博道
- テレビ朝日プロデューサー。AbemaTVを担当。食番組「メシテロ」や「Wの悲喜劇」「蛭子能収の蛭子能収による蛭子能収のためのニュース」などをプロデュース。趣味は三線。そして三度の飯より食べ歩きが好き。
あ、そうそう、「馬力をつける」って言葉は、吉原が発祥だって知ってました?
さあこれから吉原遊廓に!って人が、遊ぶ前に桜鍋を食べて馬肉で精力をつけてから繰り出すんで「馬力をつける」って言うようになったんですって。(諸説ありますが。…って必ずつけたくなっちゃうのがテレビ屋の悪い癖なんですけどねw)
今日ご紹介するのはまさにそんな「馬力をつける」ストーリー。東京・浅草は吉原大門近く、土手通りにある老舗「桜なべ 中江」さんにまつわるお話です。
- 桜なべ 中江
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東京都 台東区 日本堤
鍋
なんでも吉原文化を愛する老舗の店主が、最近元気のない「純国産馬」にクラウドファンディングで「馬力をつけてしまおう」っていうことらしいんですよ。
農林水産省の統計をちょっと調べてみたんですが、平成27年の日本国内の馬の生産頭数は69,041頭。
20年前の平成7年には122,234頭だったので、かなりの勢いで減少しているのがわかります。しかも「外国で生まれたのを日本に連れて来て育てた」って馬も国産馬になるらしいので、「日本で生まれて日本で育った」っていう純国産馬はこれよりも少ない、ってことですよね。
ちなみに牛はどう?と農林水産省の統計を見てみると平成28年2月1日現在で肉用牛が247万9000頭。乳用牛が134万5000頭です。
ね、比べてみるとかなりの差なのに驚きませんか?
「このままでは純国産の美味しい馬肉がなくなってしまうかもしれない!」。そんな危機感に老舗の桜鍋店主が苛まれたのも、そりゃ無理はありませんよね。
こちらがその方。「桜なべ 中江」の4代目、中江白志さんです。お隣にいるのは、浅草芸者の千華さん。
実は中江さんは滅びゆく吉原の芸者文化の灯を守るために、吉原最後の「お茶屋さん」だった「金村」を買い取って、中江の別館として生まれ変わらせ、芸者文化を楽しみながら桜鍋も味わえる店にしたんです。
- 桜なべ中江別館 金村
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東京都 台東区 千束
鍋
吉原芸者は残念ながらもういなくなってしまったので、浅草芸者の皆さんにお願いしてこちらのお店でいわば「吉原芸者文化を再現している」という感じでしょうか?
つまり中江さんは吉原が誇る「芸者文化」と「馬肉文化」両方を守ろうと頑張っているんです。
ちなみに、実は中江さんはワタクシ鎮目の中学・高校の先輩でもあり、35年のお付き合いです。私の家も、父の代からずっと「桜なべ 中江」に通わせてもらっている、言ってみればファンの端くれです。
さて、本題に戻ります。
ではどうして「純国産の馬肉」は危機に瀕しているのか。そしてなぜ「純国産の馬肉」を守らなければならないのか、です。
※桜なべ 中江の歴史についてはお店のサイトに詳しく出ています。
かつて中江のある吉原・土手通りにはたくさんの桜鍋店が軒を並べていたと言います。そして、それらの店はみんな純国産の馬肉を使っていました。
それは日本中で馬が、農耕用や輸送用、軍用などに使われていたため、純国産の馬がたくさんいたからだそうです。しかし次第に馬の用途は日本国内では少なくなっていきました。
でも今は馬肉料理のブームが来ているから、馬肉の需要は増えているのじゃないの?と思いますよね。でも実はそのほとんどは輸入馬肉なのです。あと僅かに「外国生まれの国産」があるだけで、「日本生まれ日本育ちの純国産」はほとんどないのです。
先ほどの統計でお気づきかもしれませんが、日本には「肉用馬」というのは存在しないんです。牛にはちゃんと「肉用牛」と「乳用牛」があるのにです。
現在日本で食べられている国産馬肉は、競走用の馬などのうち競走に適さなかったものなどがほとんど。「肉用馬」として生産の支援が受けられない国内の生産者は、コストなどの面でとても輸入馬肉に太刀打ちができないのです。
中江さんのように、冷凍輸送の外国産や「外国生まれの国産」を使わず、美味しくて安全な日本生まれ日本育ちの純国産馬肉にこだわっているお店には肉の安定供給がとても難しくなってきているのです。
そこで中江さんが考えたのが、餌の質を上げて生産性を高めること。
中江さん自ら研究機関と共同で餌を開発して、国内の生産者を支援することにしたのです。このプロジェクトの協力者を、クラウドファンディングで募ることにしたというわけです。
桜なべ 中江のクラウドファンディングについて詳しくはこちらをご覧ください
中江さんには高校1年生になる息子さんがいます。僕もよく知っているのですが、とてもいい子です。彼はもう「桜なべ 中江」の5代目を継ぎたいと言っているのだといいます。
桜鍋は東京の郷土料理です。そして世界に誇れる日本文化だと思います。
さあ、5代目の代にも…つまり私たちの子供の世代にも美味しい純国産馬肉の桜鍋を残してあげませんか?
Abemaメシテロでは吉原老舗桜鍋について詳しく紹介しています!
メシテロ#266(純国産馬肉を守れ!吉原老舗桜鍋店主の闘い/桜なべ 中江①)
メシテロ#267(純国産馬肉を守れ!吉原老舗桜鍋店主の闘い/桜なべ 中江②)
メシテロ#268(純国産馬肉を守れ!吉原老舗桜鍋店主の闘い/桜なべ 中江③)