• Top
  • PR
  • オープンから連日満席が続く人気。相鉄線・弥生台の名店「蒼」を訪れて
連載:ノンフィクション作家・小松成美とタベアルキスト・マッキー牧元の相鉄沿線探訪

オープンから連日満席が続く人気。相鉄線・弥生台の名店「蒼」を訪れて

神奈川県の横浜~海老名間を結ぶ「本線」と、二俣川~湘南台間を結ぶ「いずみ野線」の2本からなる「相模鉄道」。

「相鉄」の名で親しまれるこの私鉄が、昨年2017年に100周年を迎えました。

100年という歳月を経て、相鉄の車窓から見える景色は、めくるめく変化を遂げています。

今回は、相鉄が長い歴史をかけ走り続けてきた沿線の街を、ノンフィクション作家・小松成美さんとRetty TOP USER PROでもあるタベアルキスト・マッキー牧元さんが探訪するシリーズの第三弾。

連載:ノンフィクション作家・小松成美とタベアルキスト・マッキー牧元の相鉄沿線探訪

小松さん、牧元さんに弥生台にできた新たな和食店を訪ねていただきました。

その魅力を小松さん自筆の原稿でお伝えいただきます。

ライター紹介

小松成美
小松成美
横浜在住の作家。主題は人物、スポーツ、歴史、芸術など多岐にわたる。作品は「中田英寿 鼓動」「イチロー・オン・イチロー」「熱狂宣言」「それってキセキ GReeeeNの物語」「虹色のチョーク」等など多数。

夕暮れになるとガラス張りの店内から温かな光が漏れる。

オープンキッチンに立つ料理人が、丁寧に包丁を引き、料理を皿に盛りつける姿に目が留まる。

弥生台の駅の雑踏から1分と離れていないその店には、穏やかで豊かな時間が流れている。

相鉄沿線名店プロジェクト第3号店として2018年1月にオープンした和食店「蒼(あおい)- aoi - 」の店主・加藤健太さんは、真新しい店を見渡してこう言った。

「準備から開店まで2年をかけました。身長が187センチあるので、キッチンも僕の背の高さに合わせてオーダーしました。

テーブルや椅子も好みの物が見つかるまで探し歩いて、妥協せず揃えた物です」

大きなカウンター席と対面するまな板で包丁を振るう加藤さんは、ふと手を止めて笑顔を浮かべた。

「料理人にとって自分の店を持つことは、一番の夢です。その夢が叶ったことに心が沸き立っています。

自分らしい店にしたいと内装にも食材選びにも時間をかけてきて本当に良かった。

店をオープンして、日々お客様をお迎えして、そう実感しています」

相鉄いずみ野線弥生台駅前の「相鉄ライフ やよい台」1階に位置するこの店を加藤さんは「地域に根ざしたあたたかい店にしたい」と、意気込みを語る。

「奇をてらったメニューや高価な食材を並べることよりも、毎日のように食べたい、通いたい、と思っていただける品々を揃えました。

横浜の郊外にあるからこそ提供できる『地産地消』がありますし、この場所の『こだわり』があります」

真新しい調理衣に身を包んだ喜びは、連日さらに膨らんでいる。

「オープンの日から、ランチも夕食も、お陰様で満席が続いています。

改札から真っ直ぐ店に向かってくださるお客様もいますし、休日には親子3世代で訪れてくださるご家族も多い。

こうした毎日を重ねながら、日常にも晴れの日にも使っていただける、地元の方々の誇りになるような店を目指していきたいです」

1980年生まれの加藤さんは横浜市港南区日野に生まれ、間もなく移り住んだ秦野市で育った。

サラリーマンの家庭に育った彼の周囲には、飲食関係の仕事に就いている者はいなかった。

「学生の頃は自分が飲食店を経営するなど、想像もしていませんでした。

高校で理系コースを選んで、将来はエンジニアになることをぼんやりと考えていましたね」

しかし、高校時代のファミレスでのアルバイトが、加藤さんの人生のターニングポイントになる。

「中華のファミレス『バーミヤン』でアルバイトをしたんです。

まだ出店して間もない頃で、厨房に入ったアルバイトの私が実際に調理する機会も多かった。

そこで『ああ、料理は楽しいな』と、感じるようになっていったんです」

引っ越し業者や郵便配達など、いくつものアルバイトを経験したが、飲食店での仕事の楽しさは際立っていた。

目指していた大学、神奈川工科大学工学部システムデザイン科に入学した後にもそう感じていた加藤さんは「料理人になって生きていきたい」という願いを確かなものにしていく。

「ある日、その気持ちを両親に告げると『だったら迷わずその道に進みなさい』と言ってくれました。

そして、料理人になるなら1日も早く調理の経験を積んだ方がいいから、と言って、大学を辞めることを許してくれました。

今でも、両親の理解には、心の底から感謝しています」

20歳で料理人のスタートを切った加藤さんは、自らのロードマップを描きながら修行を開始する。

「和食に必要な技術は貪欲に学びたいと考え、最初の3年は恵比寿の寿司店に勤めます。

2年後にはカウンターで握りを担当しました。フランチャイズの店で大衆的な料理も作り、河豚(ふぐ)店で働いて河豚調理の免許も取りました。

海外も経験したくて、中国・上海の和食店でも働きました」

経験と技術の研鑽。加藤さんの料理への情熱はさらに燃え盛る。

「この頃、はっきりと自覚することがありました。自分は、単に料理が好きなだけではない。

食べてくださる方が『美味しい』と思うことこそが自分の喜びなのだと分かったのです」

30代になると西麻布で会員制和食店の料理長となり、調理だけでなくメニュー開発や原価管理、店舗運営に従事した。

その加藤さんに思いもよらぬ誘いがあった。

「知人から紹介された山本秀正シェフから、相鉄沿線名店プロジェクトで弥生台に和食の店を出さないか、というものでした」

山本秀正さんは、1984年に「リッツカールトン ワシントンD.C.」の総料理長に就任し、 レーガン大統領・ブッシュ大統領・クリントン大統領の晩餐会総料理長を歴任したことで知られるシェフ。

帰国後は、食のプロデューサーとして数々の店を出店し、料理人を育て上げていることでも知られる。

いつかは自分の店を持ちたい。そう願っていた加藤さんに、もはや断る理由はなかった。

「尊敬する先輩であり名うてのプロデュースである山本さんに誘っていただいたことが、何よりの喜びでした」

地元の神奈川であること、チェーン店ではなく独立店舗であること、和食の店であることなど、自分の願いがそのまま具現化できる機会に胸を躍らせ、独立を決めるのである。

「地域の人々の食生活を豊かにしたい。町の生活に寄り添うような店でありたい。

その願いが叶う日が来たのだ、と心から嬉しかった。

西麻布の店で一緒に働いていた妻の愛梨(あいり)にも相談すると、一緒に頑張ろうと頷いてくれました」

準備期間は2年。加藤さんはメニューを一から考案した。

第一にこだわったのは“素材の良さを引き立てる”ことだ。

「そのために真空低温調理法を調達し、用いることにしました。

真空低温調理器があれば食材の旨みをそのままに提供することができます。

安全・安心な産地にもこだわった素材を使用し、その料理と呼応する酒やワインも揃えました」

メニューを覗けば、その安さに目を見張る。

【ランチ】
・蒼特製骨付き地鶏の炭火焼定食 1,000円
・一夜干しの炭火焼定食(週替わり) 1,000円
・お刺身定食 1,500円

【ディナー】
・トリュフの出汁巻き玉子 680円
・鶏胸肉ときのこのサラダ 650円
・本日の鮮魚の炭火焼 980円から
・真空低温調理 (牛ハツの炭火焼/蒼特製 よだれ鶏) 580円から
・土鍋ご飯(2人分) (旬の炊き込み/フォアグラとトリュフ) 1,280円から

加藤さんは考え抜いて作ったメニューに胸を張る。

「米や野菜、肉、魚は、選び抜いたものを使っています。

だからこそ、価格にもこだわりたかった。できるだけ安価でこうした食材を届けたいと思い、努力しました。

もちろん利益率は落ちますが、それよりも何よりも、『美味しかった。また来るよ』と言っていただくために考えたメニューなんです」

妥協することなく創り上げた店で腕を振るう加藤さんの傍らには、ホールを担当する妻の愛梨さんがいる。

「確かに、自分たちの店を持つことの責任は大きいですね。

一番の責任は、自分が作った料理を、お客様には和やかに楽しく食べていただくということ。

そのことだけを思って店に立っています」

開店準備に追われる2017年の夏、加藤さん夫妻は男の子の親になった。名前は蒼舷(そうげん)君。

「この『蒼』の1年1年は、蒼舷の成長と対です。私は今、生涯忘れ得ぬ時間を与えられています。

感謝の日々を、食事にいらっしゃるお客様とともに過ごしていきたいです」

最新の人気グルメ情報が届く!

イイねするだけ!
最新の人気グルメ情報が届く!