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連載:絶滅危惧種にさせない、地味だけれどうまい"和食"の深遠

【2018まとめ】この一年、和食界で脚光を浴びた店を総括。変化する和食の流れとは?

いま世界が注目しているのが和食。

いっぽう、日本では「和食離れ」が長年叫ばれ続け、中でも「しみじみ美味しい」「滋味溢れる」、そんな言葉があまり使われなくなったように思います。

だからこそ、いま「滋味溢れる和食の良さをみんなに知って欲しい」。そんな想いの詰まった"地味だけれどうまい和食の深遠"連載の2018年総括です。

ライター紹介

柏原光太郎
柏原光太郎
1963年東京生まれ。出版社でグルメガイドの取材、編集などをするうちに料理の魅力にはまり、フジテレビ「アイアンシェフ」評議員なども務める。「和の食と心を訪ね歩く会」主宰、「軽井沢男子美食倶楽部」会長。2017年12月よりRetty TOP USER PRO。

あっという間に2018年の和食を振り返る季節がやってきました。

数年前からのスパンで考えると、和食のなかでも、天ぷらやうなぎといった個別の料理が脚光を浴びてきています。

天ぷらは長らく革新がありませんでしたが、若い職人や地方の天ぷら店が新しい技術を開発し、話題になりました。

本郷三丁目で独学で天ぷらを学び、今年のミシュランで1つ星に輝いた「江戸前晋作」や、そのためだけに名古屋に詣でる「にい留」などが、その代表です。

日吉真樹さんの投稿より

日吉真樹さんの投稿より

画像引用元:https://retty.me/area/PRE13/ARE11/SUB1103/100001308064/27930594/
TAKENAKA NOBUHIROさんの投稿より

TAKENAKA NOBUHIROさんの投稿より

画像引用元:https://retty.me/area/PRE23/ARE64/SUB6401/100001384258/28410237/

うなぎは天然物に関心が集まり、さらに地方ごとの違いを楽しむ食いしん坊が多くなってきました。

池袋「かぶと」や六本木ヒルズ「黒長堂」では天然と養殖、さらには地方ごとのうなぎの違いを味わうことが出来ます。また、絶滅危惧種であることから、いたずらに天然物をありがたることへの疑問も出てきています。

Yamato Tokuharaさんの投稿より

Yamato Tokuharaさんの投稿より

画像引用元:https://retty.me/area/PRE13/ARE662/SUB66201/100000002328/9330177/
S.Aokiさんの投稿より

S.Aokiさんの投稿より

画像引用元:https://retty.me/area/PRE13/ARE14/SUB1401/100001435309/35865403/

が、今年に限って言えば、和食全体に関して、そこまでの目立った動きはなかったとおもいます。ただじっくり観察すると、1万円前後の中価格帯の店が「和食の基本」に回帰し始めた傾向が見て取れます。

ここ数年の魚介類の値上がりで、中価格帯の店は打つ手が狭まったからです。これまで無理して高級店に対抗してきた店が淘汰され、その価格帯ならではの持ち味を出している店が注目されています。

たとえば今年10月に開店した荒木町「御料理ほりうち」。

女主人が経営するカウンター中心の日本料理店ですが、ここの1万円のコースには「鶏の肝煮」や「豚の生姜焼き」が入ります。

鶏の肝煮は山梨のご当地グルメとして有名ですが、実は店主が山梨出身。自分の店はなにを特色にしたらいいかを考え、居酒屋にもありそうながら、食材の良さや技術で、ここでしか食べられない出色の料理に仕立てたのです。

豚の生姜焼きも開店前に日本各地の食材を探しているなか、福井県と富山県で美味しい豚に行き当たったために考案したそうで、街の洋食屋とは比べ物にならない味に仕上がっています。

地域的には、根津と荒木町に面白い和食店が増えました。

根津は谷中、千駄木と一緒に「谷根千」と称され、浅草ほど下町っぽくないけれど、昭和の雰囲気が味わえる地域として外国人観光客にも知られていますが、和食好きにとっては根津が一頭地抜け出た感があります。

たとえば「鷹匠」は朝から蕎麦で日本酒が飲める酒飲みに優しい店ですし、「まめたん」は紀尾井町にある老舗料亭「福田家」出身の店主が作る絶妙の酒肴が評判です。

Yuya Tojoさんの投稿より

Yuya Tojoさんの投稿より

画像引用元:https://retty.me/area/PRE13/ARE9/SUB901/100000009285/17960874/
Aska Narazakiさんの投稿より

Aska Narazakiさんの投稿より

画像引用元:https://retty.me/area/PRE13/ARE9/SUB903/100001237343/30426823/

亀有から移転してきた天ぷら「福たろう」も天ぷら好きには有名です。

Kazunori Kushibuchiさんの投稿より

Kazunori Kushibuchiさんの投稿より

画像引用元:https://retty.me/area/PRE13/ARE9/SUB903/100001341962/34158571/

荒木町は10年ほど前までは、近くにあったフジテレビと文化放送が移転したため、すっかり寂れていました。しかし、そのおかげで家賃が下がり、若い料理人たちが店を構えることが出来るようになり、今日の隆盛を迎えたのです。

前出の「御料理ほりうち」のほかにも、「東京割烹てるなり」「荒木町きんつぎ」「燗コーヒー藤々」「煮ばなおでん 福の川いしだ」など、居酒屋以上割烹未満の、財布にもやさしい店がこの2、3年で続々と増えています。

「煮ばなおでん 福の川いしだ」のおでんの盛り合わせ

「煮ばなおでん 福の川いしだ」のおでんの盛り合わせ

最後に、今後注目すべき動きがあります。高級店がデフュージョンブランドを作り始めたことです。

東京割烹てるなり」は同じ荒木町にあるミシュラン1つ星の人気割烹「季旬 鈴なり」の姉妹店で、和食とフレンチ両方のテーストをうまく取り入れた店になっています。

Nobue Mizukoshiさんの投稿より

Nobue Mizukoshiさんの投稿より

画像引用元:https://retty.me/area/PRE13/ARE6/SUB603/100001437995/36330669/

当連載でも紹介した「日本橋逢坂」は白金に「小料理 小さい田んぼ 櫻咲」を開きましたが、こちらもワインと日本料理のマリアージュに力を入れています。

西麻布で高級割烹「豪龍久保」を経営する久保豪さんは、かねてからアイデアを暖めていた蕎麦屋「神宮の蕎麦」を千駄ヶ谷に開きました。昼は十割蕎麦を中心としたラインアップですが、夜は豪龍久保の仕入れをうまく使い、蕎麦前の料理も充実してきました。

Emiko Takeyamaさんの投稿より

Emiko Takeyamaさんの投稿より

画像引用元:https://retty.me/area/PRE13/ARE14/SUB1402/100000808798/12225108/
s. macさんの投稿より

s. macさんの投稿より

画像引用元:https://retty.me/area/PRE13/ARE23/SUB2301/100001437891/36682464/

情報がかつての数十倍も流通する中、料理人も職人としてだけではなく、経営者として新しいことをはじめる動きが強まっています。そして「料理人はひとつの店を守り育てるべし」という風潮もなくなってきています。

こういう動きは来年以降も増加することでしょう。平成のあとの和食界の動きが楽しみです。

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